さ〜そ





『サイレントヒル』(→公式サイト
 コナミのホラーゲームをハリウッドが映画化。ゲームのファンとしては、期待半分懐疑半分だが。

 ローズの養女シャロンには、奇妙な夢遊癖があり、夫婦を悩ませていた。少女の悪夢の中に現れるという謎の地名「サイレントヒル」。ローズは一人娘を連れ謎の街へと車を走らせる。

 よくやってくれた。素晴らしい。「ゲームの映画化」という部門があればアカデミーだって獲得できるだろう。もうゲームファンのために作られたような映画であり、監督はこのフィルムをファミ通に送ってやり込み大賞もらって欲しい。それぐらいゲームを研究して細部まで作りこまれているし、ゲームをプレイした人なら誰もが印象に残る舞台、ガジェット、クリーチャーの数々を見事に描いた。それもそのはずで、監督は現場にプレステを持ち込んでスタッフにゲーム画面を実際に見せながら撮影を進めたのだという。特に「看護婦」は見ものだ。
 音楽もゲームのものがまんま使用されているのが嬉しい。それだけ最初からクオリティが高かった証拠だろう。ストーリー的によりディープで悲壮感の漂う続編もこの監督に手がけてもらいたいものだ。

補足説明

・ゲームのファン…1〜3までクリアした。特に2は全てのEDを見るぐらいハマッた。

・監督…クリストフ・ガンズ。自身ゲームの大ファンであり、コナミに自らの熱意を込めた30分のビデオを送りつけて監督の座を勝ち得たのだという。



『サイン』
 結論から言うとつまらなかったんだが、ひとことで終わらせてしまうにはあまりに内容がバカバカし過ぎる奇作。ネタバレ対談をした。



『ザ・カンニング [IQ=0]』
 落ちこぼれがカンニングで頑張る映画。カンニングの手法がスゴい。教室の外から太鼓のモールスで正解を伝える黒人の親とか。 パート2「アルバイト情報」は、よくわからない歌謡ショーみたいな映画で、すがすがしいほどカンニングに関係なかった。



『ザ・キャッチャー』
 やってみたら不味かった。ホラーとベースボールのコラボレーション。
 スパルタ野球教育に堪えかねて父親をバットで撲殺したジョニー。彼は立派な殺人鬼に成長し、キャッチャーマスクを被って球場に現われシーズンの終わった弱小マイナー球団の選手達を次々に血祭りにあげていくのだった。
 …という、本当にそれだけの映画。撲殺の他にも、バットでおカマを掘ったり、ホームベース上に身動きできないように横たわらせてからダイヤモンドを一周してスライディングキックをしたり、バッティングマシーンの前にくくりつけて文字通りデッドボール責めにしたり、ただ単に階段から突き落としたり。スライディングで蹴り殺された男は、父親の幻影から「お前はアウトォォォォ!!!」と死の宣告を受ける。『コブラ』の「ラグボール」じゃないんだから…。それらすべてのシーンは、カメラワーク&編集のマズさ&めちゃくちゃ安っぽい音楽のせいで、全然怖くない。そして最後は、守備位置に犠牲者達が磔にされ、グラウンドはちょっとしたゴルゴダの丘と化す。ジョニーの妄想の中では犠牲者達も生前の姿のままで厳かに国家斉唱。始球式は終わり、プレイボール! 繰り広げられる女コーチとザ・キャッチャーの全力対決。なぜかキャッチャーの格好のままバッターボックスに立つジョニー。空振り! 空振り! やっぱお前才能ないよジョニー。しかし3球目にようやくヒット! 守備が全員死んでるからランニングホームラン! ジョニーがベースに戻ったとき、息を飲むバレバレのドンデン返しが待ちうけていた…。
 すべてが終わった今、思う。ジョニーは今までどこにいたのか? 何故彼らは殺されなければならなかったのか? 「コイツがジョニー?」と勘違いさせる役割の人物を、今まさに人を殺しているジョニーと平行して映してしまうのは何故か? そもそもなんでこんな映画を最後まで観てしまったんだろう?
 これ観るとデ・ニーロの『ザ・ファン』が名作に思えてくるから不思議だ。



『殺人の追憶』(→公式サイト

 ソウル南部の農村で同一犯人の仕業と思われる強姦殺人事件が発生した。地元警察は血眼。ところが、これが捕まらないんだなぁ。本庁から派遣されたソ刑事のプロファイリングも空転するばかり。焼肉ときどき強姦の日々は続く。

 韓国で実際に起きた未解決連続強姦殺人事件を基に映画化したサスペンス。冒頭にテロップで明かされる通り堂々と「未解決」、稀代の連続強姦魔は最後まで捕まらないらしい。あさま山荘に突入したらもぬけの空だったようなもんで、面白いのか疑問に感じながら観たんだが、しっかりサスペンスときどきユーモラスで非常に良く出来たエンターテイメントだった。杜撰な取り調べの実態、プロファイリング、都市伝説の形成、オトリ捜査、浮かんでは消えていく容疑者、あいまいな証言の真意などなど数々の興味深いエピソードが絡み合って当時の錯綜した状況を実に上手に表現している。
バズーカーキック  決定的に日本との違いを感じたのは、刑事達が口より先に蹴りを出すこと。しかもノーモーションからバズーカーキックをかます。当然相手は吹き飛んで追加の壁ダメージをくらったりする。これ昔の刑事ドラマみたいに誇張だとしても、やはりパンチよりはキックのお国柄なんだろうな。さすがに国技がテコンドーなだけある。
 この映画を犯人が観た可能性も十分あるわけで、何ともおぞましい。おぞましいと言えば犯人の主観視点で強姦する相手を二者択一するシーンは相当なもんだった。レイプ、かっこわるい。

補足説明

・エンターテイメント…強姦殺人が題材だけど、それほど「やってるよ」な描写は無い。

・この映画を犯人が観てる可能性も十分ある…犯行の手口で『羊たちの沈黙』を真似たような箇所があった。ラストのカメラ目線をどんな顔で受けとめたんだろう。



『座頭市』(→公式サイト
 映画館で時代劇を観たのは'96年の『必殺! 主水死す』以来か。「北野流の座頭市」(『みんな〜やってるか!』の座頭市は無かったことにされたらしい)という触れこみだけど、勝新版を見てないのでその辺は何とも言えない。ニンジャ(わざわざバック転で向かって来る)やゲイシャやハラキリなども盛り込んで、海外を意識したようなシーンもちらほら。また、ギャグがベタベタで、これはお年寄りを意識したのかもしれない。実際、年配の方がよく笑っていた。身障者ギャグもほどほどにあったが、最大の可笑しさは「見えないのに金髪に染めてる」ことだと思う。総じて、より間口を広げた、大衆にアピールする作り。ただ、殺陣はハードそのもの。離れた位置から淡々と撮ったり、効果音だけで表現したり、結果としての死体だけ提示して省略する、いつもの北野流ヤクザ映画的手法はなりを潜め、カメラの近接により臨場感のあるアクションになっている。江戸時代という、ある意味ファンタジーの空間を舞台に、異能の人(盲目にして居合の達人)が立ち回るのを考慮して、日常の延長としての暴力描写とは一線を画したのだろうか。最大の敵役である用心棒(浅野忠信)との対決に関する顛末も、伏線の積み重ね(形式に乗って戦う武士故の甘さ、超近距離では逆手で抜刀する方が有利という前提)で丁寧に描けており、あっけないほどの結末が十分納得できる。宣伝で吹聴されていたタップ・シーンもすんなり入れた。キャストに関しては、浅野忠信は良かった。脆さと強さの混在する人物が似合う。岸部一徳の悪玉演技はもはや意外性も無く、正直もう飽きた。田中要次は、森下能幸と並んで、最近どんな邦画を観ても、先回りして待ち伏せされてるような気がする。実は狭いのか邦画界?
 ところで、今年は『仔犬ダンの物語』に始まり、『レッド・ドラゴン』のレイフ・ファインズの恋人、『デアデビル』と来てこの『座頭市』、「めくらの当たり年」かもしれん。そろそろヘレン・ケラーやレイ・チャールズが来るやもしれんぜ? 『ブラインド・フューリー』のリメイクとか。あとアレ、ツバメが王子様の銅像のめんたまほじくってめくらになるやつ。あれ超感動するよ?



『サブウェイ123激突』(→公式サイト
 デンゼル・ワシントン主演。トラボルタ悪役。

 トラボルタが地下鉄をのっとってNYに1000万ドル要求する。地下鉄コントロール部のデンゼルは交渉する。

 あらすじの通り、主役のデンゼルと悪役のトラボルタが終盤まで別の場所にいて無線で交渉する。その会話の妙味がキーであり、それ以外の要素はいらないと思う。NY警察が1000万ドルを護送するシーンがしつこくカットインされるけど、これなんか水増し以外の何者でもない。丸ごとカットしてもいいぐらいだ。そんなんはいいから、人質になった乗客のドラマにもうちょっと焦点を当てれば厚みが出たかもしれない。基本的にみんな善良な市民だったのが残念だ。デンゼルとトラボルタの関係は『コラテラル』のジェイミー・フォックスとトム・クルーズからインスパイアされたような雰囲気。とくに横領の事実を告白させられて涙目になるとこや、最後のくだりなんかクリソツだ。
 予告を見たときから、「もしクライマックスが操車場での一騎打ちだったらどうしよう? そして余裕綽々のトラボルタがふとしたすきに感電して死んだらどうしよう?」と思っていたが、とりあえず違ってて良かった。しかしまあ、とくに仰天のオチがあるわけでもなく、デンゼルもトラボルタもいつも通りのことをやっている。悪くはないんだけど、凡作っちゃ凡作かも。すぐ忘れそう。



『サマーウォーズ』(→公式サイト
 一部で高い評価を受けた『時をかける少女』のスマッシュヒットも記憶に新しい細田守。細田地方を統べる名うての藩主が家臣団を率いてまたもや新作映画を物したらしい。

 数学方面で非凡な才能をもつ小磯君は美人の夏希先輩からひと夏のアバンチュールに誘われて舞い上がっていたが、夏希先輩の目的は小磯のあずかり知らぬところにあったのだ。一方、すごいハイテクテロ事件が全国を襲う。

 まず冒頭でサイバー空間を視覚化したイメージが延々と続く。正直すごく嫌な予感が。この嫌な予感は、夏希の田舎にある陣内家でさらに膨らむ。笑っちゃうぐらい登場人物が多いのだ。オイオイオイ、大丈夫かこの映画は。しかし、その不安は杞憂に終わった。予想外に面白かった。★5つ!
 まず冒頭のサイバ−空間云々の描写はクドすぎるようでも、この作品の現実/仮想空間の二重構造を理解させるためには絶対不可欠だと思う。ここで脱落する人は後のストーリー展開にも到底ついて来れないだろう。そこさえクリアできたらこの二重構造の面白さに徐々に惹きこまれる。現実の人間がアバターになったときの落差や類似性から来る面白み。彼らを取り巻く田舎の旧家とサイバー空間との対比、様々な管理・認証システムを視覚的に表現したビジュアルの美しさ。それらを子供のように無邪気にガシャポコ破壊していく犯人の恐ろしさ。仮想空間の視覚化がなければ著しく退屈な絵になっていたに違いない。
シュワルナゼさん  また、陣内家の面々についても、説明過多にならない程度に満遍なく個性をあてがわれて、それぞれの持ち味を活かした活躍をする。結果としてドラマは徐々に主役不在の集団劇の様相を見せてくる。僕はこういったいろんな登場人物がそれぞれの特技を活かしてことにあたる展開が大好きなので、終盤の怒涛の展開は超燃えた。誰一人欠けたとしても勝利はあり得なかった。お前ら、本当によくやった。それにしても陣内家の元締めたるおばあちゃんの存在感・カリスマ性はすごい。警視総監や政治家など名だたる面々にコネをもっているらしい。お前は「みっちゃんのママ」か! あと、残され眼鏡君と小磯の「何が始まるんだい?」、「合戦だよ」というセリフで『コマンドー』(「何が始まるんです?」)を思い出して噴出した。

補足説明

・後のストーリー展開…IDとパスワードで他人になりすまし様々な権限を行使することができる世界。普段からXBOXライブとかmixiとか楽天とかやってない人には理解不能だろう。まあ、そんな人がわざわざこの映画を観に来ることも滅多にないだろうけど。

・終盤の怒涛の展開…もう一度ぐらい観に行ってここ一番というときにスクリーンまで躍り出てみんなに「鳥肌の準備はいいかー!!!」って怒鳴ってやりたいぐらいだ。



『さよならゲーム』
 3年後('91)『JFK』に主演するケビン・コスナーが「JFK暗殺はオズワルド単独犯説を信じてる」と言った。マイナー・リーグのキャッチャー(ケビン・コスナー)が将来有望な若手ピッチャーを教育してメジャー・リーグに送り出し、取り残されたケビンとスーザン・サランドンは腰も抜けよとすごいファックをする。その後すぐにケビンは球団をクビになる。なんか、主人公が挫折すればドラマになると思ってるんだろうね。



『さらば友よ』
 1968年 フランス
 アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンの共演。
「内緒で利用していた会社の債券をコッソリ金庫に返して欲しいの」
 女の口車に乗せられて金庫泥棒の汚名を着せられそうになったアラン・ドロンと、何故かドロンに惚れこんでつきまとうブロンソンが、ときどき殴り合いながら男の友情を深めていく。
 サスペンスとしては弱い。
 金庫室に閉じ込められて、汗だくの上半身を晒す2人が見所と言えば見所だったのか?
 なみなみとつがれたグラスの中身をこぼさないようにコインを落としていくゲームが効果的に使われていた。
 ブロンソンの口癖
「イエーイ!」
 が耳に残った。イエーイ! イエーイ!



『ザ・リング』
サバラ!  『リング』のハリウッド版リメイク。
 呪いのテープの謎解き主体の理屈っぽい作りだった。肝心のテープの映像がちっとも怖くないし、なんか「貞子」がゴーストというよりモンスターだった。原作にない貞子の出現シーンを創出し成功を収めたオリジナルの出来の良さを再確認した。が、日本の『リング』と違う点を探しながら観るのは面白かった。オリジナルの「貞子」に該当する人物の名前が
「サマラ」
 で、聞くたびに『まことちゃん』の
サバラ!
 を思い出してしまい参った。可笑しいじゃないか。オリジナルを観ないで鑑賞したら怖く感じたかも。後ろの方に座ってた中学生らしき女子集団はキャーキャー言ってたし。あと、サマラと貞子でユニットを組んでつんくプロデュースで売り出せばいいと思った。「銀座あたりでギン!ギン!ギン!」の志村をサマラに、ナオコを貞子にしてさ〜。
 そんなことより、『呪怨』劇場版の予告が相当怖そうだった。これもハリウッドで作られるかもしれない。



『サロゲート』(→公式サイト
 ブルース・ウィリス主演。人類がサロゲートと呼ばれる人間そっくりのロボットを遠隔操作して社会生活を営む近未来の地球が舞台のSF。

 サロゲートを発明した博士の息子が何者かに殺害された。

 物語はサロゲートを発明した博士とサロゲートの発売元であるVIS社、事件を追うウィリス、サロゲート反対勢力の指導者との四つ巴の展開で、なかなかに複雑。
 『アイ,ロボット』や『シックス・デイ』、『トータル・リコール』など近未来オモシロビックリ悪趣味テクノロジー博覧会映画かと思ってたらそうでもなく、なぜかサロゲートのテクノロジーだけ異常に発達した世界観。その他は現代とほとんど変わらない。どちらかというとアイデアの核には『攻殻機動隊』があるんじゃないかというぐらい、設定その他が酷似していた。とは言えアイデアをサロゲート一本に絞ったおかげでこの「人間もどき」の存在感・魅力が際立つ形になっている。
 このサロゲート、外見から性別に到るまで持ち主のオーダー通りに作れるおかげで、街には小奇麗な美男美女しかいない。これはこれで不気味だ。妙にツルンとして姿勢が良い小雪みたいなやつばっかなんだもん。人間なんだけど、どこか変。CG技術の進歩と限界を逆手にとった上手い手法だと思う。主人公であるブルース・ウィリスも、彼のあやつるサロゲートとして登場する。このウィリスが頭髪フッサフサで、まるで『こちらブルームーン探偵社』の頃のウィリスみたいだった。

補足説明

・妙にツルンとして…広告でよく見かける、フォトショでおもくそ明度上げた風。クラフトワーク『ヨーロッパ特急』のジャケ写を想起させる。



『サンゲリア』
 普通のゾンビものだが、一箇所とんでもない珍場面がある。女のダイバーが半裸で泳いでたら鮫に襲われてドッキリ。思わず後ずさりしたら後ろにいたゾンビにぶつかってまたドッキリ。女は逃げ、ゾンビは鮫をかじり、鮫はゾンビの腕を噛み千切る。



『幸せのちから』(→公式サイト
 ウィル・スミス主演の、実話に基づくサクセス・ストーリー、らしい。

 骨密度を計測する重い機械をセールしてまわるウィル・スミスの暮らしは家族3人共働きで暮らしていけるのがやっとだった。1人息子とのコミュニケーションの時間も満足にとれない毎日。そんなある日、「人と数に強ければ誰にでも門戸は開かれる」という言葉を信じて一念発起。証券会社の正社員の座を目指す養成コースに志願する。

 サクセスストーリーとは言ったけど、成功のキッカケとなる証券会社の正社員になるまでがメインのストーリー。なので、ほとんど最後までカツカツの貧困状態が続く。見ててつらいものがある。どんな状況でもあきらめないウィルを見るにつけ「負けたからクズってことじゃなく、可能性を追わないからクズ」という福本漫画のセリフが頭をよぎった。
 それにしても黒人1人息子。この子役はジェイデン・クリストファー・サイア・スミスという長い名前でウィルの実の息子だとか。この子がとにかく可愛かった。黒人の子供ってどうしてこんな可愛いんだろうね。もし子供を授かることがあったら黒人がいいな。変な名前つけたい。

補足説明

・黒人の子供ってどうしてこんな可愛いんだろう…白人の子供は可愛くない。なんか太ってるか矯正してるかソバカスだらけのイメージしか沸いてこない。



『シークレット・ウインドウ』(→公式サイト
 S・キング原作のサスペンス。主演はジョニー・デップ。意外に掘り出しものかもしれないという期待を胸に観賞。

 人里離れた山奥の山荘で執筆に勤しむ作家デップの元に見知らぬ男がやってきてこう告げた。
「俺の小説を盗んだ」
 その日から男の執拗な嫌がらせが始まる。

 以下ネタバレにつき注意されたし。
 正直「またそのオチか」という感想。デップの演技は悪くないし適役だとも思うけど、これじゃね……。この手の映画を見慣れた人ならすぐにデップの自作自演だと気づくんじゃないかな。特に車の男が「(言い争いしてたらしいが)俺が見たのはデップ1人だった」と証言するあたりでピンと来ると思う。タイトルにもなっている思わせぶりな「秘密の窓」は、『ドリームキャッチャー』以上に無意味だった。
 変にハッピーエンドというか、良識的な終わり方にするよりはデップ1人勝ちのこの結末はいっそスッキリして良かった。それにしても地元の警察は無能を通り越して犯罪だ。崖下の湖はまだいいとして、デップの庭を調査しないってのは酷過ぎないか。ルミノール反応だってバリバリのはずなのに。これだけやってばれないんなら、僕だって何人か殺したいぐらいだ。あと、お約束的に飼い犬を虐殺したのも興ざめ。

補足説明

・崖下の湖…車ごと死体が消えてまず捜索したい場所と言えばココを置いて他にあるまい。

・お約束的…ストーカーが相手のペットを虐殺して冷蔵庫とか軒先とかベッドの中に置いとく描写は、もういい。



『G−SAVIOR』
 ガンダム20周年を記念してハリウッドで作られた実写によるガンダム。
 MSがCG丸出し、いつの時代の話かハッキリしない、ノーマルスーツがバイストンウェルの皮鎧みたい、主人公がいい大人、などなど原典と比較して違和感を覚える点を挙げればキリがないのでここでは省略。
最も感銘を受けた点を挙げると、
「主人公の恋人がエリック・アイドル似」


影武者エリック・アイドル
左:G-SAVIORの恋人 右:エリック・アイドル




『料理長殿、ご用心』
 「料理長」の部分は「シェフ」と読む。
 有名なシェフが次々と各自の得意料理の手法で殺されていくという、何とも「人を食った」(←オヤジギャグ)演出。何かマザーグースを思い起こさせるブラックユーモアの感覚が。昔はよくテレビで放送していたのに、最近は全く見ない。DVD化切に希望。



