や〜よ





『ヤッターマン』(→公式サイト
 『ヤッターマン』の映画化。『キューティーハニー』、『デビルマン』、『キャシャーン』などなど、屍累々の様相を呈する所謂「アニメの実写映画化」カテゴリーに属する近年の邦画作品群の中に、またしても「そんな感じの映画」が生まれたのだろうか。しかも監督はかの★いっこ作品『ゼブラーマン』の三池崇史。

 すべて揃えると願いが叶うという「奇跡の石」を巡り、ヤッターマンとドロンジョ一味は今週も戦いの火花を散らせていた。

 僕はヤッターマン、ひいてはタイムボカンシリーズを観て育った世代で、楽曲やキャラクターを含めそれなりに愛着もある。その僕から言わせてもらうと、この『ヤッターマン』は合格点だった。面白かった。★5つ! もっかいぐらい観に行ってもいいかもしれない。いや、行く。中身が濃すぎて1回ぐらいじゃ把握しきれない感じ。いや〜、崇ちゃんも、クドカンさえ傍にいてくれなければこんなに面白いもんが作れるんじゃないの。
 冒頭の壊滅した「渋山」駅前の「ハッチ公前」広場の戦いから、既にテレビでいうクライマックス。このシリーズのお約束や世界観を怒涛のごとく提示する。こういう企画の場合、脚本がアホだと登場人物の背景や生い立ちに時間を割きすぎて前半ダレダレになる場合が多々あるが、説明なんかまるっきり無くいきなりラストバトルみたいな雰囲気だからね。原作のスチャラカさ加減も半分手伝ってると思うけど、この思い切った省略は大成功だと思う。
 ヤッターマンと言えば山本正之の素晴らしい音楽がはずせないんだけど、歌のみならず楽曲に至るまですべて山本氏が参加。オーケストラでもちゃんと「山本節」を奏でていた。ドロンジョ一味の悪巧みで流れる「インチキ商売」の曲やゾロメカ前の楽隊などなど、「あ〜、これこれ! こんな曲あったあった!」という「おっさんホイホイ」的な魅力にもう、ストレートにハートを揺さぶられっぱなし。中でもドロンジョ一味が「天才ドロンボー」を歌い踊るシーンは素晴らしすぎて涙腺が緩くなった。やられた。
 配役では、やはりフカキョン演じるドロンジョ様につきる。惚れてまうやないかー! 原作の「妖艶でヒステリックな年増」なイメージから考えると全くはまり役でもなんでもなくて、見る前も「フカキョンがドロンジョ〜?」という、疑問符でいっぱいだったんだが、これはこれで全然アリだ。かわうい。いちいち前かがみで胸の谷間を強調するあたりもわかってる。色っぽさと可愛さを兼ね備えたフカキョン版ドロンジョだからこそ、後半の三角(四角?)関係も違和感なく入ってくる。これが風間ゆみ版ドロンジョとかだったら「キス1回で、ん〜なアホな」ってなるもんな。ぶっかけ百連発ぐらいしないと。
 映画版ならではの変更点もあり。まずヤッターワン&キングの配色。ワンは昔のポストみたいだし、キングに至っては急造のせいで色塗ってないし。玩具化をにらんだアニメ版の配色を茶化したギャグなんだと思う。また、ボヤッキーがドロンジョに恋心を抱いていたり、トンズラがボヤッキーに(一方的な)友情を抱いていたりする点。これらはドラマを膨らませる上で重要なファクターであり、上手く機能していたと思う。子供の頃は素直にヤッターマンを応援していたもんだが、今回妙に三悪、特にボヤッキーに感情移入してしまい、決して報われない恋心に傷つく姿に心を動かされた。
 あと、ギャグではサソリに噛まれる箇所がなぜか太ももの付け根のあたりなのが可笑しかった。最後の三悪の三叉路のやつは、テレビ版と全く一緒で吹いた。いまだに覚えてるってことは、当時よっぽどあのギャグに衝撃を受けたんだろうな。
 悪いところは、強いて言うとすれば「勝利のポーズ」や「天才ドロンボー」の振り付けが甘い気がした。なんか手足が左右対称になってなかったり、フラフラしてたり。夏先生に合宿で鍛えてもらって欲しい。

補足説明

・オーケストラでもちゃんと「山本節」…「渋山」の戦いで流れる戦闘の曲(「やっておしまい」&「やっておしまい・その2」)ではさりげなく「アーウー・オジャママン」&「ドロンボーのシラーケッ」のフレーズが織り込まれていた。

・「インチキ商売」の曲…ちゃんと内容に合わせてアレンジの異なる「ウェディング編」と「おすし編」の2バージョン用意されている凝りよう。

・「天才ドロンボー」を歌い踊るシーン…劇中に登場する「オジプト」に合わせてイントロが中東風アレンジ。映画の中の歌でこんなに感動したのは『少林サッカー』でシンチーが「夢のカリフォルニア」のパチモンを歌うシーン以来じゃないか。