『ジェイソンX』
 今度のジェイソンは宇宙で暴れるらしいと聞き及び、見る前からかなり興奮していた。興奮のあまり、劇場に入るときにもぎりの人をつかまえて
「ジェイソンだHO! ジェイソンだHO! アイルビーバック!」
 と唾を飛ばしながらわめきたてて劇場の人ともめたほど。
 で、感想はズバリ、予想以上に面白かった。
お前ほんとに何なんだ?  正直ここまでバカ映画になってるとは思わなかったよ。揚げ足取りをしながらあらすじを紹介する黒地のページを、ところどころフォントサイズでかくしてやりたくなってしまった。僕がシリーズで一番好きなのは「超能力少女vsジェイソン」という、馬鹿ばかしさここに極まったPART7なんだけど、今作はその7を軽く超えてしまった感がある。ジェイソンが宇宙船で暴れると聞き、じゃあこんな内容になるだろうなあ、と僕が日記で予想しそうな内容寸分たがわずやっちまった感じかな。ジム・アイザック監督は偉い。商業ベースでこんなもんやっちゃう人がいるんだネーって感じで、なんか勇気が出るよな。いや、全力でバカやってる映画を観ると毎回思うことなんだが。内容的には「エイリアン(おもに4)で観たことあるぞ?」な場面が多かったのも確かだけど、単にエイリアンをジェイソンに置き換えたに留まらず、プラスアルファの要素があって良かった。ショーン・ペンがバカのフリをする映画だのバカがジェームズボンドのふりをする映画だの日本人がマトリックスのふりをする映画なんか置いといて、みんなジェイソンXを見に行こう。世界の黒澤が撮りたかったのは、これだから。多分。

補足説明

・日本人がマトリックスのふりをする映画…複数の作品を指しています。





『ジェヴォーダンの獣』
 革命前夜のフランス。自然科学者とモホーク族の勇者が、人間を襲う魔獣の調査の為に片田舎へ派遣される。
 『スリーピー・ホロウ』と『バスカヴィル家の犬』をカンフー・アクションで混ぜこぜにしたような。
 女優がみんなとても美人だった。最後に自然科学者の戦闘力が極端にはね上がるのがズルい。
追記:モホーク族の勇者が伊武雅刀に見えて仕方が無かった。



『ジェネラル・ルージュの凱旋』(→公式サイト
 『チーム・バチスタの栄光』の続編。

 救急病棟に名だたるセンター長たる「ジェネラル・ルージュ」にまつわる医療器具メーカーとの癒着疑惑を調べるため、我らが「愚痴外来」こと竹内結子に再びお呼びがかかった。

 前作よりも面白かった。今回はミステリ部分よりも、『ER』的な、業界あるあるネタ方面が強化された感じ。伊丹十三的というか。阿部ちゃんのキャラクターにも安定感が出てきた。
 前述の通り、「誰が犯人か」部分に関しては(前作と同じで)『検屍官』のスカーペッタ方式というか『シー・オブ・ラブ』方式というか『氷の微笑』方式というか、とにかくストーリー上少しでも触れた人物が性格破綻者だったことにして真犯人にするパターンで面白みがあんまり無い。けど、真犯人が判明するシーンの高島政伸が最高に可笑しかった。ちょっとここだけもう一回観たい。
 良くなかった、というか、観客を馬鹿にしてたシーンをひとつ挙げる。病院の経費削減、リストラの波を体現していた人物が大事故の犠牲者に自らの妻子をテレビ中継で見つけてガックリと膝を折り、その後病院で無事な姿を見つけるシークエンス。ありゃどっちかで良いよ。わかりやす過ぎ。「だったらあんたの家族がやられたらどうする?」って低級なディベート術まんまな演出だ。ここはおでこに黒いトリアージのカード貼っつけられた妻子の生首と右肩の部分だけ病院の隅のシートに転がってた方が良かったな。

補足説明

・高島政伸…結構貫禄のある役どころで、「あ〜、この人もこういう役を演じるぐらいになったのだなあ」と感慨にふけってたんだけど、最後にコレ。



『ジキル博士はミス・ハイド』
 ジキル博士の孫が魔法の薬でミス・ハイドに変身してしまう。ミス・ハイドは独自の人格を持ち、新製品の手柄を横取りしてジキルの役職を奪う。ジキル大弱り。ミス・ハイドは女の特権を最大限に利用して社長と寝たりテーブルの下で大股を開いて2人の男に足コキしたりする。



『資金源強奪』
1975年 深作欣二
 賭場荒らしで稼いだ3億円を巡り、強盗一味とヤクザと警官くずれが入り乱れ、虚々実々、騙し騙されの駆け引きを繰り広げる。
 タイトルの無骨で妙な言語感覚。「源」っているか?
「信じれるのは自分だけ」
 そう言い放つ主人公・清元(北大路欣也)の言葉通り、追う者と追われる者、騙す側と騙される側、敵と味方が瞬時に入れ替わる息をつかせぬスリリングな展開。ラストも秀逸。
 深作監督の『仁義なき戦い』でおなじみだった俳優が新しい側面を見せてくれるのも面白い。
 タクボンこと川谷拓三が作る手製爆弾がバヤリースの缶を使っていて、『仁義なき戦い 頂上作戦』でも松方弘樹が作るそれがバヤリースだったような。何かあるんだろうか。まさかタイアップ…ではないよな。



『地獄のデビルトラック』
 スティーブン・キング原作であり、初めてにして恐らく最後の監督作品。エミリオ・エステベス主演。地球に大接近した彗星の影響でマシーンが意思を持ち、人間を虐殺しだす。自動販売機が取り出し口から高速で缶を飛ばして野球コーチの股間をクリーン・ヒットしたり、ローラー車がひとりでに子供を轢いたり。白昼堂々と子供をローラーで轢き殺すなんて、他の監督ならまずしない。さすがキング。エミリオ・エステベスは主演のはずなんだけど、ほとんど何もしなかった。トラック相手に演技するのは疲れただろうなー。



『地獄のバスターズ』
1976・伊
 第2次大戦中のフランス。軍法会議へ向かう護送車が襲撃され、なりゆきで脱走兵となったアメリカ兵5人組が永世中立国スイスを目指す。
 アメリカもドイツも敵という、絶望的に四面楚歌の状況が面白い。『プライベート・ライアン』で言ったらオマハビーチの鉄条網のあたりで右往左往するようなもんだ。にも関わらず基本的にC調の5人組。メンバーがとても個性的。

・中尉…最高のパイロットだったが、恋人に会うために勝手に軍用機を使う命令違反を3回も繰り返して軍法会議。リーダー的存在。唯一ドイツ語を話せる。
・トニー…お調子者で女好き。
・黒人…黒人。戦闘力はピカイチだが、他のメンバーのようにドイツ兵の軍服を着て偽装することが不可能。
・お坊ちゃん…臆病者で戦闘では期待できないが、メカに強く、機関車の運転もできる。
・ヘルメット…人間補給廠。手癖が悪く、敵味方生死を問わず備品を盗んでは身につけている。手先が器用で、パスポートの偽造もこなす。

 タランティーノが「イタリア商業映画の最高傑作」と絶賛し、『THE INGLORIOUS BASTARDS』として再映画化の予定。それもうなずける面白さだった。



『史上最大の作戦』
「私が好きなら、その鉄条網を越して来い!!」
 3時間弱ある戦争映画の超大作を前後編に分けて放映した。第2次世界大戦の明暗を分けたノルマンディー上陸作戦の話。特定の主人公を置かずに両軍の様々な人物、局面にスポットを当てる。果たして連合軍勝つか? ドイツ軍勝つか?
 以下は見てて面白かったところ。

・晴天の日に英仏海峡で最も狭い区間(ドーバー海峡)を選んで上陸してくるだろうというドイツ軍の予想に反し、シケの日、英国から比較的離れたノルマンディーに侵攻した連合軍。
・ロンメルは悪天候の日を選んで家族と休暇中だった。
・上陸地点の後方に降下し、自動的に爆竹を鳴らす落下傘人形。
・カチカチ拍子。1回鳴らして2回返って来たら味方。2回返って来たので味方だヤッホ〜イって飛び出たらドイツ兵に撃ち殺された。2回の拍子かと思ったのはボルトアクションの音だった。
・侵攻が始まったとき、総統は睡眠薬を飲んで寝ており、側近は起こさなかった。
・上層部の無能ぶりに接し、敗戦を覚悟して祝杯用にとっておいたナポレオンで部下と自棄酒をくみかわすドイツ軍将校。
・井戸の中にピンポイントで着地。そのまま音も無く沈んでいく降下兵。
・教会の鐘のそばにパラシュートがひっかかり、12時間ぶっつづけで鐘の音を聞かされ一時的に耳が聞こえなくなる降下兵。
・あわてた上官にたった2機で出撃を命じられ、極めて適当に機銃掃射して引き上げるドイツ軍パイロット。その適当な掃射でも確実に何人かは死んでいるんだが。
・苦労して攻略した崖上のドイツ陣地には、まだ砲台は据え付けられていなかった。
・降参しても撃たれるドイツ兵(いつも)。
・上陸部隊、降下部隊、双方末端レベルではほとんど連絡がつかずに行動していた。
・間抜け顔な若き日のショーン・コネリー。とても未来のジェームズ・ボンドに見えん。
・バグパイプ兵?を先頭にしてゆっくり進軍する英国特殊部隊。
・迫撃砲の嵐の中を、まるで無人の野を行くごとく平然と歩いて来る修道女たち。

 幾度となく「そんなの『プライベート・ライアン』(or『バンド・オブ・ブラザーズ』)でとっくにやってらい」という場面があった。逆である。



『7人のおたく』
 ミリタリーおたくの呼びかけで、格闘技おたく、フィギュアおたく、マックおたく、車改造おたく、無線傍受おたく、レジャーおたくが結集。さらわれた赤ちゃん救出のためにとある漁村に乗り込んだ。
 ウッチャンナンチャンが大真面目に演技する姿が逆に可笑しかったりする。現実に即したスケールのセコさかげんも良い感じ。謎の「七色仮面」も活躍するぞ。



『7人のマッハ!!!!!!!』(→公式サイト
 基本的人権に対して鷹揚なお国柄を逆手に取った出鱈目一歩手前の罪深いギリギリアクションでアナン国連事務総長をマジギレ寸前まで追い込んだ『マッハ!』のスタッフが、またまたアクションを作った。

 毛布や食料を持ってスポーツ少年らが地方の貧しい村を訪れた。和気藹々。そこに反政府ゲリラがやって来て村を占拠。村人はたくさん殺された。人質に取られた村人だが、スポーツ青年らの鼓舞に勇気を奮い立たせ一斉蜂起。徒手空拳で反政府ゲリラを撃滅した。

 『マッハ!』とストーリーも繋がっておらず、トニー・ジャーも出てこないが、スタントの危なさ加減は健在。ストーリーも単純明快で、すんなり入っていける。アクション映画の鑑だ。7人の青年もそれぞれの特技を活かして活躍し、そこがこの映画の面白いところ。見たところラグビー選手の体当たりが一番効きそうだった。セパタクロー選手の竹のボールは効くのか疑問だったが、そのままキックした方がいいような距離で強引に竹のボールを蹴り当てにいくひたむきさが心をうったりうたなかったり。



『シックス・デイ』
 「シックスデイ」じゃないのか? と思ったが、原題は「6th Day, The」だった。神が人間を作りたもうた最初の6日間のこととか何とか、聖書に書いてあるんだって噂をまた聞きしたような記憶がある。
 過去のシュワちゃん映画と比べると、『トータル・リコール』に似たタイプの、近未来ビックリ技術博覧会だった。『エンド・オブ・デイズ』の後に観たので、すごく面白い気がした。
 「シュワちゃんが一般市民を殺した数」で『ターミネーター』と良い勝負をしそう。一応クローン技術を握る会社イコール「悪」という描かれ方をしているんだが、会社の人間の大部分は警備員も含めて普通の人であるはず。相当な人数を撃ち殺していた。なのにシュワちゃんおとがめなしで海の向こうにランナウェイ。
 苦悩する博士の役でロバート・デュバルが出ているが、とても浮いていた。



『シティ・スリッカーズ』
 試験をサボッて観に行った覚えがある。
 都会の生活に疲れた中年のオッサン3人組が西部の雄大な自然に囲まれて自分探しツアーを楽しむ。退屈になりそうなテーマながら、全篇コメディ・タッチで難なくラストまで見せる。
 『トレマーズ』と同じロン・アンダーウッド監督作品。続編を財宝探しアドベンチャーにしてしまう出鱈目さが素晴らしい。



『自転車泥棒』
自転車泥棒  第二次大戦直後の1948年。戦禍の痕も生々しいイタリアが舞台。貧しさの中でようやくビラ貼りの仕事にありついたアントニオだが、仕事に不可欠な自転車を盗まれてしまう。彼は小さな息子と連れだって泥棒探しに出かけるのだった。
 何ともわびしい発端ながら、なかなか軽妙なノリでテンポ良く話は進む。息子ブルーノの明るさに救われる。
「自転車に生活がかかっている」
 という社会状況の厳しさが、いま見るとSFチックで興味深い。



『シベリア超特急2』
 前に僕が予想したものと、当たらずとも遠からずといった感じ。デブ&ヤセーが出演してなくて少し残念だった。全体的に支離滅裂なところが少なくなったなー、と思っていたら、やはりというか、最後の謎ときで何もかも崩壊したのである意味安心した。
 ハッキリ言って「バカ映画」としてあざ笑うために観に行ったようなもんだけど、そこら辺を水野晴郎はどう思っているのかが気になるな。推察するに、本人はあんまり気にしてない、というか大好きな映画を作ることができて嬉しい気持ちの方がはるかに勝っているんではないかと。「やりたいことをやったらこうなりました」というか。「テクニックも知識もプロの監督に到底及ばないし、良い映画なんて撮れそうにないから」という理由で水野晴郎がこのシリーズを作ることがなかったら、それは(少なくとも僕にとっては)つまらないことなので、晴郎のわがままパワーだけは尊敬する。
 それから、ここから下は観た人だけ反転させて読んでください。僕の疑問、というかちょっとした不満です。
殺された人の声を電話で真似て、そのままクローゼットの中に隠れた男の人は、どうやって部屋を抜け出したのか? その点に関する描写が無かった。もともとすべてがご都合主義の謎解きだけど、「説明が全く無い」というのは嫌だな。ちゃんと「無茶な説明」をつけて欲しかった。クローゼットに隣の部屋へ通じる抜け穴があった、とか。あと、本文で、流れ上「本人はあんまり気にしてない」と書いたけど、「まったく気づいてない」可能性もある。コワ。


『シベリア超特急3』
 非常にマズいことになってしまった。晴郎の学習機能が作動したらしい。謎解きがどうしようもなくヘボいことを除けば、普通のB級映画に近づいてしまったのである。Part1のダメなリメイクのような出来。晴郎が露出する時間が減ったのも一因だろう。何と言えばいいのかな〜、以前は狙わない素の部分が異常で可笑しかったのに、今作は前2作の反響を聞き入れてこちらの様子を覗っているようなイヤらしさが感じられる。ロバの耳を生やした裸の王様が、耳を隠して衣服を着てしまった。残念。肩を落として劇場を去る我々を、RAPシベ超が空しく送り出した。



『ジム・キャリーのエースにおまかせ!』
 言われないと『エース・ベンチュラ』の続編であると気づかないかもしれない。 ペット探偵のエース・ベンチュラが、ロッキー山脈からヒマラヤ、アフリカの辺境を巡ってドタバタを繰り広げる。前作を見なくても「エース・ベンチュラ=ペット探偵」という予備知識だけで楽しめると思う。むしろ前作はイマイチ面白くなかったので見なくても良い(断言)。舞台や人物もベンチュラ以外無関係だし。 で、今作はさすがにヒット作の続編というだけあって金銭面でもスケール・アップしている分楽しめる。



『下妻物語』(→公式サイト
 下妻物語……。予告編を観て『木更津キャッツアイ』を連想し、しかも主演が深キョン。なんかそーいう……アレじゃろ? 根拠なく敬遠してたんだが、評判がすこぶる宜しい。遅れ馳せながら観に行ってみた。

 ロリータファッション大好きっ子の桃子はヤクザくずれの父親が売りさばいていたニセブランド商品を衣服代の足しににしようと雑誌に投稿した。それを見てやって来たのは改造した原付を乗り回すヤンキーのイチコだった。それ以来なぜか桃子につきまとうイチコ。行動を共にするうちに、2人は互いの長所と短所を認め合い真の友情で結ばれていく。

 僕の拙い文章で要約すると何てことはない話なんだけど、これが実に面白い。まず映像が今ふうというか、監督がCM出身なだけあってガイ・リッチーに近いテイスト。徹底的にカリカチュアライズされた人物がさまざまな加工を施された画面の中を動き回る。とくに最初の数分間は自己完結している桃子の主観が中心なので、空を飛んだりロココ時代だったり画面にテロップが被さったりで、かなり不安になる。これはこれですごく面白いけど、最後まで持つんだろうか? そこにヤンキーのイチコが介入してくることで、桃子の(歪んだ)主観のスペースが徐々に侵食され、歪められた現実の描写はなりを潜め、観客の興味も自然とストーリーに向く。これは巧い。ラストで前半の漫画チックな挿話が意味を持って来る。アニメパートは伊達にアニメじゃなかったこともわかる。桃子が宙を舞ってから地に落ちて再生するところや、崇拝と性愛の対象を一挙に喪失したようなイチコの失恋やら、ロリータファッションとヤンキーファッションの相似やら、いろいろと解釈できそうなところもサブカル全開という感じ。ちょっと1回観ただけでは把握しきれない。使い古された青春・友情もののプロットに新しい生命を吹き込んだ。邦画もまだまだ捨てたもんじゃない。

補足説明

・崇拝と性愛の対象を一挙に喪失したような…この場面、ツルゲーネフの『はつ恋』ぽい。



『シャーロック・ホームズ』(→公式サイト
 あの『ロック・ストック・トゥー・スモーキング・バレルズ』の、あの『スナッチ』の、その後マドンナといちゃつきだしてから鳴かず飛ばずのガイ・リッチー監督最新作はなんと古典ミステリの大御所「シャーロック・ホームズ」シリーズを題材にしたアクション・アドベンチャー。

 怪しげな幻術で人心を翻弄するブラックウッド卿が執り行う儀式の場に踏み込んだシャーロック・ホームズとワトソンは、なんとか彼を拘束することに成功した。しかし卿の死刑が執行された翌日、墓所の蓋が内側から破壊されており、ブラックウッド卿の遺体は忽然と姿を消していた。

 大昔にシャーロック・ホームズシリーズすべてを読みあさり外伝やパロディにまで手を出して所謂「シャーロッキアン」に半分なりかけていた僕であるが、見終わった感想は、ま、いーんじゃねーの? ロバート・ダウニー・ジュニアのホームズはそれなりにさまになっており格好良い。ジュード・ロウもワトソンだと言われればそうかな、って気がしてくる。しかし肝心要の「ミステリ」の側面がショボい。共犯とか謎の国の毒薬とか使われた日にゃドッちらけるよ。しかしこういうトリックも敢えて古典的ミステリのムードを出したかったんだとしたらまあ、うなずけなくも無い、かな。『バスカヴィル家の犬』もそんな感じだったし。どうせなら消えた凶器はつららだったとか、密室殺人の犯人が猿だとかいうのをやって欲しかった気がするけど。
 ただ、冒険譚としてのホームズ物語としてはさすがにCGの力によって迫力満点の仕上がり。ロンドンの雑踏や波止場を縦横無尽に駆け回るホームズ&ワトソンの活躍に胸踊らされた。いいんじゃないの? 原作ファンに対するサービスもそこそこ散りばめられており、良くも悪くも無難な仕上がりというか。敢えて「レストレード警部の顔が全然『白いイタチ』っぽくない。むしろジャップ警部では?」だとか「モルヒネとかコカイン中毒の設定はどこいった」とか「鹿撃ち帽かぶってねーじゃん」とか「メアリがワトソンと知り合うのは『緋色の研究』なんだからこの時点でホームズと初対面ってのはおかしい」とか「モリアーティ教授の名前が出てくるのって『赤毛連盟』じゃなかったっけ」とか、「いや、化学実験が趣味なのってむしろワトソンだから」とか、小うるさいことは言いますまい。
 次回作でモリアーティ教授との対決を臭わせているけど、他にもベイカーストリート・イレギュラーズや兄のマイクロフトなど原作のレギュラーに加えて切り裂きジャックやオスカー・ワイルドなどの同時代の有名人も登場させて欲しいものだ。

補足説明

・ロンドンの雑踏…実際にはあんな綺麗な石畳ではなく、馬糞がそこかしこに転がって大変な臭気を絶えず放っていたらしい。

・ホームズ&ワトソンの活躍…ロバート・ダウニー・ジュニアが公の場で「あいつらゲイだから」って発言をして著作権保持者の顰蹙を買ったらしい。そういった側面に興味のある方は「3人ガリデブ」を読むことをオススメする。ある意味二人の友情が真骨頂を迎える瞬間が描かれる。



『ジャズ大名』
 南北戦争により解放された黒人が、アフリカへ帰る道すがら遭難し、幕末の日本へ漂着。そこで古谷一行演ずるリベラルな大名と意気投合。座敷牢をステージに一大セッションを繰り広げると、いつのまにか明治元年だった。
 実に脳天気な映画。黒人が登場するからとりあえず差別と和解を描いとくか、というおきまりを捨て去り、あっというまに打ち解けてセッションが始まるお気楽さ。この描写がハチャメチャで、普通の楽器の他にも茶釜、洗濯板、そろばん、大砲、鮫のアゴを使って城内総出で乱痴気騒ぎ。そこへ世直し一揆、官軍、幕府軍、ええじゃないかの集団が突っ込んで来る。この騒ぎが85分の上映時間のうち、最後の約20分間。延々と続いて、劇終。
 いやー、音楽って本っ当に素晴らしいですね。



『ジャスティス』
 アルパチ扮する正義派の弁護士が頑張れば頑張るほど依頼人が死んでいく不思議な話。「依頼すると死ぬ弁護士の話」。一種の都市伝説だよな。ネエネエ聞いた? 3組の鈴木さん、アルパチに弁護されて1週間後に死んだらしいよ…って、松嶋菜々子がインタビューに来るかもしれない。政治的駆け引きによって今まで敵対していた検事のレイプ疑惑に対する弁護を引き受けるが、なんかもうどーでもよくなったアルパチはブチ切れて冒頭弁論で「こいつは社会のクズだ! 弁護なんかできるかアホンダラ!」とわめきちらし、退出させられる。そして検事は有罪。法廷モノとして実に画期的だった。アルパチと仲の良いおじいさんが、な〜んか記者会見で腹撃たれそうな顔してるな〜、と思ってよくよく見るとやっぱり『ゴッドファーザーPARTU』のハイマン・ロスだった。あんたら殺し合ってたやん!

補足説明

・『ゴッドファーザーPARTU』のハイマン・ロス…リー・ストラスバーグ。アルパチの師匠らしい。



『シャッターアイランド』(→公式サイト
 マーティン・スコセッシ監督。ディカプリオ主演。とにかく予告編の「面白そう度」が高く、ものすごく期待して出かけた。

 精神疾患のある犯罪者が収監されている孤島の施設で、ある女囚が謎の失踪を遂げた。本土から招集されたFBI捜査官テディ・ダニエルズ(ディカプリオ)は、彼女の消息を追ううちに自らの過去をも絡めた謎の連鎖に突き当たる。

 映画が始まる前に「この映画の衝撃的なラストは誰にも話さないでください。あと、映画の至る所にヒントがあります。登場人物の目線や指の動きに注意してみてよ。あんたは何個気づくかな?」(大意)というテロップが流れる。配給会社が勝手につけたもの。否が応にもハードルがガン上がるが、観終わってみるとそれほど衝撃でもねー! 何考えてんだ。配給会社。
 ここからはネタバレ全開モードなので未見の方は注意召されよ。
 はい、全部刑事プリオ君の妄想の産物でしたよー、というオチ。ばかやろー! もうそのオチはやめてくれよ。最愛の妻を射殺してしまった失意の刑事プリオ君は自責の念にさいなまれるあまり精神に失調をきたし、自身が収容された精神病院を「孤島にある捜査現場」に仕立て上げて自らを取り巻く環境と妄想との齟齬を埋めていましたとさ。どっちらけ〜。妄想ならなんでもアリじゃんか。あらゆる映画のラストに「は! 妄想だったか」って主人公のアップ付け足せば量産できるっつーの。一応周りの医師や看護師が彼の妄想に付き合って行動し現実との齟齬に彼自身の力で気づかせ回復を図っていたという説明があるんだけど、言い訳にしか聞こえない。最も許せないのは、予告編の段階で出てきた錯視のトリックが、どこにも関わって来なかったこと。てやんでい。そういう小手先のちょろまかしやってるとますます洋画離れが進むよ。配給会社の人。ここ読んでたら余計なハードル上げはやめなさい。それか中央線にダイブして下さい。僕の通勤路と無関係だから。



『シャレード』
 「シャレード」は「ジェスチャーゲーム」の意味。ちょっとオツムの弱そうな若い未亡人をオードリー・ヘップバーンが演じる。
 留守中に資財をすべて売り払って失踪した夫が変死体で見つかった。途方に暮れるオードリーは、さらに驚くべき事実をCIAから聞かされる。夫は大戦中に政府の金を横領しており、その金を1人占めして仲間から逃亡中だったというのだ。オードリーの元に不気味な3人組が現れ、金をよこせと脅迫するが、彼女は戸惑うばかり。唯一の味方だと思っていたピーター(ケーリー・グラント)の素性にも疑念が生じ…。
 ミステリ仕立てで、かなり人が死ぬんだけど全体のムードとしてはノンビリしてる印象。例えばバスタブで義手の男の水死体を見つけたときも、
「うわー、死んでる」
「綺麗な死に顔だ」
「これ警察に見つかるとヤバくない?」
「乾かして服着せてベッドに寝かしちまおう!」
「それ、名案!!」
 敵対してたオードリーとならずもの2人組とピーターはにわかに共謀しだす。結局警部に「ベッドで水死するヤツがいるかっ!」って一喝される(だけで済んだ…)。大らかというか…。時代の空気なのかオードリーの人徳なのか。
 『大脱走』の脱走成功組の1人であるジェームズ・コバーンが、猟奇的な死に方(しかもダイイング・メッセージつき)をする。



『シャンハイ・ナイト』(→公式サイト
 『シャンハイ・ヌーン』の続編。ジャッキー・チェン主演。ゴキゲンな相棒は、ご存知あの金髪の外人。前作よりもアクションが増えて、さらに楽しい作品になった。開拓時代のアメリカを離れ、舞台は19世紀末のロンドン。とりあえず「イギリス」で連想する場所と言えば檀さん大和田さん檀さん? ロンドン橋、バッキンガム宮殿、ビッグ・ベン、マダム・タッソーの蝋人形館、ストーンヘンジ、すべて見せます周ります。外人も頑張った。
 ハリウッドに進出してからは香港時代にやったアクションの流用をときどき見かける。前作でジャッキーの投げたトマホークをインディアンが受け取り、仲間に手渡して向かって来るカットがまんま『プロジェクトA2』だった。今回は警官の警棒をベルトに通すのと、口に含んだ食べ物を目潰しに使うシーンがもろに『プロジェクトA2』のもの。ジャッキーはよっぽど『プロジェクトA2』を気に入ってるんだろう。あと、壷を相手の脇や股に挟んだり腕や頭に乗っけて動けなくするのは、なんだっけ? 『蛇拳』の修行シーン? 香港時代のジャッキー映画は、アメリカ人ほとんど見てないんだろうね。



『13日の金曜日』(2009)(→公式サイト
 『悪魔のいけにえ』、『ハロウィン』、『ゾンビ』などなど、最近のリアル志向リメイク路線にのって作られた『13日の金曜日』。シリーズとしては11作目なんだけど、ナンバリングもサブタイトルもついてない。監督は『悪魔のいけにえ』のリメイクを手がけた人。

 クリスタルレイクのキャンプ場に現れたジェイソンが次々と人を殺し始めた。

 以下の文章は今作も含む13金シリーズ通してのいろんなネタバレを含んでいるので、未見の方は注意。
 冒頭に回想シーンのような形でジェイソンの母親が首を切り落とされるまでを描く。その後舞台は一気に現代に飛ぶ。ジェイソンがズタ袋をかぶったエレファントマン状態で現れ、途中ホッケーマスクを装備する。その後は、淡々と進んでいき、終わり。可も無く不可も無くという感じ。今更なんでこんなもん作ったんだろうという当たり前の感想しか浮かばなかった。シリーズのファンとしては全然面白くない。なぜ面白くないかを説明するために、ここでちょっと横道に逸れてシリーズの流れ&見所をざっと表にまとめてみた。


13日の金曜日
『スクリーム』の冒頭でもネタになっていたが、犯人がジェイソンじゃない。ちょっとしたミステリ・タッチ。あと、ケビン・ベーコン。
13日の金曜日
PART2
成長したジェイソン登場。エレファントマン的な出で立ち。母親の生首を祭壇に。
13日の金曜日
PART3
3D映画として公開された。凶器がこっちに向かってくる演出が多用される。ようやくホッケーマスクを装備。
13日の金曜日
完結編
コリー・フェルドマン。ちなみにPart2〜完結編までは時間的にほぼ連続した出来事。途方も無い連続殺人事件である。
新・13日の金曜日
なんとジェイソンの偽者が犯人。ホッケーマスクを逆手に取ったオモシロ設定。偽者の割になかなかの健闘ぶり。
13日の金曜日
ジェイソンは生きていた!
「生きていた!」っていうか、完結編の生き残りの少年が成長して墓を暴き、火葬にするつもりが誤って雷で生き返らせてしまう。ジェイソンの不死属性が暴走しだす。
13日の金曜日
新たなる恐怖
ジェイソンが超能力少女の念力で復活。念動力でのたうつ電線に一瞬ポカンとするジェイソン。いきなり生き返った少女のお父さんがジェイソンもろとも湖底に消える。個人的にジェイソンの造形が一番好き。
13日の金曜日
ジェイソンN.Y.へ
また復活→即ホッケーマスクをゲット。NYの市民にハブられる。初めてしゃべる。
13日の金曜日
ジェイソンの命日
シリーズ最低の出来。いきなり特殊部隊に爆破されるジェイソン。ジェイソンが不死身なのはジェイソン心臓のせいだった!? 妹登場。
ジェイソンX
未来の話。ジェイソン宇宙へ。バーチャル空間で首をはねられた被害者がしゃべる。アンドロイドと対決。宇宙船を宇宙ステーションに衝突させ、シリーズの被害者数記録を雑に更新(数百人単位)。デビッド・クローネンバーグがカメオ出演。



 ……とまあ、こういう流れになっている。「生きていた!」あたりから当初のサイコ・サスペンス的な雰囲気はなくなり、半分はファンに向けたお祭り的なもんになっていた。主に「どうやって生き返るか」、「凶器は何か」、「どうやって死ぬか」が興味の対象になって、本気で怖がろうなんて思ってる人はあんまりいないんじゃないだろうか。そこへ持ってきて今回のリメイクですよ。リアル路線ということで、あまり面白い殺され方が無かったのが最大の不満。ほとんどがナタか、それに類する刃物で刺殺。しかも怖がらせる演出がお粗末。怯える若者の顔のアップから、カメラが引くと真後ろにジェイソンが突っ立ってる、という見せ方ばっかりだった。
 褒めるところもある。まず出てくる女の子が可愛い。そして近年珍しく惜しげもなくビーチク見せまくり。ここらへんのノリを再現したのは偉い。きっと真面目な監督なんだろうな。あと、最初の犠牲者が2組いたカップル以外の独り身の男なのは可笑しかった。生きにくい世の中になったもんである。
 クソ真面目なだけにツッコミどころは少ないんだけど、山荘に来る犠牲者達のパーティ編成が変すぎ。かっこいい白人男性2人(うち独りは山荘の持ち主の金持ちのボンボン)と、彼らのガールフレンド(美人)&ボンボンのカキタレ(美人)、それに黒人男(ラッパー)と中国人男(お調子者の負け犬)というよくわからないメンバーだ。どういう知り合いなんだよ。まあ人種が偏らないようにって配慮だろうけど、つくづく真面目な監督だね〜。なんでこんな映画ばっかり撮ってんだか。というわけで、一本の映画として見ると★3つぐらいが妥当なんだけど、シリーズのファンとしては大好きなモノを汚された気がするし、タイトルからナンバリングを消した罪も加算して★いっこ。こんなの流行にのって金儲けのために無難なことやってるだけじゃん。死にさらせ。

補足説明

・面白い殺され方…木の幹にぶん投げて腕がもげるとか、単に思いっきり殴って首が回転するとか、ベッドごと折り畳むとか、ベルトで締め上げて顔面圧搾(by偽者)とか、力任せの荒業が皆無だったのが痛い。

・出てくる女の子が可愛い…ホラーとか、しょーもない(アカデミー賞とか無関係そうという意味で)映画に限って女の子が可愛いというハリウッド映画七不思議。ここらへんの娘らがどーしてスパイダーマンやバットマンのヒロインにまで這い上がれないのか。

・ツッコミどころは少ない…上のシリーズまとめ表で、書くべきことが何も見当たらない感じ。どーしよう?



『13日は金曜日 PART25 ジャクソン倫敦へ行く』
見えないのに指差してるし  殺人鬼の家系に生まれたジャクソンは自らの血を呪いながらも殺戮を繰り返してしまうのであった。
 そんなジャクソンが盲目のSM嬢と知り合い恋に落ちる。13金シリーズ(+『悪魔の毒々モンスター』?)のパロディ。バイロンの詩を暗唱したり、全力疾走でロンドンの大通りを逃げ回ったりするジャクソン。変なもん見た〜。



『十三人の刺客』(→公式サイト
 三池監督が名作『十三人の刺客』(未見)をリメイクした、とか。

 悪いお殿様暗殺計画をするために役所広司が仲間を集めて頑張る!

 仲間を集めていく過程、道中、決戦と綺麗に三幕構成になっている。どのパートも見応えがある。刺客の面々はいきすぎない程度に味付けされており、演じる役者も個性派ぞろい。こういう時代劇のカツラっていうのは役所広司や市村正親や山田孝之みたいな元の顔が濃すぎるほうが似合うしスクリーン映えするもんだなと思った。
 ラスボス的存在の稲垣吾郎の悪者っぷりがすさまじかった。十三人を相手に一歩も引けを取っていない。



『12人の怒れる男』
 裁判が終わった後の陪審員室が舞台という、いわゆる「法廷もの」の中でも異色な作り。11人が有罪、1人が無罪と判じた事件をめぐる喧喧諤諤の議論は、やがて被告、被害者、目撃者のみならず陪審員1人1人の人間性までも浮き彫りにしていくのだった。
 ミステリーとしても秀逸。「事件の夜、本当は何が起こったのか」が納得のいく形で徐々に明らかになる過程はスリリング。
 リメイク版や、三谷幸喜の『12人の優しい日本人』と見比べてみるのも面白い。



『12人の優しい日本人』
「もしも日本に陪審員制度があったら?」
 法廷サスペンスの傑作『12人の怒れる男』の舞台を日本に置き換え、三谷幸喜の味付けでユーモラスに料理しなおした佳作。
 見終わって「日本に陪審員制度がなくて本当に良かったな」と思った。



『16ブロック 』(→公式サイト
 ブルース・ウィリスがNYの警官に扮して囚人を護送する映画。

 ひょんなことから証人の護送を押し付けられたブルース・ウィリスは、人生で一番長い2時間を経験することになる。

 護送を引き受けた証人の黒人が警察の内部汚職事件の目撃者だったことから、仲間の警官に狙われることになる。最初は反目しあってた黒白コンビに信頼・友情が芽生え……というバディ・ムービーの王道に乗っ取りながらも、要所要所の描き方がキチンとスリリングで及第点かそれ以上の出来。少なくともスタローンやシュワちゃんが暇つぶしに出た駄目な刑事ものよりは遥かに良い。タイムリミットが上映時間とほぼ一緒の2時間なのも中だるみしなくて良い感じ。この手の映画好きならオススメ。とくにウィリスが最初の襲撃に気づくシーンと、警察全部を敵にまわす覚悟で汚職警官に発砲するシーンは印象に残った。かっこいい。
 伏線をばら撒きすぎて回収しきれてないところが残念。また、「NY」、「ウィリス(刑事)」、「白黒コンビ」ってことでどうしても『ダイ・ハード3』と比べてしまう。こっちはもっとドラマ寄り。

補足説明

・この手の映画…『48時間』、『ミッドナイト・ラン』、『ターミネーター』などなど。



『呪怨(ビデオ版)』
 怖い怖いと言われて構えて観たせいか、それほど恐くなかった。子供と動物は、演技ができないので、ホラーに出てくると少し興醒めしてしまう。それと、最後の方に「スプラッタでもそこまでやらねえぜ」ってな残虐描写があり、ちょっとヒいた。
 しかし水準以上の出来であるのは確かだと思う。携帯電話やウォークマンなどの小道具、夕暮れの日本家屋や職員室といった、身近な素材を上手く使っている。
 柑菜の弟さんは無事なんだろうか?



『呪怨(劇場版)』
 ビデオ版の方が恐かった…。 ビデオ版で恐くなかった「子供と猫」の要素ばかり強調されていたので。子供と猫が嫌いな人には死ぬほど恐い映画かもしれないよ。奥菜恵は可愛かった。
 はやくも夏に2が公開されるらしい。



『呪怨2(ビデオ版)』
 今度は戦争だ!
 呪怨が呪怨を呼んで人がバタバタ死んでいく。怖かった。
 柑菜の弟の行方はようとして知れず。
 ふだん使っているデッキで観ようとすると「クリーニング時です」と表示が出た。クリーニングテープをかけて、他のテープがちゃんと再生されるのを確認してからもう1度観ようとすると、また「クリーニング時です」。なんでだ? 呪怨か? しかし予備のデッキ経由で鑑賞に成功。呪怨に勝った。



『呪怨2(劇場版)』
おかP  ジルベール・ベコーことガビョ布と『呪怨2』を観た。ビデオ版の印象が強過ぎるせいで劇場版1作目の記憶が全く無かったので、以前の感想を読んでみたが「じゅおんというより、ジュディ・オング?」とか書いてあるだけでわけわかんない。しかし、観てみると別に1作目ノータッチでも全然構わない内容だった。恐くない。恐がらせるシーンで笑っちゃった1作目よりはマシという程度。一番恐いと思った「決まった時刻に聞こえる怪音」のエピソードは『新耳袋』から持って来たらしい。ストーリーは無きに等しい。それでも時間軸を前後させると何か深い意味があるように見える不思議。畳の黒いシミからちょっとだけ突き出てる頭頂部などの人間の体の一部や、逆光に立つ人、髪が垂れ下がった子供など、表情がわからない相手に抱く恐怖感は本能的なものかもしれない。暗闇が恐いのと同じ理屈。ノリピーの微妙なしゃくれ具合がずっと気になって仕方がなかった。ビデオ版『呪怨2』のフライパンのシーンが見たかったが、無かった。ほとんどそれだけが楽しみだったのに。観終ってから、貞子と伽椰子を戦わせたらどうなるか、『TATARI』の駄目さ加減、『女優霊』の恐さが外人にはわからないだろう、『回路』後半の出鱈目さは素晴らしいけど説明するとネタバレになるので出来ない、などガビョ布と話した。



『主人公は僕だった』(→公式サイト
 予告や宣伝の仕方を見る限りSF的なプロットを味付けにしてはいるけど、それほど突き詰めてない、御伽噺系のありがちな感動ものだと踏んでおり、まず見に行くまいと思っていた。ところが何故か普段こういうオサレ系の雰囲気が漂う映画を毛嫌いしているヤックンこと薬丸じゃない方こと桜塚じゃない方こと安井僚介が見に行きたいとか言い出したので、しぶしぶ鑑賞。大方ファミ通あたりで変に褒められてたんじゃないかと推測。

 四角四面な性格で規則正しい生活を送る国税庁の会計検査官ハロルド。彼はある日、頭の中で自らの行動にナレーションがかかる現象に遭遇する。当惑するハロルド。やがて彼の規則正しい生活にも変化が生じ……。

 やっぱり思った通り。いたるところに齟齬が散見される。しかしこういった映画の場合、その粗をいちいち指摘するのも大人気ない感じがするのが嫌なところなんだ。そういう齟齬に目を閉じるにしても、女性作家が書くハロルドの生活に大した文学的な価値みたいなもんを見出せないのが痛い。それだけにダスティン・ホフマンの感激ぶりが浮いてるように見えた。
 独学でギターの特訓を始めてそこそこ弾けるようにまで上達した主人公が意中のナオン部屋に初めて招待されたときに、これ見よがしにソファにギター(友達にもらった引き出物という説明)が放置されてるのが可笑しかった。ぜってー孔明の罠だ。そんでそれ弾いてるうちに女が傍らに寄ってきてチューして組んずほぐれつ……ってオイオイ。そんな都合の良いシチュエーションがあるかい! そりゃな、オレだって女の子の部屋に何気なくXBOX360のコントローラーが置いてありゃさ、そしてHALO2でも差し込んでありゃ、ひとかどのもんだぜ? まずあり得ねーが。
 しかも終わり方が気にくわねーし! こんな映画をしたり顔で「面白かった」なんてホザく鈍感な大人だけにはなりたくないもんである。

補足説明

・SF的なプロットを味付けにしてはいるけど、それほど突き詰めてない御伽噺系のありがちな感動もの…『天使のくれた時間』とか『ブルース・オールマイティ』とかなんかそういうやつ。SFのサイエンスの部分が曖昧なまま。「法則」をハッキリさせてない大人のズルさが漂うやつ。



『ジュラシック・パーク3』
 川でずぶ濡れになりながら、トリケラトプスに嫌というほど小突かれる男がオモロかった。一種の恐竜コントとして観るといいのでは。



『シュレック』
 トロールの亜種っぽい醜い生物が主人公。シュレックは個人名。ダウンタウンの浜ちゃんがシュレックの声をあてている。冒頭から泥で歯を磨いたり芋虫を食べたり、下品な映像のオン・パレードで楽しかったけど、本編は意外にまともな「おとぎ話」だった。浜ちゃんの声がマッチしているとは思えない。これがTVシリーズだと、5回も観続ければ慣れてくるんだろうけどね。でも吹き替え自体は上手だったんじゃないかな。さすが噺家というか。おとぎ話のキャラがもっと関わってくれば良かったかなー。「お供のロバ=お調子者かつおしゃべり=黒人」の方程式により、オリジナルではエディ・マーフィーが声をあてているという。プププ。なんで日本版で松ちゃんにやらせなかったのか不思議だ。「お供の3大条件ってなに? ってことやんか」



『シュレック2』(→公式サイト
 シュレックの2作目。新キャラクター・長靴を履いた猫の声をアントニオ・バンデラスが演じてるらしい。バンデラスの「熱さ」がどんなふうに反映されているのだろうか。日本語吹替版で見た。

 幸福に暮らすシュレックとフィオナ姫だったが、フィオナ姫に国元から召集がかかる。両親とのご対面という難局を見事乗り切ることができるかシュレック?