・「妖艶でヒステリックな年増」なイメージ…僕の頭の中では杉本彩とか藤原紀香とか風間ゆみとか。



『遊星からの物体X』
 グチャグチャなエイリアンは、いま観ると少しチャチいかもしれない。が、特撮なくしても「隣人が『ヒト以外の何か』かもしれない」恐怖は色褪せない。血液検査のシーンは白眉。



『Uボート』
 Uボートが成り行きで狭苦しいジブラルタル海峡を通る羽目に陥る。ハリウッド映画で見なれたドイツ兵の姿は見えない。録画に失敗して最後の1,2分未見。まあ、あのまま「戦争は空しい」って幕引きなんじゃろね。ドイツ負けるんじゃろね。

補足説明

・ハリウッド映画で見なれたドイツ兵…サイドカーで追いかけて来て、吹っ飛ぶ。

・「戦争は空しい」って幕引き…逆に「戦争最っっっ高!!!」って幕引きの戦争映画はないだろうか。みんなが飛び跳ねてストップモーション、みたいな。



『許されざる者』
 イーストウッド監督・主演映画では一番好きな作品。これを西部劇と呼んで良いのかどうか、迷うぐらい所謂「西部劇的な」ガン・アクションが出て来ない。「あんたは銃を持たない人間を撃ったそうじゃないか」と問われて「持たない奴が悪い」と言い切るマーニーが主人公。確固たるヒーローも悪人も出て来ない点では、後の『ミスティック・リバー』に通じるものがある。



『世にも奇妙な物語 / 映画の特別編』
 四つの話からなるオムニバス形式だ。
 上映順に感想。

「雪山」
 下敷きになる「恐い話」があるので紹介。

雪崩で遭難した登山隊の生き残りである二人の男。一人が骨折で動けないので、テントで救助を待つことにした。怪我をした男が次第に衰弱していく一方で、もう一人の男は日に三度、テントの外へ「様子を見に行く」と言って出かけた。隠し持っていた食料を食べるために。やがて重態の男が死に、残された男はテントから離れた雪の中にその死体を埋めた。翌朝、目が覚めると、昨日埋めたはずの死体が隣に横たわっている。何度も何度も埋めなおすが、朝になると死体は必ず戻って来ているのだった…。

 …という話。ここまででも恐いけど、この話の本当の恐ろしさは他にあって、それは…というのがキモになっている。で、本編の舞台も雪山。墜落した旅客機に乗っていた生存者五人が地図を頼りに山小屋を目指し、すごく恐い目に遭う。密室+暗さ+飢え+寒さ+人間のエゴ+怪談の恐怖が味わえる。個人的に、出演者である宝田明を見ると裸踊りのCMを思い出しちまうのでちょっと困った。この作品の監督がテレビ版で撮った「急患」という作品がえらい不気味でいまだに覚えているのでビデオ化希望。マッチが医者やってるやつ。

「携帯忠臣蔵」
 コメディタッチの作品。大石内蔵助の元に未来の世界から携帯電話がやって来て、いろいろある話。中井貴一がチャランポランな内蔵助を演じる。けど、成功しているとは思えないなあ。ヒネリは「ミスマッチな内蔵助」像にとどめて、俳優はちゃんとコメディができる人を起用してほしかった。高田純次とか。ひねろうとするんならいっそのことケント・デリカット希望。ネェ。イイジャナ〜イ。ケンカリョーセイバイ、シーテクーダサーイヨ〜。

「チェス」
 普通に面白かった。チェスの名人がチェスのような目に遭ってた。

「結婚シミュレーター」
 冒頭で、映画館の前で雨宿りをする女のところに男が駆け込んできて、

男「突然降ってきましたね」
女「天気予報では降るって言ってました」
男「え!?」
女「傘、電車に忘れて来たんです」
男「…」
女「…」
男「(映画館のポスターを見て)あ、この映画、観たかったんだ」
女「映画っていつも観に行こうと思っているうちに終わってしまうのよね」
男「良ければ…一緒に…観ませんか?」
女「?」
男「(窓口で)大人二枚」


 こ〜んな会話から始まったからさあ大変。もう、「キャーーーッ」と叫びながら中央の通路を転がって行ってスクリーンに正義の頭突きをくらわしたくなったけど、通路側にガビョが座っていたので断念。内容的には奇形児の出て来ない『トータルリコール』、と言えばわかってもらえるだろうか。

 以上。「雪山」が一番面白かった。もう一度観たい。

どうでもいい知識:タモリによる各話間のストーリーテラー部分で『12人の優しい日本人』の陪審員2号の人が出演しています。「話し合いましょう!!」