 前作は野外での冒険が主な見せ場だったのに対して今回は王室のお家騒動が中心で室内のシーンが多め。必然的に動き回る人間の数が増えており、CG界の進歩を感じる。
 なんと言っても新キャラクターの長靴を履いた猫が可愛い。毛玉はきだしたり片足上げて毛繕いしたり。う〜む。参った。
 バンデラス&エディ・マーフィによる「LIVIN' LA VIDA LOCA」ディエット(なんて濃い2人だ)による登場人物総登場のグランド・フィナーレも『座頭市』以上に楽しく気に入った。サントラ買ったし、このシーンのためにDVD買う予定。



『少女革命ウテナ/アドゥレセンス黙示録』
 アンシーが眼鏡を外し、アキオが情けなくなり、七実が出てきませんでした。



『少林サッカー』
 ヤックンことアクション・ジャクソンことニセアカギこと安井ご推薦の『少林サッカー』を観た。何やらサッカーと少林寺とマトリックスを合わせた香港映画だという。マトリックス…アジア映画…。と聞いて思い出すのが『聖石傳説』(04/06日記参照)「どーせまたアレじゃろ? 映画ヲタが腕組みしながら、やれピージャクだのやれライミ節だのやれプータイシだのやれクレしんだのブツブツ言いながら、『コレ! コレが映画に求めるファンタジー!』とか1人で感極まりながら上映中に1000回ぐらいうなずいて、帰ってから風呂にも入らないでパソコンに向かって、プログラムで俳優&スタッフが他のどんな映画に出てたか逐一チェックして、固有名詞まみれの感想文を埋蔵金でも発掘したみたいに得意になって吹聴する類のバカ映画じゃよね? なんか最近そんなんばっか観てないか?」といぶかりつつも初回上映へ。

 感想。面白い! コレ! コレが映画に求めるファンタジー! CGその他の特殊効果の使いどころが秀逸。よく「『キャプテン翼』を実写でやった」と形容されてるけど、その100倍はスゴい。手放しで誉めたい。サッカーだけに。次回作は少林ベースボールで是非。



『ジョーズ』
 何度観ても面白い。何度観ても市長を殴ってやりたくなる。何度観てもロイ・シャイダーの奥さんは浮気してそうだと思う。弾丸が水中で軌跡を描く演出は『ネイビー・シールズ』や『プライベート・ライアン』で観たことがあるけど、この映画ですでに登場。ラストのジョーズ・バトルで実質的にはロイ・シャイダーしか仕事してない(ボンベくわす→撃つ)のな。他の男は、餌になったりなりかけたり。言わばデコイである。嫌な人生だな〜。



『食神』
 『少林サッカー』が面白かったので見てみた。
 確かに「少林サッカー以前」という感じがした。後半の盛り上がりはさすが。こちらにも少林寺が出てくる。『少林寺への道』を見ておくとより笑えるかも。



『処刑教室 最終章』
 これ多分『処刑教室』と関係無い映画だと思う。無名時代のブラピがヒロインの彼氏役で出演。最後の対決のときに技術室の万力で頭を固定されて仰向けのままウンウンうなっていた。
 それよりも冒頭で胸をボウガンの矢で撃たれたヒロインのパパの不死身ぶりが印象に残る。社会見学に来ていた先生に気づいてもらえずに踏まれて素通りされ、自力で沼から這い上がり、ウオーとうなりながら斜面から転げ落ちてヒロインの運転する車にひかれそうになって「ドライブは勉強が終わってからだ」。hahaha…笑えないYO!



『ジョー・ブラックをよろしく』
 死神の乗り移った純真無垢なブラピに触れて、仕事人間のアンソニー・ホプキンスが「人間らしさ」を取り戻す。
 長ぇぇぇ〜〜〜。180分だよ? これ劇場で見てたら絶対熟睡してるな。というのも、演出が冗長なんだよ。ひとつひとつのシーンが無駄に長い。妙な「間」が必ず出てくる。そこで起こったことを最初から最後まで撮らないと気が済まない監督なんだろうか。それほど重要でないエピソードも無駄に長い。120分でも十分足りる内容だと思う。見所は、なんと言っても開始から20分ほど経過したときに、傷心顔で「オレ、いま微妙な恋のニュアンス表現してまっせ」なブラピがいきなり
(1)画面右から走ってきたバンに追突され、
(2)画面左に弧を描いて吹っ飛んで対向車線を走ってきたタクシーのフロントガラスに跳ね返って画面右の方へ飛んで行き、
(3)肩から地面にぶつかってゴロゴロ転がって画面外へ消えるシーン。
 唖然とした。普通事故のシーンを映画的に表現するとしたら、車のブレーキの音、ブラピの驚き顔のアップ、衝撃音、宙を舞うカバン、というようにカットをつないでいくんだけど、(1)〜(3)までワンカットだからね。これじゃ「決定的瞬間」だって。上手いことブラピがCGに入れ替わってるんだろうけど、こんなところに金かけてどうするつもりなんだろうか。この監督はちょっとおかしいんじゃないだろうか。他のすべてのシーンが冗長なだけに、この事故シーンだけがすごく印象に残る。思わず10回ぐらい巻き戻して見てしまった。跳ね飛ばされてバウンドするブラピなんて滅多に見れないよ。事故シーンのインパクトで忘れそうになるけど、その直前のヒロインとブラピが出会う場面も良い感じ。あとはまー、この映画のブラピについては特に言うようなことはない。死神だけど「言い張ってるだけやん!」ってぐらい超常的なことをなにひとつしないし。無心にピーナツバターなめたりするところは、ファンには「可愛い〜」なんだろうな。え〜と、あとブラピとヒロインが初めて体を重ねるシーンもワンカットで、ほとんど入れた瞬間にイッてたのが気がかりだ。



『ジョニー・スエード』
 珍妙な髪形のブラピ主演。何をやっても冴えない自称シンガーソングライターがあっちへフラフラ、こっちへヨタヨタする映画。一瞬だけサミュエル・L・ジャクソン共演。



『ジョンQ 最後の決断』
 家賃を滞納して車を取り上げられるほど貧しいジョンQの息子が心臓の病で倒れる。緊急入院して一時的に事無きを得たが、息子を救うためには心臓移植手術のリストに名前を連ねてもらわねばならない。リスト登録はおろか、今日一日の入院費さえ払えずに病室を追い出されそうになったとき、ジョンQの中でプツンと音を立てて何かが切れた。
「みんなの病院をやるんだからぁ!」
 救急病棟のロビーでおごそかに王権神授説を主張。医者に拳銃を突きつけ、居合わせた人達の上に堂々と君臨し始める。ジョンQと警察の、息を飲む交渉戦が始まった…。
 『交渉人』や『ザ・ネゴシエーター 交渉人』と並ぶ「黒人パパ立て篭もりもの」のひとつ。もっとさかのぼると『狼たちの午後』とか。立て篭もり映画のツボを一通り押さえている佳作。警察代表ロバート・デュバルの
「ペキン・ダック!」
 が心に残った。



『シルミド』(→公式サイト
 シルミドとは、11世紀スペインの救国の闘将エル・シドと似ているが、実は全くの別人であり、それどころか韓国の島である。漢字で書くと実尾島。島の部分を「ド」と読む。前知識が皆無で、これらの事実も映画で知った。全くノーマークの作品だったのだが、ヤックンことリズことボブこと安井僚介が「暗殺部隊が作戦前に用済みになるの! これヤバくねえ? ラッキーでストライクじゃねえか、ハッピーでピースじゃねえか!」とラッパ吹きながらがなりたてるので首を傾げつつもついて行った。僕は『ロスト・イン・トランスレーション』か『スイミング・プール』の方が良かったんだけど。

 1968年。北朝鮮による大統領暗殺未遂事件に怒った韓国政府は金日成暗殺を計画。凶悪犯からなる「684部隊」を極秘裏に創設。3年に及ぶ地獄の特訓によりトップブリーダーもうなずく見敵必殺の金日成バスターズがスクスクと育成された。
 でも決行当日にドタキャン。

 いやはや熱い映画だ。ほとんど男しか出て来ない。役名のある女性はいなかったんじゃないか。特訓の後に実戦という戦争映画の王道的な流れなんだけど、特訓シーンがひたすら長い。『バンド・オブ・ブラザーズ』で喩えるとベルヒテスガーデンの湖でウィンターズが泳いでる最中に、まだカラヒー目指して走ってるようなもんだ。しかしこの特訓シーンは決して退屈ではなく見応えがある。入隊前の経歴がほとんど明かされないにも関わらず、兵士それぞれの特徴がよく描き分けされていた。隊長と部下、教官と教え子、隊員同士の反目と和解、仲間の死などなど戦争映画の醍醐味が凝縮されている。好きな人にはたまらないんじゃないか。コメディリリーフだった男がいきなり脱走して強姦しだす展開も一筋縄ではいかない面白味があった。チョ二曹が飴を落っことすシーンは2004年我が心の名シーンに入れたい。この無骨な映画にふさわしいベタベタな演出が決まっていた。
漣&イ  地獄以上の猛特訓に耐えぬいたのに、決行当日に作戦は無期延期。史上これほど酷いドタキャンも滅多にないだろう。そして無情にも上層部から684部隊全員の抹殺指令が下される。しかし、指導教官とは言え大部分はしょせん徴兵で集められた兵士に「全員ランボー」状態の684部隊を殺し切れるわけがなく、逆にシルミドは制圧され、684部隊はそのままソウルへ突入、カタストロフへと雪崩れ込むのである。
 主要登場人物がいちいち日本の俳優に似ており、記憶を手繰りながら観るのも面白かった。特に主人公が大杉漣似で、顔がアップになる度に「そう言えばGooTaの1ヵ月に1種類新しい味が出るキャンペーンはまだ続いてるのかな」と思った。

補足説明

・役名のある女性はいなかった…やっと出てきた女性は強姦されるという体たらく。

・『バンド・オブ・ブラザーズ』で喩えると…ちなみに『仁義なき戦い』で喩えてみると、武田と広能が刑務所で寒そうにしてる最中に、いまだに伊吹吾郎が床屋で回転してるようなもん。

・コメディリリーフだった男…ゆうたろう似。

・チョ二曹…白竜似。

・史上これほど酷いドタキャン…他には宮沢りえと貴花田の破談ぐらいのもんだろう。



『仁義』
1970・仏
 アラン・ドロン主演。偶然に知り合ったムショあがりのドロンと逃亡犯が宝石店襲撃を企てる。ドロンよりもイブ・モンタンが良かった。狙撃の腕を買われて一味に加担する元警官の役。アル中の幻覚との戦いだと告白し、分け前を要求しない。音楽が必要最小限にとどめられているだけに、宝石店の照明とシンクロしてピアノが響くシーンは印象に残った。



『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』(→公式サイト
 うぬぅ、つまらぬ。つまらぬわっ! ちょっとは期待してた自分が恥ずかしい。もう何もかも駄目。漫画の映画化でやっちゃいけないことばっかやってる感じ。5部作だかやるらしいけど、もう付き合わないです。金儲けの為だけに原作を汚すのはやめて欲しい。黒い涙流しちゃうよ、ホント。製作者達よ、愛を取り戻せ? そのうちDVDがレンタルで出たらシーンごとに不満点を挙げてくかもしれない。それぐらいやんなきゃイカンほど酷い。

補足説明

・金儲けの為だけに…公式サイトのうざったいリンクの数々が端的に物語ってる気がする。こんな映画の出来じゃ金儲からないと思うけど。バカだね。



『新・刑事コロンボ 完全犯罪の誤算』
 新シリーズなので期待してなかったんだけど、あまりに酷過ぎる。犯人は殺そうとしてる相手にチーズを勧められてモグモグ食べながら会話をする。やがて食べかけのチーズを皿に置き、相手を撃って偽装工作を始める。オイ、チーズ片付けろよ。自殺に見せかける工作が終了し、現場を去る犯人。チーズどうなった? 画面に写らなかっただけで最後まで食ったんやろか? やがてコロンボ到着しーの、聞き込み始まりーの、帰ると見せかけて戻りーのはいつもの展開。そして終盤、コロンボは犯人の事務所まで行き、ゴミ箱を漁って噛み終わったガムを発掘。ガムの歯型はチーズの食べさしとピタリ一致したのでした……だから言ったでしょーが! 「完全犯罪の誤算」=「食いかけのチーズ」だったとさ。もはや「消えた凶器はつらら」レベルの小学生向け探偵入門みたいなオチだ。



『シン・シティ』(→公式サイト
 ロバート・ロドリゲスとタランティーノがアメコミ原作モノを撮ったとか。全編白黒で、ところどころ色がついている。『シン・シティ』なんて漫画聞いたことないけど、面白いのー?

 シン・シティを舞台に3人のハード・ボイルド野郎が思い思いの「俺節」を貫き通す。

 いろいろ詰め込みすぎな印象。蓋を開けてみれば『ディック・トレイシー』っぽかったような。意外に普通。ちょっと失敗したな、と思ったのは、原作のムードを知らないのでイマイチついていけなかったこと。銃弾一発で死ぬ人がいたかと思うと車で何回轢かれても生きてるやつもいたりして、よくわからんです。漫画などが原作の場合「人間がどれだけやったら死ぬか」は感情移入度を大きく左右すると思う。このさじ加減が場面ごとに適当だと混乱する。それから、3人の主人公からなるオムニバス形式という事実も見るまでに知らなかった。なので、エピソードがもう終わった主人公のその後が気にかかったりして集中できなかったような。思い返すと「なんじゃそら」ってな幕引きだったんだなー、マーヴは。
 漫画だけあって大雑把に人が死にすぎるのが難点か。それから、3人の主人公が基本的にハードボイルドの一匹狼タイプなので、すべて同じトーンで物語が進行するのも単調に思えた。これが本当のモノトーン!

補足説明

・大雑把に人が死にすぎる…娼婦が上から撃ちまくるシーンなど、クライマックスのはずなのに、わりと冷めて眺めてた。娼婦の街なんか実際誰が支配しようが潰れようがどうなったていいし。

・これが本当のモノトーン!…作品が部分染めの白黒で進行するのは流血シーンが多いことを配慮したんだろうか。DVDではフルカラーモードもつけて欲しい。



『シンシナティ・キッド』
 スティーブ・マックィーンがポーカーで大物と対決。負けて終わるので「はあ?」と思った。



『新・仁義なき戦い。』
 ちなみに「仁義なき戦い」シリーズにはすでに菅原文太主演の『新仁義なき戦い』というタイトルが存在するのだが、「・」と「。」で差別化を図っているようだ。モーニング娘。じゃないんだから、という気もしないでもないが。
 内容は、まあ、深作監督によるオリジナル作品群の

金子信雄「広能ぉ〜。ワシもよう動けんのじゃあ。なんとかならんかのう?」
菅原文太「親父さん、ワシにまかしてつかぁさい、タマ取ってきちゃるけん」

 という構図を踏襲していた。今回は親父さん=岸部一徳、広能=豊川悦司かな。…なんだけど、どうも、トヨエツが弱々しいので見ていて可哀想になった。菅原文太兄ぃは一度だって「可哀想」なんて思わせない狂気じみた迫力があったのになあ。
 トヨエツは、菅原文太のように無一文のチンピラからスタートするのではなく、組織でも中堅どころなんだけど、手下がどうしようもなくボンクラで、ここぞというときにヘマをする。上司の一徳は曖昧な態度を取り続ける。そのたびに一人で酒浸りになるトヨエツ。中間管理職の悲哀だ。しかも事務所に帰っては「俺はお前たちに何もしてやれんぞ。やめるなら今だ」なんて言い出すていたらくてぃぶ・ムービー。く、くみちょお? どうもこの人は統率力に問題があるみたい。
 あと残念だったのは、もう一人の主演ともいえる布袋寅泰がトヨエツの敵役として暴れるのかと思っていたら違ってて、第三勢力的な中途半端なポジションでゴチャゴチャ言う人だった。う〜ん。こういう映画は単純に組織対組織のタマの獲り合い潰し合いの方が面白いんだけど。っつーかもっと血ぃ流せ〜、みたいな。バーン、バーンって。ヤクザが人殺さなくてどうすんのさ。シッカリしてつかぁさいよ。
 オリジナルの『仁義なき戦い』シリーズには到底及ばない感じ。というか、オリジナルをまた見直したくなったよ。成田三樹夫とか、良かったよなー。
 あ、でも新アレンジによるテーマ曲が良かったのでCD買った。



『シンデレラマン』(→公式サイト
 だっからこういう真面目くさったスポ根ものは嫌いだっつーに、ヤックンことチョロQこと安井僚介がしきりに薦めるので仕方なくついて行った。

 老いぼれボクサーのシンデレラマンがかつての栄光を取り戻そうと必死に戦う。

 基本的に『ロッキー』となんも変わらんがな。貧困あり挫折あり友情あり家族ありの、典型的なお涙頂戴ボクサーもの。ただし、こっちは実話を基にしてるので個々のエピソードがいまいちはじけてない感じ。まあ、『ミリオンダラー・ベイビー』よりはマシだったけど。とくに感動もしなかったかな。
 主演のラッセル・クロウはイマイチ好きになれない俳優なんだなー。「中途半端な体形で鼻水ばっかり垂らしてるオッサン」ってイメージ。
 でも観終わった後に安井が「やー面白かった! 感動した!」、「ハンカチ貸してハンカチ! あと二千円も貸して!!」、「よ〜し、ワシかて頑張ったるで。見ててみい。今に日本一の寿司職人になるんや!」、「ヘイ茶碗蒸しお待ち!!」、「う〜ん……ガッッッ(失禁)」、「そこのネーチャン、ココ! ココ握ってみ!!」と小刻みに震えながら道路の真ん中で大の字になったので、まあこういうのが好きな人には良作なんだろう。



『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(→公式サイト
 サブタイトルがなかなか覚えられない映画ナンバーワン。「センター街の宿無し亭主」? 「激辛の風の若旦那」? 「れんぞくま覚えるためだけにローテーションでシブシブ入れてる赤魔道士」? まあとにかく、この映画でジョニー・デップはゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞したという。

 悪徳判事の策略で愛妻と娘を奪われ流刑になったベンジャミン・バーカーは十数年の歳月を経てロンドンへ帰還。スウィーニー・トッドとして復讐の牙を研ぎ始める。

 見慣れないせいかミュージカルとしての出来はよくわからなかった。とりあえず予告編でおなじみの「♪I will have vengeance.I will have salvation」ってトッドの妄想が爆発するシークエンスは良かったんじゃないかな。ああいう時間が止まった人間の中を主役が練り歩くシーン好きだ。なんて手法だろ。
 それにしても予想外に血しぶきが噴出したもんだ。デップ映画ってだけで来た女子やカップルがドン引きしてるんじゃないか。ジョアナ〜♪とか歌いながら喉ブッシュ〜て。ちょっと可笑しかったよ。チャーリーやサーカスのアレでヒヨってた印象のあったティム・バートン監督だけに嬉しかった。
 残念なのは判事殺害シーンが予定調和すぎた。ガムテープで背中にカミソリ貼り付けたりすんのかと思ってたが。あと、どう考えても納得できないのがOPのアニメでトッドの犠牲者から人肉パイの流れを見せちゃうところ。本編で驚きたかったな〜。

補足説明

・判事…『ダイ・ハード』の落下ボスでおなじみのあの人。



『SUPER8/スーパーエイト』(→WIKI
 予告編で煽りまくっているSF映画。スピルバーグが制作ということで『E.T.』との関連もあるのだろうか?

 スーパー8mmカメラで自主制作映画を撮ることに情熱を燃やすジョー達は、線路沿いで撮影中に脱線事故に巻き込まれる。現像したフィルムに映っていたものとは?

 この映画は引きがすごい。予告編で煽るだけあって、なっかなかカメラに映っていた「ソイツ」がスクリーンに現れない。しかし「ソイツ」の正体云々を抜きにしても自主制作映画という目的のもとに一致団結する子供たちの青春映画として見ても十分に面白かった。街が相当やばいことになってきてるんじゃないかって段階になっても黙々と撮影続けてたりするしな。大した根性だ。そこらへんのさじ加減が本当に「大人が作った子供映画」になっていて、安心して見ていられる。ただ、それ故にあまりにも安定しすぎててこの手の映画でのひとつの楽しみであるびっくりするような奇異な展開や、笑っちゃうほど残酷な何か、に欠けるのが難点と言えば難点かな〜。新しさと言い換えてもいいかもしれない。



『スーパーヒーロー メテオマン』
 飛んで来た隕石が体にめりこんだ拍子に超人的な能力をさずかった冴えない黒人教師が、街の麻薬組織を殲滅するべく立ち上がる。すごーく安っぽい特殊効果がコミカルな味を出していた。

メテオマンの能力
・撃たれても死なない。
・透視能力。
・飛ぶ。地面から1メートルぐらい浮いて移動。
・犬語が理解でき、話せる。飼い犬がどんな缶詰を欲しがっているか瞬時に判断。
・触った本の内容を、30秒だけ完璧に暗記。実践できる。『ブルース・リーのケンカ術』とかいう本に触れて戦った。

ママが作ったスーツも御機嫌だぜ! メテオマン!!



『スーパーマン リターンズ』(→公式サイト
 クラーク・ケント役に新人(ブランドン・ラウス)を抜擢して帰って来たスーパーマン。一応旧シリーズと地続きの物語らしい。

 ホームシックにかかって銀河系をプラプラしてたスーパーマンが地球に帰って来た! するとその昔やり逃げした女に子供と恋人ができていたからサァ大変。その頃、レックス・ルーサーは関係ないところで着々と悪事を押し進めていた。

 旧シリーズのクリストファー・リーブのイメージをそのまま受け継いだような新人を起用し、ストーリー的にも正当な続編であり、アメコミものとしては近年珍しい(ダークヒーローじゃない)勧善懲悪もの。非常に「素直な」作りは『スーパーマン』にふさわしいチョイスだろう。普通に作って動いて撮ったらバカ丸出しなスーパーマンのコスチュームもそれほど違和感なく見ることが出来たのは、スタッフの並々ならぬ努力の賜物だと思う。拍手。
 ただ、ストーリーが素直な故に後半かなり眠くなる。そもそも宿敵のレックス(ケビン・スペイシー)はただの人間だしさ。惑星ひとつぶっ壊せそうなパワーのスーパーマンと戦うには役不足というか、そもそも彼ら、クリプトナイトを得たラストバトルまではスーパーマンと顔を合わせないようコソコソやってるだけだしな。クリプトナイトも、尖らしてわき腹突くという「素直な」使われ方で失笑。ルーサーの愛人のキティがこれっぽっちも可愛くねーのでアップになるたびに白けた。
 あと、ここからネタバレ気味なんだけど、ロイスの恋人のパイロットは、スーパーマンの子供を自分の実の息子だと思ってんの? だとしたら、スーパーマンが失踪(ヤリ逃げ)してから、ロイスはパイロットと会って即ヤリ即ハメ中出しOKだったってことか? 「あいつでなけりゃ心は砂漠」状態?

補足説明

・惑星ひとつぶっ壊せそうなパワー…プログラムによると「パワー:無限大」だって。なんでこういう生物がロイスに惚れるのかがわからない。

・尖らしてわき腹突く…「スーパーマンにとって放射性物質と同じくらい有害な物質」らしいんだけど、そうでもないんじゃない? 普通の人間が劣化ウランの塊で脇腹一突きされたら入院で済むと思えないけど。



『スクール・オブ・ロック』(→公式サイト

 デューイ・フィンは売れないバンドを率いるギタリストだが、多数決でクビになった。おまけに家賃は滞納で追い出される寸前だった。そこでデューイは友人になりすまして名門私立小学校に臨時教員として潜り込み日銭を稼ぐことにした。やる気のない授業。しかし、音楽の実技で耳にした子供たちの演奏がデューイのハートをヒットした。ロックをやる場所があるじゃないか! 生徒諸君、バンドやらない? もちろんオレがギターとボーカルで。暑苦しい血潮をたぎらせて、デューイは子供たちを従えロック・フェスを目指す。

 これは面白かった。世界のクロサワはこういう映画を最期に撮りたかったんじゃないの? ジャック・ブラックの怪演とテンポの良い展開にキャッチーなヒット曲の数々、小気味良いギャグとがあいまって、こりゃ万人にお薦めできる。実際上映が終わった館内の印象も上々といったところで、帰り際にうなずきながら支配人の肩を叩いてやったりして。
 印象に残ったのは小学生に楽器を持たせて各々のパートを教え、全員で演奏するとDDRのアノ曲になるシーン。ヒントでピントの「何を作ってるところでしょうか」ふうですごく面白かった。ジョーン・キューザック(眼鏡)も良かった。主演のジャック・ブラックは『ハイ・フィデリティ』で顕在意識に現れた俳優なんだけど、かなりの出演作を見ていることが判明。こんなヤツいたか? サミュエル・L・ジャクソンやブシェーミみたいな俳優だ。

補足説明

・DDRのアノ曲…調べたら「MR.ED JUMPS THE GUN / SMOKE」だった。

・ジョーン・キューザック(眼鏡)…ジョン・キューザックとすごくまぎらわしい。兄妹か何かだろうか?

・『ハイ・フィデリティ』…ジョン・キューザック主演。ジャック・ブラックが音楽マニアのレコード店員を演じる。「モテない音楽オタクの物語」というような紹介文につられて観てみたが、看板に偽りあり。本当にモテないヤツはこんなじゃねえ!! それなりにモテるおかげで女心をあまり考えたことがなかった男(DJ)が色懺悔するお話。同じ音楽がテーマでも、こちらのサントラはかなりスカしてた。あやかりたいのでサントラを購入した。



『スコルピオンの恋まじない』
 あらすじ。第2次大戦前夜のNY。スコルピオンの恋まじ(中略)そしてウディ・アレンがもてた。ファンタジックな大人のラブ・ストーリー。しかしウディ・アレンも老けたなあ。パッと見老人。ていうか、1935年生まれの立派なシルバーマーク。やり手の保険調査員の役は無理があるのでは。周りの社員との落差がありすぎる。風体はトレンチ・コートにソフト帽のハンフリー・ボガードなんだけど、『ラスト・アクション・ヒーロー』のハンフリー・ボガードのように周りから浮いて見える。この世界の何処かにあるという「老人の国」から迷いこんだ闖入者、といった風情。アレンといつもいがみ合っている彼女が「エスカレーターから転げ落ちて半身不随にならないでよ」、「急に脳溢血で倒れないように」、「ハゲかかったチビ」などなど、全然冗談になってない罵詈雑言を乱射。一応フォローしておくと、相当長いセリフも早口でしゃべれてたし、動きもキビキビしてた。まだまだ現役。トップロープ最上段からのニー・ドロップもこなせそう。



『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(→公式サイト
 小学生の頃から慣れ親しんだSWサーガが遂に完結するときが来た。なんかもう、感無量である。言っちゃなんだが、こんな子供だましスレスレの御伽噺にこれだけの手間隙と才能と巨費をつぎ込むシリーズはもう2度と現れないだろう。それだけで★5つ。最後の上映日に行った3度目の鑑賞では、タイトルが出た瞬間に「もっと観に来れば良かった」と後悔した。

 戦争激化! 非常時大権を手中にしたパルパティーンの計略はようやく成ろうとしていた。アミダラとの間に子供ができたことを知ったアナキンはアミダラが出産で死ぬという予知夢に悩まされる。
「かつて死をも操れる力を得たシス卿がいた」
 パルパティーンの魔手はアナキンの心にも忍び寄る。

 もう何が起きるかだいたいわかっているのに、アナキンの運命にはいちいち心を揺さぶられるものがあった。特にオビワンが「選ばれし者だったのに!」と叫ぶところでは、不覚にも涙腺が緩くなったです。
 で、まあ僕にとって間違いなく★5つ級の作品であることを踏まえてあえてあら捜しというか、不満だった点を挙げていく。
 まずパルパティーンvsジェダイマスター4人の対決シーン。メイス・ウィンドゥ以外のマスター達がちょっとあっけなさすぎるっつーか。まあそれだけダース・シディアスが強かったってことなんだろうけど、昼にやってる時代劇みたいな斬られ方だもんなあ。ついでに言うとこのシーン、シディアスがいきなりドリル回転しながら飛んでくるビジュアルが可笑しい。どんな剣法だ。そらあんな襲われ方したらいかにジェダイと言えども怯むって。
 次。オーダー66によりジェダイ騎士が次々に裏切られ倒れていくシーン。これはこれでいいと思う。かなり涙腺に来たとも。けど、もっと良い絵が描けるんじゃないか、と。ここだけコッポラに任せてみたらすごいシーンになるぜきっと?
 次。ムスタファーでのオビワンの登場シーン。フッとアナキンがパドメの宇宙船を見るとオビワンが「も〜怒ったんだから! プンスカ」ってな感じで腰に両手を当てて仁王立ちしてるんである。
 最後はベイダー覚醒シーン。ベイダーが「ノーーッッ!!!」って叫んで周りの計器類がボンボン破裂していく。なんだろーか。吹きはしなかったけど、なんかイマイチ。棒立ちで「ノーーっッッ!!」で計器ボンッボンッ!! ちょっとわかり安すぎる。まーでも、あの仮面にエモーショナルな演技を求めるのも酷か。
 総じて人の生死や感情が絡んだシーンが全体的に難アリ。

補足説明

・不覚にも涙腺が緩く…恐らく親が死んでもこんなに緩まないと思う。

・昼にやってる時代劇みたいな斬られ方…『蒲田行進曲』のヤスみたいだもんなあ。キット・フィストーが画面の端に消えてから小指立てて「コレがコレなもんで」って言ったりしてるんだろうか。

・コッポラに任せてみたら…このシーンでゴッドファーザーシリーズおなじみ、ラストの粛清シーンを思い浮かべた人も多いのではないか。ふと気づいたが、裏切られるジェダイ騎士たちは全員戦場にいるときに襲われている。意外性がない。そこが演出がノッペリしていると感じた所以かもしれない。ひとりくらい家族や恋人とリラックスしてるときに撃たれるなり吹っ飛ぶなりすれば悲劇性も増すのに。マッサージ中に目を撃ち抜かれるとか。



『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
 ストーリー的にはアミダラ&アナキンの恋と、分裂へ向かう共和国の姿が描かれる。で、やはり今回の見所は、当然「アミダラ&アナキンの恋」のハズなんだけど、ルーカスは絶対真面目に取り組んでないと思う。熱心なスターウォーズファンを連れてきて『恋におちたアナキン・スカイウォーカー』って短編でも撮らせた方がもっとマシな話になろう、ってぐらい恋愛パートの描かれ方がおざなり。途中からアナキンとオビワンが別行動になるおかげでより一層アナキン・パートのヌルさ加減が強調されていた。アナキンは幼少の頃に出会ったアミダラを10年も思い続けていた、という設定で登場。ガキの頃にちょっと会っただけの女王に10年も。その時点で何かおかしいんだが、再会したアミダラを見るアナキンの眼が欲望の昂ぶりでギラつく様子があからさまに異常すぎる。ほとんどメンチ切ってるような三白眼だ。部屋でエロ本隠し見てる中学生男子みたいな熱視線だが、中学生男子ですら人前ではそんな目つきはしない思うぞ。世間ズレしてないジェダイだからこうなっちゃうのか。実際「恐いからそんな目で見んといて」とか言われてるし。アミダラは暗殺者から逃れるため故郷のナブー星で隠遁生活。アナキンはその身辺警護のため付き添う。人から隠れるのに何故一番居場所のメドをつけられやすい故郷を選ぶかね? …というツッコミは置いておく。そしてナブーの大自然の中で乳くりあう2人。ジェイソンに殺される若者みたいに無防備だ。アナキンさん、警護! 警護! 急接近する2人だが、なかなか最後の一線を越えることができない。それはアミダラの政治的な立場と、アナキンを縛るジェダイの掟のためだった。…が、このいかにも悲恋もののような境遇が、ちっともこっちのハートに響かないのはいかがなものか。理由としては、アナキンがジェダイの掟なんか屁でもないと思ってることはミエミエだし、アミダラはアミダラで、薄暗い部屋で上乳丸出しのドレスを着て「私には役目が…」とか言うもんだから全く説得力がないんである。いいからアナキン、フォースでも何でも使って押し倒しちまえYO! どう考えてもこの2人を人目に触れない場所に野放しにしとく周りの大人に責任があると思う。ていうか、すでに女王の座を退いたアミダラ&ジェダイの跳ねっ返りのことなんか、気にする余裕がないくらい共和国の状況がひっ迫していたんだろうな。事実この2人以外はみんな普通に忙しそうに立ちまわってたし。クローンだの議会だのでさ。紆余曲折あった後、「吊り橋効果」も手伝って結局お互いを受け入れる。ジェダイの掟も議員としての立場も忘れ、故郷で2人(+ロボット2体)だけの結婚式を挙げましたとさ。めでたしめでたし。…勝手にやってろYO! しかし「さあこれから初夜でっせ? イロイロやったりまっせ?」ってときに利き腕が機械剥き出しの義手になっちゃうアナキンってカアイソー。思うに、ジェダイの教育システムは人間には向いてないんじゃないだろうか。ドゥークーしかりアナキンしかり。もっとね、こう、費用は評議会持ちで練習の後にパーッと飲みに行くとか、テキトーな風俗でパダワンの筆おろしさせてやるとか、そういうシステムにしたら? 堅いこと言わんと。共和国の滅亡に比べたら安いもんでっせ?
 全体的な評価としては、エピソード1と比べてもとても良い出来だったと思う。特にラスト。羽虫の星のロボット工場の場面からは見せ場の連続。エピソード1のDVDは買わなかったけど、これは買おうかな。飢えた獣のようなアナキンの描写も含めて、サービス精神満点の1本でした。



『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』(→公式サイト
 スターウォーズのEP2〜3間を補完するアニメ映画。すでに『スター・ウォーズ クローン大戦』というアニメがあるんだけど、それとは別の話。

 分離主義勢力と共和国との戦いは熾烈を極めていた。そのときにジャバ・ザ・ハットの息子が誘拐された。ハットの持つあなどれない影響力を勝ち取りたいジェダイ評議会は極秘裏に息子救出の任務をオビワン師弟コンビに命じた。

 悪い意味で外伝的な作品というか。実際はどうなのか知らないけど、如何にも「後付で作られた話」という印象がぬぐえない。その最たるものが新キャラクターのアソーカ・タノで、アナキンのパダワンという重要な役割の割にはEP3では出てこない。今作で死ぬわけでもない。じゃあどこに消えたんだろう? こういった新要素がEP3へとつながらない上に、EP3から逆算して「あれはこういうことだったのか」ってな設定もとくにない。お話として完全に浮いている印象だ。
萌えさせはせん!  さすがにルーカスフィルムだけあってCGはバリバリにすごいんだけど、やはり人物造詣が洋モノ特有のアクの強さ。本来萌えキャラであるべきアソーカも全力で萌えを拒否する容貌だ。半端に人間ぽいから余計キモい感じ。こういうところは外人は一生日本に勝てないんだろうな。
 やはりスター・ウォーズも実写(+CG)でやるから凄いんであって、同じ話でもアニメでやると途端に子供っぽい部分ばかりが強調されてしまうな。

補足説明

・こういった新要素…ズィロ・ザ・ハットやハットの息子など。

・本来萌えキャラであるべきアソーカ…勝手に決め付けてるだけだけど、もう少し可愛くてもバチは当たらないと思うんだが。入場ゲートみたいな髪型だしさ〜。

・半端に人間ぽい…メトロポリスやコブラに出てくる歩く甲冑っぽいキャラにして女性的なシルエット&動作でエロスを表現したらいいのに。



『スターシップ・トゥルーパーズ2』(→公式サイト
 バーホーベン監督の前作(1997)から7年もの歳月を経て、誰が待ってたわけでもないのに突然変異のように出現した続編。ストーリーをほとんど覚えてない。そして監督もバーホーベンではないという。感じるぜ、駄作の波動。しかも、公開するのはあの不思議な駄作『ミーン・マシーン』以来の訪問となる銀座シネパトスである。

 火星でバグ軍団と交戦中の人間軍は優勢に戦線を展開中という解説の字幕とは裏腹に、主人公らは追い詰められて基地に閉じ込められる。そこで1人、また1人と様子がおかしくなっていく。

 やっぱり駄目だった。この落胆はラットルズのセカンドアルバムを聴いたときと似ている。バグとの戦闘がほとんど行われないのでアクションの興奮は得られない。かと言ってどの隊員がバグに乗っ取られているのかがすぐわかるので、サスペンス的にも盛り上がらない。前作のノリが好きな人にとっては序盤のバグ軍団との戦闘が唯一の見所だったはずだが、ここもカメラワークが下手。銃を撃つ海兵隊を正面から捉えるアングルが必要以上に長く繰り返される。やはりこういう「乗っ取られモノ」は、主人公と観客が乗っ取られてる人の正体に気づく瞬間が同時であるか、少なくともその努力をしなければ。今回の収穫は、こういう「駄目な乗っ取られ映画」の法則のひとつに気がついたこと。それは、「乗っ取られた人らが三白眼になって主人公をゆっくり取り囲むシーンが入る」の法則。これやっちゃうとものすごく冗長で安っぽくなる。それにしても、一部のファン以外にはそれほど支持されたとは言えないSF映画の続編を、7年も経った今ごろ、スケールダウンしてまで何故作ろうとしたのか。謎だ。

補足説明

・誰が待ってたわけでもない…前作公開のときにこの映画をデートで見た日にセックスして出来ちゃった婚した夫婦の娘がもう幼稚園児よ? その夫婦が映画の続きを気にするか?

・ストーリーをほとんど覚えてない…覚えているのは強烈なビジュアルの断片。訓練中に頭を半分吹っ飛ばされたヤツ、成層圏を突破するほどのビームを放つ虫、脳を吸う虫、敵の首領虫が「恐れている!」と読み取ったエスパー、『トータル・リコール』(これもバーホーベン監督)に引き続いて腕をもがれたマイケル・アイアンサイドぐらいだ。

・敵の首領虫が「恐れている!」と読み取ったエスパー…だから何なんだ、と思った。

・銀座シネパトス…地下に劇場があり、横に地下鉄が通っているので椅子が定期的に震動する。今回の映画も戦闘シーンと震動が妙にシンクロする瞬間があり、ちょっとしたUSJ気分だった。この劇場で『トレマーズ』の再映をやってくれないかしら。

・「乗っ取られモノ」…『遊星からの物体X』、『ボディ・スナッチャーズ』、『ヒドゥン』、『パラサイト』などなど。



『スター・トレック』(→公式サイト
 人気TVドラマの映画化。かつて何度か映画化されてきたが、今回はルーツというか発端というかゼロというかビギンズというか、近年流行りのアレである。

 どっかからやって来た謎の巨大戦艦との戦闘で父を失った赤ん坊は成長し、立派なカークになった。

 このシリーズの基本を押さえた作り。面白かったんじゃないかな? ただ、僕は初代スタトレに思い入れがないので、「ファンなら面白いんだろうな」というシーンの連続でなんかずっと損してるような気分だった。22世紀の地球があんまり未来っぽく見えないのがちょっとガッカリだったなあ。逆にダフトパンクみたいな警官だけ浮いてるような。
 士官学校の試験で、スポックが「恐怖を疑似体験するため」に作ったという「コバヤシ丸」のシミュレーション問題があるが、きっと恐怖のレベルに応じて対馬丸や第五福竜丸やえひめ丸もあるに違いない。

補足説明

・このシリーズの基本…転送装置の扱いがキー。どんな任務でも艦長自らが最前線に斬り込んでいき、ブリッジガラガラ。英語が通じる。

・「コバヤシ丸」…どの選択肢を選んでもバッドエンドなショートシナリオ。



『スターリングラード』
 映画は未見ながら、新聞広告のコピーに吹き出したので切り抜きを部屋に貼っている。
愛するターニャ、今日も僕は君のためにまたひとりナチを撃つ
 ターニャが両足をタシ! と打ち合わせて飛びはね「ヤッター!」と喜ぶさまが思い浮かぶ。そりゃ悪いのは全部ナチにしとけば問題ないだろうけど。



『スティング』
 1回観たことがあるけど忘れてたので面白かった。テーマ音楽(※音が出ます)を何かのゲームで聞いたことがある。記憶をたぐってみると、MSXの『フラッピー』だった。カニが強かったなー。何が強いって、狭いフィールドをアルゴリズムそっちのけで完全にランダムに動き回るんだ。主人公と同じスピードで。戦略の立てようが無い。



『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』(→公式サイト
 真夜中の別荘にカップルが閉じ込められて殺人鬼に怯える話らしい。実話を基にしたんだとか。監督はこの作品が初監督となるブライアン・ベルティーノ。聞いたことない。

 友人の結婚パーティーの帰りに立ち寄った別荘で、一組のカップルが得体の知れない訪問者達に怯える。

 駄目駄目。なんにも怖くないし新しさもないし、演出は駄目だし脚本はなってない。唯一リブ・タイラーの熱演だけがこの映画をほんのちょっとだけ救っている。でも★いっこ。コレに比べたら、似たような内容の凡作『モーテル』すら面白かったような気になる。
 この映画の為に犠牲にしたお金と時間を少しでも無駄にしないためにも、どこが駄目だったか、挙げていこう。

・まず出だしから駄目〜。「実際に起きた未解決事件を基にした話である」ってテロップが出る。「実際に起きた」。ここまではいい。「未解決事件」? 未解決? するってーと何かい? この映画に出てくる殺人鬼とやらは、まんまと逃げおおせたってことかい? そんなこといきなりバラさないでくれよ。みんなが知ってる事件を基にしてるわけでもないだろうに。
・さらに出だしの駄目な点その2。テロップの後、事件現場の惨状を背景に警察に助けを求める女性の声がかぶさる。事件後の様子をチラ見させる趣向らしい。するってーと何かい? 被害者のうち女の方は生き延びるってかい? そんなこといきなりバラさないでくれよ。
・まだあった出だしの駄目な点その3。上でも書いたけど、「事件現場の惨状」が映し出されるために、「あ〜、車のフロントガラスが割られるのか」、「壁に血がビシャッて飛び散るか」などなど、なんとな〜くどんなことが起こるかわかってしまう。そんなこと見る前にバラさないでくれよ。一体どういう演出なんだこれは。刑事コロンボじゃないんだから。
・序盤。男女二人が別荘に車で到着するところから始まる。ここから回想シーンが挿入されて「友達以上恋人未満」な二人の関係が浮き彫りになる。この部分が無駄に長い。駄目なスリラーの典型的なパターンだ。いいからさっさと殺人鬼出さないか。最初のアレといい回想シーンといい、この監督は時間軸を前後させたら面白くなるとでも思ってるんだろうか。
・殺人鬼が怖くない。3人組で、『スクリーム』みたいなマスクを被っている。ものすごくありがち。うち2人は普通の体格の女。3人組の容姿は公式サイトのトップページでも堂々とさらされている。
・演出が単調。「殺人鬼が少し離れたところに佇むショット→主人公らがよそ見(アホ)→振り返るといなくなっている」というパターンが100回ぐらい出てくる。その度にこっちはイライラ症候群だよ。敵が目の前にいるのによそ見してるんじゃねえ!
・演出がとにかく単調。別荘にあるレコードが勝手に鳴る、或いは衝撃による針飛びでワンフレーズだけ繰り返す、「怖いシーンで能天気なカントリーが流れる」というギャップによる効果を狙ったものだろう。けどさ、それを馬鹿のひとつ覚えみたく繰り返すなよ! 観客をイライラさせる効果しか残らないから。
・とにかく別行動。そして別荘にしがみつく被害者。こういう映画では黄金パターンだけどさ。見せ方が不自然というか、必然性がまるで感じられないというか。2人しかいないのに別行動するなよな〜。男は「オレが行くから君は中で待ってろ」という理屈で女を建物に置いて出てくんだけど、別荘の中が全然安全じゃないことなんか十分すぎるほどわかってただろうに。その後リブ・タイラーは戸外に飛び出して溝で勝手にけつまづいてびっこひきひき、そのまま別荘まで引き返してしまう。なんで!? 帰巣本能か? お前は伝書鳩か?
・前述のようにカップルのうち女は生き残り、男とその友人が犠牲になる。ここでまた謎な演出が施される。それまでショットガン片手に立てこもって怯えるカップルが主人公だったのに、ここで急に車に乗ってやって来た友人視点に切り替わってしまう。投石でフロントガラスを割られた(織り込み済み)友人は恐る恐る建物の中に入り、カップルの男に誤って撃たれる。冒頭に出てきた壁に飛び散る血痕はこのときのものだと判明。犠牲者2人しかいないのに、よりによって片方は同士討ちかよ! しかもさ、ここはずっとカップル視点で進行して犯人と思って撃ったら友人だったって風に撮った方が驚きがないか? なんでこの監督はお楽しみ要素をいちいち先回りしてバラしちゃうんだろう。大相撲ダイジェスト見てる人に取り組みが始まった瞬間に結果を教えてあげたり、相手がプレゼントを開封するのを待ちきれずに中身を言っちゃうタイプと見た。B型かも。
・犯人グループの武装は両手斧やナイフなど。これに対してカップルには別荘の中にショットガンと弾薬が豊富に与えられていた。にも関わらず負けてしまう。なんでさ。男なんか友人を誤射までする。しかも、男は女を残して納屋(ありがちシチュエーション)まで出向き、納屋から出てきた丸腰の殺人鬼(女)を見るなりビビッてその場に突っ伏してしまう。撃てよ! そして前方に気をとられてる隙に後ろからダッシュで来た殺人鬼(男)にのされてショットガンを取り上げられる。は〜。間抜けすぎる。殺されても文句言えない。逆に関係者にお詫びのメールを一斉送信してから天国に行くべき。
・最後、失神した男と女は椅子に縛られ、気がつくと目の前にスクリーム3人組がドンドコドーン! 笑っちゃった。そして盛り上がりも緊迫感も何もなく普通にナイフでプスプス腹を刺される男。この頃になると正直「やっと殺されてくれたかこの間抜けは」って気分になってたな。こういう映画って犠牲者が反撃する描写が多少は入るもんだけど、この映画に限っては反撃いっさい無しで、試合開始直後に技表ボケッと確認してるうちに浮かされてエリアルレイヴ叩っこまれっぱなしでズルズルとKOされるだけだからね。そりゃさ、犯人もこんだけ目の前でドジ踏まれたらその気が無くても殺さざるを得ないでしょうよ。裁判になったら「双方の合意の上で殺された」で逆転敗訴になりかねない。

 今年最低の作品かもしれない。こんなショボい実話を基にしなくたっていいよ、もう。出発点から間違ってる。60分に圧縮して「奇跡体験!アンビリバボー」の再現映像みたくセミドキュメンタリータッチにして合間合間に清水圭が知った風なコメントをする方がまだ面白くなったかもしれない。こんな間抜けな男(犠牲者)がいたんだ、という意味で実話だとは信じられない。どっちかと言うと「戦慄の犠牲者」というサブタイトルの方が良い。

補足説明

・★いっこ…★いっこ作品にはだいたい二種類あって、箸にも棒にもひっかからない眠くなる作品と、原作やシリーズのファンを冒涜したとか馬鹿にしたとかアンシーが眼鏡かけてない等、個人的に怒りがこみ上げてくるパターン。この作品は前者だ。

・この映画の為に犠牲にしたお金と時間…上映時間は90分しかないのに、5時間ぐらいに感じた。

・見る前にバラさないで…見る前にバラしておいて、実は予想をはずす演出だったら良いんだけど、実際は殺人鬼は逃げ、女は生き延び、血痕はマヌケな同士討ち(後述)。何もくつがえらないばかりか、予想を下回るという哀しいオマケつき。

・B型かも。…家族に2人いるが、2人ともこういう「親切心」を持ち合わせている。

・両手斧…一度も、誰にもヒットせず。無線機を壊すときだけ役に立った。

・普通にナイフでプスプス…マジックユーザーが気休めに装備してるようなダメージ1D4ぐらいのショボいやつ。両手斧はどうしたんだよ。



『スナッチ』
 『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の人が撮った映画だ。面白かった。『ロック〜』が面白かった人なら同じ感覚で楽しめるはず。オススメ!



『スニーカーズ』
 レッドフォードは依頼人のビルに侵入し警備状況の盲点を指摘するスニーカーズというハイテク集団のリーダー。この男がニューシネマ的な過去(友人と政府のコンピューターへハッキングを企てていた)を引きずっているという設定が面白かった。動作感知機の仕掛けられた部屋への侵入で、ゆっっっくり歩くレッドフォードは頭がおかしな人みたいだった。



『スネーク・フライト』(→公式サイト
 サミュエル・L・ジャクソン主演のパニック映画。蛇がジャンボジェット機の中で大発生するとか。なんだそれ! 冗談のような状況だが、サミェエルは大乗り気で、プロディーサーに「もしかして、飛行機で毒ヘビが“放し飼い状態”になる俺向きのパニック映画?」とメールしてこの役を勝ち取ったという。どっから情報をつかんだのか。「俺向き」ってどーいうこと? 『ケイブマン』、『ケミカル51』などの珍タイトル主演の実績があるからだろうか。

 重要参考人を飛行機で護送するFBI捜査官サミュエル。証人を亡き者にしたい犯罪組織のボス・キムは、毒蛇満載のコンテナに時限装置をつけてジェット機に乗せた。

 往年の動物大量発生ものに航行中の飛行機という密室性を加えた新感覚のパニック映画。監督のデヴィッド・R・エリスは『デッドコースター』や『セルラー』などの作品を手がけた人で、個人的に注目している。しかし今回はパニックに巻き込まれる人々の人物紹介に裂いた時間の分、前2作ほどのスピード感に欠けた気がする。また、その前フリも必ずしも上手く機能してなかったような。
 それから、サミュエル・L・ジャクソンがあまりに無敵すぎるのもちょっと。1人だけ蛇よけフェロモン発してるみたいにパニック状態の中でも平気だったし。配線だらけの天井裏も思ったほどスリリングじゃなかった。目的地に普通に到達してるし。最後にキレるとこは可笑しかったね。
 あと、今の時期に「神様プレステ様!」って叫ばせたり子供がPSPやってたりはマズいんじゃね? 少なくとも僕にはマイナス印象。これソニーピクチャーズが何か関係してるんだろうか。

補足説明

・必ずしも上手く機能してなかった…赤ちゃんを助けて死ぬのはムエタイチャンプの役だろー。あと、チワワあっけなさすぎるし。夫婦はいきなり同時に死ぬし。しかしヒールで頭刺された人は可愛そうだったな〜。ああいう主題と無関係な死に方する人って浮かばれないよなー。どうせなら蛇で死にたいって話。

・サミュエル・L・ジャクソン…いつか映画の中でカレー食ってるとこ見たい。

・子供がPSP…今年に入って3本目だ。『ポセイドン』と『インサイド・マン』。ちなみに日本でPSPやってる人はたいてい「大きな子供」だったりする。どんな満員電車でもやってるし。



『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』(→公式サイト
 3D映画ということで期待して行ったんだけど、いまどき赤青の立体メガネだった…。元々は偏光メガネを想定した映画だったらしく、画像が暗くてよく見えなくなった。『トロン』みたいな感じ。なんでこんなことになったんだろう。コスト面かなあ。ディズニーやUSJやディズニーシーの立体映画(←全部行ってるヤツ)では、偏光メガネは回収してるし、やっぱ高くつくんだろうか。他の劇場はどうだったか気になる。
 内容は、今回スパイ家族の長男が主役で、家族はあんまり出番無し。お姉ちゃんの方は立派なレディに成長して、もはや「キッズ」じゃないね。いろんなことを知ったんだろうね、きっと。悪役でスタローンが一人何役もこなしており、無駄にはしゃいでる感じが可笑しかった。シリーズのキャラクターが雪崩式に勢揃いするラストはちょっと感動した。暗くて見づらかったけど。オマケがあるのでエンドロールは最後まで見ましょう。あと、ちょい役でイライジャ・ウッドらしき人が出たような気がするんだけど、暗くてよく確認できなかった。カメオ出演かな?
 赤青メガネはもらえたけど、ビフの手下のコスプレするときぐらいしか役に立ちそうにない。カッコインテグラ。



『スパイ・ゾルゲ』
 観終わった後に友人と話し合った評価。

良かった点
・名も無き娼婦の蠱惑的なモチモチ感。柔肌に薄く粉をはたいたような、ぼんやりした境界を身に纏った遊女がスクリーンの奥からゆるりゆるりと近づいて来る。一分足らずのシーンだけど、強烈に印象に残った。ゾルゲ泣き止め。な?
・「撃ちてし止まん」の壁画。総天然色で、ビルのニ面を覆う偉容。あんなもん見せられちゃあ一億国民も「止みまっかいな、止みまっかいな」ってなるわなー。他にもカラフルなのぼりで埋め尽くされた仲見世などなど。ともすると紋切り型に薄暗く描きがちなこの時代の景観に、ここまで力を入れている映画は珍しいのでは。CGの出来にバラつきがあったけどね。
・三時間もあるのに(僕が)寝なかった。

悪かった点
・ゾルゲの自白が唐突。
・ドイツ人もロシア人も英語をしゃべる。
・東条英機を演じる俳優。出てきた瞬間ズッこけた。
・モックンが「人間だもの」って言うシーン。そんなこと言うキャラクターに見えなかったんだが…。監督の趣味だろうか。ミヤギもビックリさ。
・ニニ六事件の「寒くなさそう感」。吐く息が白くなかった。
・横からイマジン

良いのか悪いのかわからん点
・江川達也

 事前に小耳に挟んだ巷間の評が最悪だったので覚悟してたんだが、結構面白かった。覚悟してたからこそ、かもしれん。



『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』
 ♪ゾーウゾウゾウ。ゾーウゾウゾウ
 デビッド・クローネンバーグ『スパイダー/ 少年は蜘蛛にキスをする』を観た。なんだかS・キングのようなタイトルだ。
 「内臓を描かせたら天下に比肩し得る者無し」と許子将先生に評されたクローネンバーグである。臓物ランドのプリンスである。『ザ・フライ』のフライ、『裸のランチ』のランチ、『ヴィデオドローム』のドロームを思い起こしてもらいたい。当然そういったグロテスクを期待して観たら、見事に肩透かしをくらってズッこけた。あまりのつまんなさにエンドロールが流れてきた瞬間に放屁。家に帰るまで止まることがなかった。オナラが止まらないとはこのことである。ひとことで言うと「出来損ないのサイコもの」。ラスト、「やっちゃいけない終わらせ方」で、1位「夢オチ」に次ぐ第2位ぐらいに来るんじゃないかっていうシメ方。クロちゃんどうしちゃったの? ひょっとしてアレか? 「ワシかてこんなん撮れるんや」ってことか? P・ジャクソンにおける『乙女の祈り』を目指した? ゲド戦記やドラゴンランスやゴーメンガースト撮らせろってかー? あ、今日はエイプリルフールだけど、嘘ではない。本当につまんなかった、念の為。良かったシーンと言えば、精神を病んだ主人公がコーヒーに粉ミルクを入れ過ぎるシーン。『ザ・フライ』を思い出して、わずかにうけた。素直にデカプリオのキャッチキャンキャン観れば良かった…。



『スパイダーマン』
 スパイダーマンがなぜスパイダーマンになったのか、という説明はかなりいい加減。生物研究所に見学に来たガリガリの眼鏡君が(なぜか)逃げ出していたスーパー蜘蛛に刺されてスパイダーマンに大変身。その後は研究所も逃げた蜘蛛の行方も描かれない。超人的な肉体を得た眼鏡君は裸眼君になり、日頃いじめられていた同級生を軽くフッ飛ばしたりする。そして意中のアノ娘に新車をプレゼントする金欲しさに賭けレスリングに出場。超人の力を如何無く発揮して賞金を手にするのだが…という話。ここまではすごく面白い。問題はその後で、アメコミヒーローたる彼は身内の死によって突如覚醒。自分の力を正義のために有効利用するべく街に身を翻すのだった。正直「あ、この人もか…」とガッカリした。そっからはもう、宿敵の変な緑男が出てきてパニックがあってビルが爆発してアノ娘の乳首が雨で透けてるうちにいつのまにやらジ・エンド。いじめっ子に延々と仕返しを繰り返したりレスリング場で格下の相手をボッコボコにし続ける、くどい『キャリー』もしくはインチキな『ベスト・キッド』風の映画も見てみたい気持ち。あとですなー、スパイダーマンは手首からビュッと白い糸を放出させるんだけど、それがいちいち射精みたいで失笑。主人公が自室で糸を出す練習をして、部屋の中が白いネバネバだらけになる図があって、そこは弓月光の漫画っぽかった。これから観に行く人はそこに注目!



『スパイダーマン2』(→公式サイト
 夏の大作。サム・ライミ監督が続投。主演のトビー・マグワイア&キルスティン・ダンストもしっかり続投。

 ビルの谷間の暗闇に ピーター君(トビー・マグワイア)
 きらりと光る 怒りの目 ピーター君(トビー・マグワイア)
 安らぎ捨てて全てを捨てて悪を追って空駆ける。
 僕は何故、僕は何故戦い続けるのか命をかけて?
 運が良いとか悪いとか、人はときどき口にするけどそういうことって確かにあると、自分を見ていてそう思う。
 もうやめよ。切ない。

 う〜ん。CGその他のクオリティは前作よりも上だと思う。後は個人的な嗜好の問題なんだろうけど、あんまり面白くなかった。ちょっと長いかな、と感じてしまった。どこが良くなかった考えるに、次の点を挙げることができる。
・敵が魅力薄
・主人公の苦悩が伝わって来ない
・偶然が重なり過ぎなストーリー
・キルスティン・ダンスト
 こんなもんだろうか。ここからひとつひとつの点について書いていく。結末まで触れるネタバレが含まれるので注意。
 まず「敵が魅力薄」な点について。今回の敵はドクター・オクトパス。元は天才科学者だったが、常温での核融合を制御するために背中に6本のマジックハンドをつけて実験中に装置が暴走。AI搭載の触手に肉体を乗っ取られ、モンスターへと変貌を遂げる。この怪人がいまいちだったなあ。実験中に死んだ奥さんとの関係を描く部分が未消化。膨らませればもっと面白くなったかもしれない。恐いのは触手の部分だけで、本体はトレンチコートに半裸のおっさんだし。ものわかりが良過ぎるのも怪人として失格。核融合に必要な金属が欲しいならスパイダーマンを捕まえて来いと言われてその通りにする。そればかりか、最後はスパイダーマンに説得されて実験装置ごと入水自殺してしまう。何それ! 初めて見たよ。ヒーローにそそのかされて自殺する悪役なんて。
 次。「主人公の苦悩が伝わって来ない」点。相変わらずピーター君はヒーローと私生活との両立にウジウジ悩んでる。ヒーロー業務のおかげでデートに遅刻したりピザ屋の宅配が遅れてクビになったり学業がおろそかになったりする。ヒーローなんかやめたい! やめれば? ……という話だよね。少なくとも手を広げ過ぎなので、仕事を絞れと助言したい。それよりも問題は「スパイダーマンの素顔を晒せば周囲の人に迷惑がかかる」と思い込んでることだ。1作目から見てるとわかるけど、正体を隠してても十分すぎるほど周りに迷惑かけていると思うぞ。ハリーの親は死に、メリージェーンは何度も死ぬ目に会い、今回はおばさんも危なかった。今更何を悩むというのか。今回ハリーとメリージェーンには素顔を見せてしまうんだけど、2人の反応も心なしか「あ、やっぱり」という感じで盛り上がらなかったなあ。それから、「メリージェーンが(ピーターじゃなく)スパイダーマンに思いを寄せている」というファクターはどうなったのか。その設定も有耶無耶のまま、2には活かされてないのが残念。
 次は「偶然が重なり過ぎなストーリー」について。まず、ピーター君は急いでるときに事件を目撃しすぎ。ドクター・オクトパスがハリーの援助で実験していて、ピーターと顔見知りだったのも1作目の焼き直しっぽく感じる。ドクター・オクトパスが銀行を襲ったときにたまたまそこにいるピーターとおばさん。メリージェーンの結婚式にたまたま写真を撮りに行かされるピーター。メリージェーンの婚約者の父が編集長。ドクター・オクトパスが本拠地に連れ去るのがメリージェーン。ざっと思い返しただけでもこれだけある。ピーターが事件に遭いすぎるのは仕方がないとして、偶然もこれだけ重なると世界が狭い感じがする。言い換えると行き過ぎたご都合主義。
 次にヒロインであるメリージェーンを演じる「キルスティン・ダンスト」。看板に大きく顔が出るほどモデルとして出世してるし。ウェイトレス時代から何があったのか全く説明がないんだけど、そんなことはどうでも良いよ。こっちも聞きたくないし。問題はちっとも可愛くない事実だ。少なくともヒロインの器じゃない。ピーターよりガタイが良くて、どっちかと言うと3で怪人としてデビューして欲しい系? 隣に住んでるロシアっ娘の方がぜってー可愛いって! ピーターが喫茶店で「僕は……愛してない」と告白するシーンで、キルスティン・ダンストの左頬のあたりを虫がプ〜ンと横切ったのが可笑しくて仕方がなかった。絶妙なタイミングだ。目の錯覚かと思って一緒に観たヤックンに後で確認したら、やはり虫がプ〜ンを見たらしい。格好悪いフラれ方〜。駄目だった瞬間虫がプ〜ン。もしかしたら劇場特有のフィルムの汚れやゴミかもしれないので、これから観る人は確認して報告してください。



『スパイダーマン3』(→公式サイト
 なんのかんのでこのシリーズも遂に3作目。そろそろグダグダになる頃合だけど、サム・ライミが監督を続投ということで、期待が持てるんじゃないだろうか。

 名実ともにNYのヒーローとなったスパイダーマン(ピーター君)。しかし彼の元に叔父を殺した真犯人がまだ生きていて、脱獄したという知らせが届く。そこにピーター君を逆恨みするカメラマンやグリーンゴブリンJr.やでけえ女(キルスティンダルスティン)の思惑が入り乱れてんやわんやの大騒動。

 2より面白かった。
 手ごわい怪人が4人(サンドマン、ヴェノム、グリーンゴブリンJr.、キルスティンダルスティン)も登場する。
 ピーター君とキルスティンダルスティンの力関係が前作から逆転し、キルスティンダルスティンがとことん惨めに人生のドン底を這いつくばる様は痛快無比だった。ライミわかってるね。特にキルスティンダルスティンが主演女優を降ろされるくだり。仮にも主人公側の人間だ。こういう場合、降ろされても仕方が無いという「理由づけ」が用意されるもんだろう。しかしキルスティンダルスティンの舞台はすべての新聞から酷評される。もう、ただただ実力不足って扱い。恐ろしく無様だ。こういう役どころならキルスティンダルスティンの起用も納得できる。じゃんじゃん使ってやってくれ。
 ゴブリンJr.の執事がひどい。Jr.の顔面がグチャグチャになって取り返しつかなくなったタイミングで「実は最初から知ってたんやけど、坊ちゃんのパパは自殺やんけ。坊ちゃん逆恨みやんけ」って得意顔でまあ。なんで記憶喪失になったときに因果を含めなかったんだよ。
 最後にサンドマンを「許す」のは駄目。絶対。もはや事態はおじきを殺った殺らない問題を通り越してるだろうが。(画面に映ってないけど)巻き添えで死んだ沢山のニューヨーカー達のためにも一発ガツンとやらなアカン!! 目には目を!! 娘を血祭りにあげろ!!!
 あと、キルスティンダルスティンはピーター君というボーイフレンドがありながらゴブリンJr.とチューするので退廃的だと思った。

補足説明

・「理由づけ」…たとえば怪人に襲われて声が出ないようになったとか、枕営業断ったとか。



『スピード2』
 初見。噂に違わぬ大駄作だった。キアヌが出ない。「パート1の主役はサンドラ・ブロックだった」ということで話が展開。キアヌの代わりにジェイソン・パトリック(知らん俳優)と恋仲になってるんだけど、まるで華が無い。きっと現場でサンドラ・ブロックにウーロン茶運んだりしてたんだろう。サンドラもわめいてるだけだったし。『スピード』でもこんなキャラだったっけ? ストーリーは「駄目な『ポセイドン・アドベンチャー』」。豪華客船が暴走してタンカーに衝突しそうになる。「乗り物が暴走」というテーマで前作と一致するわけだが、バスと比べて視覚的に迫力に欠ける。激突を回避する手段としてワイヤーをスクリューに巻きつけるという、すごく直接的なアイデアが実行される。で、その策が功を奏して方向転換するんだけど、船はそのままハリウッド版『GODZILLA』の予告編のように桟橋を破壊してリゾート街に突っ込んでいく。この映画のクライマックスだ。途中から早送りしていたのを普通に戻して鑑賞。いや驚いた。確かに別の意味で見所だった。それまではまがりなりにもごく普通のつまらないアクション映画だったのが、突然ジャンルが変わってドタバタコメディになってしまう。

・船が突っ込んで来るのを目にして「OPEN」を「CLOSED」に変える店主。
・物件の案内をするセールスマンと母親に「大きな船だよ」と報告する坊やだが大人は取り合わない。間近に迫った船に気づいてドヒャーと仰天。
・騒ぎに気づかず公衆電話で「よく聞こえない」と話す女。気づいてドヒャー。
・吠える犬。
・陽気な黒人ミュージシャンが新居を壊されてドヒャー!
・愛車(高級車)に船がぶつかるんじゃないか心配するオーナー。寸前で止まってホッとするのもつかの間錨がドーンと落下。これまたドヒャー!

 …こんな調子でリゾート総出のほんにゃらゴッコを繰り広げる。スピード感どころじゃない。どうしちゃったんだろうかヤン・デ・ボン監督。金かけたシーンだからいろいろ盛り込みたかったのか。操舵室にいる船員が「6ノット! 5ノット!」とカウントダウンするのが最も可笑しかった。このカウントダウンは船が桟橋にめり込んでから始まるので、サスペンスを盛り上げる役目を全く果たさない。「0ノット! 止まった〜」って、そりゃいつかは止まるがな! リゾート壊滅しとるがな! まさかこんなに笑える映画だとは。『ファイナルファンタジー』と同じく本編より人の感想を読む方が面白い。



『スペル』(→公式サイト
 あの『死霊のはらわた』シリーズの、最近では『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ監督最新作。

 銀行で融資を担当するクリスティンは、ある日老婆から抵当物件の差押えを引き伸ばすよう懇願される。出世コースから外れたくないクリスティンは良心の呵責を感じながらもその申し出を断ってしまう。するとジプシーの呪いをかけられて余命3日と宣告された。

 僕的にはサム・ライミと言えば『死霊のはらわた』であり、そういうノリが復活したのかとわくわくしながら見に行ったんだけど、う〜ん。イマイチ。結婚して子どもが出来て丸くなったんじゃろか?
 まずもって大前提である「3日後に必ず死ぬ呪い」の存在が間違ってるんじゃない? 呪いをかけられた当人はどうか知らないけど、「3日後に必ず死ぬ」イコール「3日目までは絶対死なない」ということが観客には伝わっちゃうからね。それプラス、3日目まで続く悪魔の呪いによる災厄が、単なるこけおどしというか、人間でももっとすごい嫌がらせが出来そうな感じなんだもん。上司に鼻血ブーとか晩餐の席で蝿がプ〜ンもさ、笑っちゃいこそすれ、これから死ぬってクリスティンはそれどころじゃないんだから緊迫感がない。だから呪いの設定は「こういう嫌がらせが10年ぐらい続いて、10年後のいつか死ぬ」か「死んだ方がマシと思えるようなすさまじい責め苦に3日間責めさいなまれる」かのどっちかが良かった。
 個人的にマイナスポイントだったのが飼猫の件。クリスティンは悪魔に生贄を捧げれば呪いから逃れられる(かもしれない)と信じて飼猫を殺してしまう。あのさ、もうこういう描写やめないか? サスペンスでまず飼ってるペットが殺されるお決まりのパターン。古臭いんだよ。ここから完全に悪魔の味方してたからね。頭にきたんでこのエピソードのいただけない点を思いつく限り書き連ねると、まず猫殺害シーンが悲鳴だけ聞こえるという、腰がひけてる描写。なんだよソレは。どーせならちゃんと映して猫の痛みを(映画的に)お前も引き受けろって。さらに猫に関する伏線がほとんど無い。もっとクリスティンが大切に飼ってる描写があった方が良い。もうひとつのパターンとしては、クリスティンが猫を10匹ぐらい飼ってたことにする。これなら悲鳴(×10回)だけでも良いし、笑えるシーンになると思う。トレイ・パーカー&マット・ストーンっぽくなるけど、そこまでしないんですよね〜。ホントあらゆる意味で猫が無駄死にっていうか。終盤で悪魔がゲボッて死んだ猫を吐き出して「猫なんかいらない!」って言うけど、それは観てるこっちのセリフだっつの。ここも10匹だったら爆笑できたのに。そんで10匹の猫の御霊が悪魔に立ち向かう(その後クリスティンに襲いかかる)の。これいいんじゃね?
 それから、とってつけたようなサブプライムローン問題とり入れてまっせ〜、悪いのは銀行でっせ〜、社会派でっせ〜、お前ら庶民は銀行員が困ってるとこ見たいんやろ〜、的なメッセージ。もうわかったからそれは。だったら何故クリスティンの上司の眼鏡デブを惨殺してくれないんだよライミさん! あとついでにクリスティンの恋人の両親もなんかむかつくから惨殺! ホント消化不良な映画だったわ〜。というわけで猫ポイントを除けば★3個が妥当なんだけど、猫を無駄に殺した点で★いっこ。…と思ったけど最後にクリスティンが地獄に落ちてスカッとしたので★2こくれてやる。あの世で猫に詫び続けろ!!!

補足説明

・笑っちゃいこそすれ、…この笑いも大爆笑できるようなもんじゃない。ほどほど感が漂う。

・腰がひけてる描写。…思ったんだけど、これって『ミスト』と同じパターンだよね。『ミスト』は直後に二重のドンデンがあったからまだ許せたけど。あとさ、これは猫派のひがみかもしれないけど、脚本の段階で犬か猫かインコか迷って「犬はちょっとやりすぎっしょ。猫にしときましょーよ世の中には猫好きの方が少なそうだし。インコはインパクトないんでパス」みたいな過程がありありと浮かんでくる。猫との交流がほとんど描かれないのもそういった計算が伺える。むかつく。



『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』
 なんと『悪魔のいけにえ』のフーバー監督じゃないか。前から気になってた作品。スポンティニアス・コンバッションとは正式にはSpontaneous Human Combustion(SHC)と呼ばれる怪現象のこと。人が突然燃え上がる。なんでこのタイトルが気になっていたかというとすごくドラマにしにくそうだから。だって因果関係抜きにランダムで人が燃え死ぬんでしょ? それってオモロいか? どう料理するんじゃろ。そういう興味で見始めたらガッカリした。なんか、原爆実験の影響で怒りと共に他人を燃やすことができる悲劇の男が主人公。『キャリー』や『スキャナーズ』のパクリですな。超能力を発揮するたびに相手と同じ部分が燃える(けど死なない)ので、『ゾンビ・コップ』みたくどんどん体が崩壊していくのが可笑しかった。どうでもいい話だがハリウッド版『ザ・リング』の山小屋にこの作品のビデオが並んでいたらしい。



『スモール・ソルジャーズ』
 正義面したスモールソルジャーズは人間を襲う悪役だった。で、見るからに悪そうなフリークのゴーゴーナイトがこいつらの標的。ドタバタしっぱなしの元気な映画。
 キルスティン・ダンストを『スパイダーマン』と比べて見るのも一興。



『スラムドッグ$ミリオネア』(→公式サイト
 『トレインスポッティング』『28日後』のダニー・ボイル監督作品。

 インドの貧民窟ムンバイ出身のジャマールは人気番組『クイズ$ミリオネア』(インド版)に出場。無学ながらも何故か次々に正解を重ね、賞金はまさに1000万ルピーに到達しようかとしていた。あまりにも正解を連発する彼の不正を疑った悪徳司会者は警察に通報。連行されててしまう。翌日の2000万ルピーを賭けた最終問題を前に取調室で明かされる彼の波乱万丈の半生とは?

 面白かった。★5つ進呈。
 ジャマールが口にした「正解」ひとつひとつは、経験によって心の奥深くに刻み込まれたものだった。コールセンターのオペレーターの助手でしかない彼だが、歩んできた人生は壮絶そのもの。だが、コミカルな場面が散りばめられ、全体としてそれほど悲惨な感じはしない。このさじ加減が絶妙だった。ジャマールと兄との性格の描き分けも見事で、現在と過去をフラッシュバックさせる形式をとりつつも、重厚なサーガを見終えたような満足感。
 冷静に考えると、クイズの回答と生い立ちがシンクロするという「ご都合主義」以外の何者でもないんだけど、ジャマールの生涯が面白すぎるのでそんなことはどうでも良くなる。今までこんだけの数奇な生涯を送ってきたんだもの、これぐらいの奇跡は十分に有りだ。これがもしすべての回答のうち1,2箇所だったら逆の印象だったかも。「どうせつくなら大嘘」ってことだろうか。
 ジャマールの駆け抜けた人生は立ち止まって感傷に浸っている暇がないぐらいタフなもので、同情を挟むタイミングすら計りかねるほど目まぐるしいんだけど、一箇所「ベンジャミン・フランクリン」のシーン。ここはズルい。思わず涙腺が決壊しそうになった。まさか「ベンジャミン・フランクリン」という単語にこんなにも心を揺さぶられる日が来ようとは。とりあえず難病にして、死ぬときに長々としゃべったり人ごみや雨の中でわめいたりするような脚本ばっかり書いてる人らを集めて、まぶたを固定してときどき目薬垂らしながらこのシーンを100万回見せつけたい。

※補足説明

・兄との性格の描き分け…「もし兄が参加してたら」バージョンも見てみたい。あらゆるインチキを使いまくる『ザ・カンニング』のノリで。

・「どうせつくなら大嘘」…日本でやるとしたら、クイズダービーのはらたいらを主人公にして欲しいな。どれほどの生涯を歩いてきたんだよ、たいらは。

立ち止まって感傷に浸っている暇がないぐらい…実際見終わってもジャマールが泣いたシーンを(あったかもしれないけど)思い出せないぐらいだ。それどころか印象に残っているのは現在のジャマールの悲しいぐらい醒めた眼差し。



『スリーピー・ホロウ』
「シクシク、シクシク…」
なくした首

 いつの間にか終演日が近づいていたのであわてて『スリーピー・ホロウ』を観て来た。
 以下、良かった点と悪かった点を箇条書きにする。完全にネタバレだヨ。


良かったところ


・ヒロインの衣装。胸がこう、ムワッとなってて。
・クリストファー・ウォーケン。あいかわらず無表情。演技すれ。
・主人公が何度も失神する
・首がいっぱい切れるところ
・かわいい坊やが絶体絶命。どうなるの? やっぱ殺された
・悪魔の騎士の馬に主人公が乗った!
・首無し男に風車?…風車男ルリヲ?
・見終わったカップルがエレベーターの中でガッカリしていた。


悪かったところ


・風邪気味で鼻水が止まらなかった。
・恐い映画と思ったら180度違った。
・外人の名前覚えきれねー。


全体的にどうだったか


 主人公が、地方で起きた連続首斬り殺人事件の捜査に出かけて行って当時(18世紀アメリカ)最新の科学捜査に乗り出す。村人は「悪魔の騎士がやったにちがいない」って言い張る。それで「ああ、これは一見して異界の者の仕業にみせかけて迷信深い村人をまるめこもうとする何者かが仕掛けたトリックだな」と思いきや、本当に首無しの騎士がやってきた。…ぎゃははははははは!! もう笑いをこらえるのに必死だった。本気でビックリしたよ。そして終盤でまたもやビックリ! よくわからない本格ミステリー風の謎解きが始まった! ええ〜!? するってーと凶器は首無し騎士? これって何映画なんだ? オレは怖がればいいのか? 納得すればいいのか? という感じで、すごく楽しい、というか見当はずれな方向で笑えてしまう映画だった。観に行って良かった。この映画のジャンルをひとことで表すと「ヘビ女の看板につられて小屋に入ったらヘビを鼻から口に通してる人がいた映画」。いいのかなー…。
 ティム・バートン監督ははやく『ビートル・ジュース2』作ってほしい。

※補足説明

・ヒロイン…某課長情報によると、クリスティーナ・リッチさん。「『バッファロー'66』のときのほうがはるかに可愛い」んだって。あ、でも僕的にはこの映画の不気味なクリスティーナさんもステキだと思う。

・あいかわらず無表情…『ニック・オブ・タイム』の最後でジョニー・デップに撃たれたときも全然痛そうじゃなかった。個人的にクリストファー・ウォーケンとルトガー・ハウアーが頭の中でダブるんだけど。どっちもホモっぽいから。

・主人公が何度も失神する…クモを見て飛び上がったり少年を盾にしたり。そのたびに吹き出しそうになる。みんな遠慮しないで笑おうよ。

・首がいっぱい切れるところ…ワンショットで撮っているのでかなり恐い。ここだけは。

・やっぱ殺された…そりゃねーべ? 心の中で大爆笑。肩を震わせるオレ。拷問だ〜。

・主人公が乗った!…ポーンと飛んで行って乗ってしまう。その後手綱をとられてしまう魔界の馬。オマエ本当に魔界の使者かぁ? …ダメだ! 笑う! 笑ってしまう!! 誰か助けて!!

・ルリヲ?…♪たしかなことはいえないけれどー、たしかなことはいえないけれどー…プッ! 再びうつむいて肩を震わせる。ヒィィィー。



『S.W.A.T. 』(→公式サイト
 70年代の同名テレビシリーズの映画化。
 S.W.A.T. (Special Weapons And Tactics)とは、警察内でも高度な技能を身につけた者のみが所属を許される特殊部隊。アクション映画ファンにはおなじみのエリート武装集団である。『ターミネーター2』では自爆を覚悟したダイソン博士を目にするや否や「わちゃ! ム、ムーブやムーブや! S.W.A.T.だけに『すわっ』と撤収〜」と電光石火の早業で走り去り、『ダイ・ハード2』では散開できない「動く歩道」に一列縦隊で乗り込んで勇ましく「ヘイ! アスホール」と作業員に化けたテロリストに挨拶した途端に一斉射撃を食らい、『ジョンQ−最後の決断−』では、全く気配を感じさせずにジョンQを狙撃し損なってダクトからボトリと落ちてボッコボコにされた挙句にパンツ一丁で衆目に晒され…ってオイ、全然駄目ぢゃないカッ! この映画はNYやロス市警のはみだし刑事が活躍しがちな旧来のアクション映画でコケにされ続けてきた彼らにとってのリベンジ戦なのである。時代は不景気。はみだし者より一握りのエリートさ。S.W.A.T.勝ち組! S.W.A.T.頑張れ! S.W.A.T.こっち向いて! S.W.A.T.抱いて!
 が、しかし…
 囚われた麻薬王が叫んだ「俺を解放したら1億ドル払うぞ!」の檄に応じて諸国から腕自慢が集結し、「敵か? 味方か? 380万人のロス市民」(コピーより)という予告編を信じて見たら、かなり期待外れだった。任務に臨むのが一日前に卒業試験を終えて結成された「警官以上S.W.A.T.未満」の即席チーム(隊長・サミュエル・L・ジャクソン)だし、麻薬王が捕まるまでが長い上に、呼びかけに応じて集まってくる暴徒の規模も小さいし。せいぜい小学校一クラス程度に見えたけど? そればかりかその場にS.W.A.T.いないし。なんと、380万人のロス市民(公称)を鎮圧したのは所轄で汗水流して薄給に甘んじる警官隊の皆さんだったのである。ギャフン。危険な暴徒はオトリの兵隊に任せ、自分たちは安全なルートで悠悠自適の護送ライフをエンジョイなんて…。これには自分、ブチ切れたッス。心の中で声を枯らして叫んだね。サミュエルさん! それでいいんスか!? サミュエルさん言ったじゃないスか! 「俺が上行って、現場がやりやすい風通しの良い組織作る」って! 
「正しいことが、出来ないんだ…」
 とサミュエル巡査部長がつぶやいたかどうか知らないが、S.W.A.T.が何故スペシャルかを示すに足る迫力が欠けていたのは確かだ。せっかくコリン・ファレルやサミュエル・L・ジャクソンや、『バイオハザード』で不敵な良い面構えを見せたミシェル・ロドリゲスなんかを使ってるのに、もったいない。なんか、常に団子になって行動していたような。もっと「こいつはコレ!」みたいな特技をそれぞれに発揮させれば良くなったんじゃないかな。だいたい、「伝説の人」と呼ばれてるらしい隊長のサミュエルが何一つすごいことしてくれなかったし。っつーか、筋トレするシーンで、腕が意外に普通で驚いた。軍人の役が多いんだから、ステロイド打てとまでは言わないけど、もうちょっと鍛えた方が良いんじゃないだろーか。よく考えるとサミュエルって軍人は演じてもアクションしてたって記憶が無いな。
  恐らく誰もが耳にしたことがある、テレビシリーズの名曲S.W.A.T.のテーマ※音が出ますは格好良かった。あと、サントラにある「Samuel Jackson」て曲がすごく気になるんだが。なぜ俳優名?



『聖石傳説』
 ちょうど観に行った回の上演前にトークショーがあり、会場に入ると日本語吹き替えで主要人物の声をあてている子安何某と何とか眞太郎という人が舞台で吹き替えの模様とかなんやかやについてトーク真っ最中。ファンの女子が前の方の座席を占めており、「ま、ビーストウォーズみたいなもんですよ」というトークでドッと沸いたりして。何かようわからんが、そういうことか。狐につままれたような、ハトが豆鉄砲食らったような心持の中、映画が始まる。上映中何回か館内に響き渡る声でスクリーンにツッコむ豪放磊落なダメオタ女子(推定)が数名いてヒヤヒヤする。人形のアクションとCGとの合成が上手かったように思う。けど、ストーリーがなってない。というか不条理。というか狂ってる。映画館出て天一でラーメン食いながら安井とツッコミ三昧だった。



『ゼイリブ』
 不思議なサングラスをかけると地球人になりすました宇宙人の素顔が見える。彼らは社会の中枢に入りこみ、広告の裏側に「OBEY(従え)」などのメッセージをしのばせて我々を意識の内側から支配しようとしていたのだった…。
 「サブリミナル」、「深層心理」、「潜在意識」などの単語が人口に膾炙した頃の作品。エイリアンの素顔がショッキングすぎる。一番盛り上がるシーンが主人公と相棒の仲間割れのストリートファイトってのも凄過ぎる。



『ゼブラーマン』(→公式サイト

「白黒つけるぜ!!」

 三池崇史監督・宮藤官九郎脚本・哀川翔主演という、なんだか忙しそうな人達が集結してヒーローものを撮った。哀川翔の記念すべき主演100本目の作品でもあるらしい。

ゼブラーマンの大ファン、市川新市は小学校教諭である。
彼の町に起こった異変の首謀者は世界征服を企む緑色の宇宙人である。
ゼブラーマンは、人間の自由の為に緑色の宇宙人と戦うのだ!

 ゼブラーマンのコスプレをしてコソコソと近所を散歩していた哀川翔がいつのまにか町を救うヒーローになってしまう。その超人的パワーの理由が何ひとつ示されない。白黒ついてないよ。劇中劇の『ゼブラーマン』は「改造されたわけでもない普通の人間である」という設定。そしてこの映画の哀川翔扮するゼブラーマンは「改造されたわけでもない普通の人間である、が、夢を信じれば空だって飛べるしシマウマにも変身できる」らしい。チャンチャラおかしいっつーの。夢だの希望だの観客のエモーショナルな部分につけこもうとして。全く嫌らしい。「地球侵略を狙う宇宙人」なんて大風呂敷広げないで、娘の援助交際の相手を叩きのめしてるぐらいが一番面白かったと思う。映画だからって肩に力入り過ぎちゃったのかな、クドカン? クドカン脚本と言えばキャッツアイやコロンボや探偵物語などの「ありもの」を作中にふんだんに散りばめてある種の一体感を醸し出すのが持ち味だが、今作では『ゼブラーマン』という「劇中のありもの」に頼っているため、一体感が生じにくい。また、娘の援助交際や妻の不倫、キレる子供にイジメといった「世相を反映した問題の数々」もヒーローものっぽく登場するが、いずれも投げっぱなしで中途半端に処理される。うっちゃん演じる熱血教師や渡部篤郎の毛ジラミなどの伏線になりそうな描写もすべて一過性。とりあえず入れてみた程度で、ここらへんテレビと映画の違いを感じる。
 良かった点を書こう。哀川翔の存在感。ゼブラーマンになると顔が隠れ、最後なんか全部CGになっちゃうので惜しい。ヒーローになればなるほど哀川翔の魅力が減っていくという皮肉な事態になっていて、『バットマン』や『ロボコップ』を降りた主演俳優達を思い起こさせる。いま思いついたけど「劇中の『ゼブラーマン』を演じてた落ちぶれた俳優」が主人公の方が話がシンプルだし面白くなったかもね。なんかそういう話があったような気がするけど。あ、『ギャラクシークエスト』か。「劇中のフィクション→ノンフィクション」変換のプロットがちょっと似てるかもなー。水木一郎が歌う「ゼブラーマンの主題歌」は昔のアニソン風味で無駄に気合が入っており良かった。古田新太演じる「日本で初の茄子焼き屋」にややうけ。大杉漣はこれ系の超常現象映画に出ると必ず悲惨な目に遭ってる。
 結論として、三池崇史、クドカン、哀川翔いずれのファンにもお薦めできない、合成に失敗した外道スライムのような作品だ。TVで1クールやってからにして欲しかった。



『セブンティーン・アゲイン』(→公式サイト
 BTTFみたいな話か?

 17歳。スカウトの前で決めなければならない大事な試合の直前に恋人から妊娠を告げられたマイクは、試合を放棄し恋人の元へ駆けつけた。
 それから20年後。
 中年になり立派なメタボ体型に成長したマイクは妻と離婚の調停中。子供たちともうまくいっていない。自分の不遇を嘆き、あの日の選択を後悔する日々を送っている。そんな彼がある日不思議な力で17歳当時の肉体に戻ってしまい……。

 この先自分が辿る人生のレールがほぼ見えてきて、無軌道で不安定だけど可能性に溢れていた青春時代を懐かしむ年代に差し掛かった中年が、なんか知らんけど不思議な力人生をやり直すという話。割と好きなカテゴリーだ。BTTFみたいな話かと思っていたら、タイムスリップじゃなく、時制は現在のままで体だけ若返る。若い自分が年取った自分の家庭をなんとかしようとするという、どっちかと言うとBTTF2に近い。
 やや感情移入はしにくかった。そりゃザック・エフロン並みの男ぶりでバスケ部のエースだったりしたら、若返りたくもなりますよ。ダンクシュートでもなんでも決めまくってテケトーに優しげな言葉撒き散らしてナオンなんざ入れ食いだけどさ〜。溌剌と動き回るエフロンを眺めるにつけ、自分がどういう17歳を過ごしてきたか、比較してしまって単にため息が出た。どっちかと言うとエフロンの友達役のオタク男の方に共感を覚えたな。きっとエフロンに感情移入できる女性&男性以外の人らの受け皿としての登場人物なんだろう。そういう人らのためのスター・ウォーズの小ネタも盛り込んであった。しかしこのザック・エフロン、演技はなかなか良かったと思う。特に終盤の離婚調停のシーンは引き込まれるものがあった。立派なもんだ。

補足説明

・なんか知らんけど不思議な力…『恋はデジャ・ブ』や『天使のくれた時間』や『もしも昨日が選べたら』や『ブルース・オールマイティ』や『バタフライ・エフェクト』などなど、なぜかこういう映画に共通する特徴として、不思議テクノロジーの説明はテケトーに処理されるか、そもそも説明がない。

・ザック・エフロン並みの男ぶりでバスケ部のエースだったりしたら…ストー夫人曰く「墓地で流される涙のうち何より苦いのは伝えなかった言葉やなさなかった行いを悔やむものだ」らしいけど、17歳の僕に関する限り伝えなきゃ良かった、してなかったら万々歳な事柄ばかりである。

・男性…ただしイケメンに限る。



『戦国自衛隊』
  劇場と、だいぶ間を置いてビデオで鑑賞。途中で流れる主題歌のサビ「Sun goes down〜」のところを「戦国だ〜」と聞き間違えていたと判明。昔父親と一緒に観に行ったときの記憶なのでしょうがないか、…っていうか小学校低学年をこんな映画に連れて行くなよなー、父親。千葉真一が武田信玄の生首持ってうろつきまわるところなんか、もはやトラウマだよ。しかしまあ、出演者が超豪華で次にどんなヤツが現われるかだけでも随分楽しめた。岸田森がスゴい形相で死んだり、竜雷太が薬師丸ひろ子と相討ちになったり。そこで竜雷太が「戦国…時代…」とつぶやいて死ぬんだけど、何が言いたかったんだろうなー。戦国時代がどうした? そんなショックだったのか?(←そりゃそうだ)



『戦場のピアニスト』
 公開当時、おすぎが誉めたり、TVブロスに過激な評が載ったことで物議を醸したり、この作品でアカデミー賞をとったポランスキー監督が受賞時に海外に高飛びしてたり、イワクつきの作品。
 ワルシャワのラジオ曲に勤めるユダヤ人ピアニストが第2次大戦に巻きこまれてナチスから逃避行する物語。どこに隠れても、まず食糧の心配をしなければならない。ドラクエの主人公みたいに廃墟の戸棚や引き出しを漁って未調理の穀類を頬張り、バケツの水をすする主人公を見るうちに、吉本隆明の「食べることだけが残った」という言葉が浮かんだ。また、車椅子の老人がテラスから放り出されるシーンでは『グレムリン』を思い出して目頭が熱くなった。宣伝や予告編で使われたハイライト・シーン。ナチスの青年将校に見つかったときに、髭ボーボーの風体で
「私はピアニストです」
 と自己紹介の後、ショパンを披露。その素晴らしい演奏がワグナーに飽き飽きしていた将校の心を捉え、ピアニストを見逃す決意を促したのだった。まさに「芸は身を助く」だ。もし彼がテルミニストやニヒリスト、ガンバリストだったらどうなっただろう? 想像するだに恐ろしいものがある。



『千と千尋の神隠し』
 面白かった。初めてリンが画面に現れるときに後ろにある引戸を足で閉めるところが特に良かった。あと、お湯の効能の一つで何気なく「回春」と書かれているのが可笑しかった。お盛んですなー、八百万の神様も。ある場面で『美味しんぼ』みたいなところがあってニヤけた。あとは、菅原文太が声をあてていたのにビックリ。スタッフロール見るまで気づかなかったっちゅーの。



『千年女優』
 一目惚れした「鍵の男」を追いかける女優のお話。
 時代が生んだ悲劇、でしょうなー。
 女優が演じる役柄がさまざまな時代にまたがっており、壮大な大河メロドラマのよう。しかし、「映画の1シーンで『鍵の男』と誰かをダブらせる→逃げられる」の繰り返しばかりなので、正直最後の方は飽きた。あと、変に「オチ」みたいなものをつけてるけど、それもいらない気がした。



『戦争のはらわた』
 イラマチオさせてた敵女兵士にチンコ噛み千切られて、味方にも愛想をつかされ見捨てられて敵のただ中に取り残されてなぶり殺しにされた兵士が映画史上に残る哀れさ。



『SAW』(→公式サイト
 あり得ない極限状況に置かれた人間が如何に生き残るか、映画ならではの醍醐味が味わえた『CUBE』と似た映画が到来したらしい。

 老朽化した広いバスルームで目覚めた2人の男は、双方足首を鎖でつながれていた。彼らを結ぶ対角線の中点、部屋の中央には頭を撃ち抜いた自殺死体が転がっている。死体が手にしたカセットレコーダーは告げる。
「生き残りたければ相手を殺せ」

牛あいがけカレーセット  確かに『CUBE』っぽくもあり、犯人のそれまでの犯行を振り返る形で『セブン』のようなオモシロ殺人シーンも楽しめる。なんだかお得なすき家の牛あいがけカレーセットのような映画だった。しかも二つの映画に負けないクオリティー。ラストも適度にヒネリが効いてて良い感じ。お薦め。
 密室に閉じ込められた2人には表題の鋸(ソウ)の他にも様々なアイテムが与えられているんだけど、2人とも扱いが雑でハラハラした。特に若い方は酷い。あろうことか鋸を見つけた途端、あっという間に鎖をガシガシやって刃を折っちゃうし。君な! バイオハザードやらせても初期装備のハンドガンあっという間に撃ち尽しちゃうタイプと見た。
 是非続編を作って欲しい作品だ。かんな(プレーン)なんてどうだろう? 脱出するのに相当の覚悟がいりそう。墨壷とか。途方に暮れるだろうな、そんなもん与えられても。

補足説明

・様々なアイテム…一番最初にバスタブのパイプに沈んでいった青く光るペンダントのような物体はなんだったのか。何か説明あったっけ?



『SAW2』(→公式サイト
 サイコスリラーの傑作『SAW』の続編。う〜ん。『CUBE2』の前例を出すまでも無く駄作の臭いがプンプンするんだけど。いろんな意味で「怖いもの観たさ」で鑑賞。

 ショッキングな猟奇連続殺人犯として名をはせた「ジグソー」を追い詰めた敏腕警部を待ち受ける巧妙な罠。

 前作ほどではないけど、意外に良かった。ちゃんとした続編になってるし、前作を見た人に向けたサービス映像もある。犠牲者の人数が増えたけど、変に仕掛けを大掛かりにしてないところも好感が持てた。トラップの「手作り感」もこのシリーズの魅力のひとつだと思うし。8人の男女がトラップ満載の館に拉致監禁されて死のゲームに挑戦。1人ずつ面白いふうに死んでいく。トラップの趣向を見るに、どうやらジグソーにはジグソーなりの筋書きがあったようだけど、1人の粗暴なゴリラーマンが大暴れして緻密な筋書きを半分ぐらい台無しにした感じ。なんかコイツだけノリが筋肉番付だし。おかげで最初の謎かけなんか皆すぐに忘れてるし。真犯人は果たしてこういう展開も読んでいたんだろうか?

補足説明

・こういう展開…黒人は明らかにハプニング的に死んだっぽい。あとふっつ〜にガスで息絶えた女。華が無いなあ。「毒のダメージで死ぬ」ってRPGなんかじゃ最も地味な死に様だよ〜。どうせなら面白いふうに殺されたかっただろうに。死に顔がそう語ってたように見えた。



『SAW3』(→公式サイト
 サイコスリラーの傑作『SAW』の3作目。今回はどんなふうに人が殺されていくのだろうか。

 かつて稀代の連続猟奇殺人犯として名を馳せたジグソーだが、脳の腫瘍に悩まされていた。

 SAW1〜2を踏まえたネタバレ有りで書いていくので注意。
 もう一作目ほどの緻密な脚本に裏打ちされた衝撃はない。いかに猟奇ものと言えど、ただ人が面白く死んでいくだけじゃ駄目なんだと再確認できた。2でジグソーの弟子になった女が脳外科医の名医を拉致して無理矢理ジグソーの手術をさせようとする。この骨子となる展開が興ざめ。その気になれば女医にはいくらでもジグソーを人質にしたり、殺すチャンスがあるわけで、ある意味この一般人である女医を信用しているわけだ。連続猟奇殺人犯としたことが何てザマか。もういさぎよく死んじまいなさいよ。最期に一花300百人ぐらい巻き添えにして。そんな感じで、2の結末の尻拭いに終始するストーリーだった。



『SAW4』(→公式サイト
 DVDで。正直このシリーズを見放してたんだけど、5の評判が意外に良いので鑑賞。

 連続殺人鬼のジグソーが死んだけど、胃袋の中からテープが出てきてこんにちわ。

 3で死んだジグソー&「ジグソーの後継者」の他に「もう一人の共犯」がいて、そいつは一体誰なんだ? というミステリー要素を縦糸に、元妻の回想シーンで明らかになるジグソーの知られざる過去を横糸にして物語がめまぐるしく進行する。もちろん本業のジグソーゲームもぬかりなく散りばめられて、犠牲者が面白いふうに死んでいく。このスピード感はなかなかなもの。3より面白かった。



『SAW5』(→公式サイト
 4が面白かったのですごく期待して観に行った。

 4の惨劇から生還したストラム捜査官がジグソーの謎を追う。

 いや、つまらなくはなかったけど。なんか騙されてる感じがするんだよな〜。ただ、「新ジグソー」が2の「後継者」よりマシなんで許せちゃう感じ。しかしストラム捜査官可哀想すぎる。素晴らしい機転で一度ゲームに勝ったのに、あんまりだよな。あと、どうしてもツッこまずにはいられないのでひとついいですか? 3の半死半生になる以前の段階で一体ジグソーはいくつトラップ仕掛けてたんだよ! 3&4、そして今回の5人ゲームもセットしてたってことだろ? 共犯がいたとしても無理がありすぎるよな〜。6もあるらしい。あ〜あ。早く観たいと思ってる時点で僕の負けだ。もうさ、「後継者の後継者のそのまた後継者の……」ってジグソー・サーガにしたらいいわ。なあ。リベラル派と原理主義者の対立が起こったりさ。



『SAW6』(→公式サイト
 もはやアメリカではハロウィーンの定番タイトルとして定着したホラーシリーズの最新作。ここまで来ると「シリーズが好きな人だけ来れば」的作品と言える。ただ、シリーズ化した殺人鬼ホラーものにつきものの「回を重ねるごとに殺人鬼(ジェイソン、フレディ、ブギーマン等)が記号化して怖くなくなる、どころかギャグっぽくなる」という現象は、この作品の場合あまり起きてない気がする。ジグソーという存在がこけおどし的な外見の怖さに頼ってないからだろう。とは言えジグソーゲームで人が死ぬのにも慣れてきてもうそんな怖くもない。

 ジグソーの真の後継者としていそいそと殺人にいそしむホフマン。一方妻が受け取ったジグソーの遺品には、次のジグソーゲームの指令書の他にもホフマンにさえ明かされない謎のアイテムが存在していた。

 もはや面白いとか面白くないレベルを通り越して、シリーズのファンからするとこの作品における焦点は「5で妻が受け取った遺品の中身は何か?」という点と、「ホフマンはジグソーの後継者としてちゃんと出来るのか」という2点に絞られると思う。まず1点目の遺品に関して。5で妻が目にした途端に目の色を変えたにしては、単に次のジグソーゲームのターゲットを記した指令書と、なんかよくわからないオレンジの封筒。一見して妻に異変が起きるものなのかどうか、非常に疑問だ。しかもオレンジの封筒の方は、開封されずにどっかの施設の謎のドアに投函されるという。あのドアの中には誰がいるんだろう? うまいことはぐらかされた気分。賭けてもいいけど、製作者はこの問題を後回しにしただけで、絶対何も考えてない。ここら辺とても作りがTVドラマ的になってきている。しかしひとつだけハッキリしたのは5まで灰色だった奥さんが、これで完全にこっち(ジグソー)側の人間になったことか。
 次にホフマンがジグソーの後継者としてやってけるか問題に関しては、ホフマン君は青息吐息のヘロヘロ状態。とにかくジグソーゲームをやり遂げるのに必死でまわりに気を配る余裕がなかったおかげで指紋のトリックはすぐに見破られて追い詰められるは、後ろから逆トラバサミ仕掛けられるは、駄目だなコイツは。器じゃない。これは最初の疑問にも関係してくるんだけど、ジグソーの後継者はきっとドアの中にいるんじゃないか? 多分双子の兄(役者同じ)かなんか。死んじゃったジグソーの穴を埋めるにはそういう手法しか残されてないと思うんだけど。
 特にガッカリしたのは、最後のドンデンが薄かったこと。あのおなじみの「SAWドンデン返しのテーマ」も流れず。作り手の自信の無さが伺えて可笑しい。一応エンドロールの途中であの旋律が流れるのが馬鹿馬鹿しかった。なんだかな〜。作品の出来は、シリーズで一番駄目だった3とどっこいのレベルだ。

補足説明

・TVドラマ的…どうでもいいような端役がクローズアップされたり、あり得ないカップルだらけで登場人物全員が穴兄弟竿姉妹になったり、ローラの従妹が出てきたり。



『SAW THE・FINAL 3D』(→公式サイト
 シリーズ7作目はナンバリングが消えて3D。一応完結編と銘打ってある。

 ジグソーの後継者をめぐるジグソー妻とホフマンの争いは、妻がへたれて警察に駆け込むという意外な展開で幕を閉じた。一方「ジグソー被害者の会」を主催し各地の講演会や手記でぼろ儲けする男にも謎の新ジグソーの魔の手は伸びて……。

 6が駄目な出来だったから、それよりは幾分マシな分面白く感じた。ジグソーゲームも、新趣向の衆人環視の元に展開される冒頭のノコギリゲーム&車急発進ゲームが面白い。なんかもう、リンカーンの罰ゲーム観るような感覚だよね最早。なーんにも緊迫感がないけど、これはこれで良いや。回想シーンでチラッと出てくる「平行に渡された鉄棒にぶら下がって対面の相手を蹴ったりひっかいたりして突き落とすゲーム」がずさんすぎて可笑しかった。
 ホフマンは前作で警察署まで乗り込んで同僚を殺しまくったが、そこには証拠隠滅という動機が一応存在した。が、今回もう指名手配されてるのをわかってる状態でまたもや警察に乗り込んで同僚殺しまくる。その殺戮に殺戮以外の目的が何も見いだせない。完全にジェイソン化してるよ。よっぽど通報したジグソー妻のことが腹に据えかねてたのかね。
 ともあれシリーズを一応結ぶのにふさわしい「あの人物」が登場して、パート1とリンクしてSAWサーガの輪を閉じる形になったので、もうこれはこれでいいよ。これ以上続けないで。もうつきあいたくない。



『ソーシャル・ネットワーク』(→公式サイト
 アメリカ版mixiというか、そういうもんの創始者である「世界最年少の億万長者」ことマーク・ザッカーバーグの半生をデヴィッド・フィンチャーが映画化。

 マーク・ザッカーバーグが金儲けしたら訴えられまくる。

 ソーシャル・ネットワークあるあるネタがてんこ盛りなのかと思ってたら期待が外れ、かつての友人である共同創始者と大学の先輩らと弁護士団を交えたゴタゴタの描写の合間に回想シーンがはさまる体。そういう意味ではタイトルに偽りあり。まず弁解しておきたいのは、フェイスブック自体を使ったことがないしあまり知りもしないので、言うまでもなくザッカーバーグの半生自体にあまり興味がもてなかった。別段突拍子もないことが起こるわけでもなかったし。
 この映画のスタンスなのか、ザッカーバーグを悪人とも善人ともとれないナマコみたいな人物に仕立ててるので、感情移入もしづらい。出てきたと思ったらパソコンカチャカチャいじってる。実際そうなのかもしれないけど。ギークのとらえどころのない薄気味悪さは出てたかな。ふられてから無表情で自室に戻ったと思ったら憂さ晴らしに元カノの悪口ブログに黙々と書き連ねたりね。冒頭の恋人(?)をイライラさせる会話と「美人選び」サイトを構築していくところは白眉。開始から数十分の一連のシーンでこの映画で見たかったものの90%見た。

補足説明

・ソーシャル・ネットワークあるあるネタ…最後の、元恋人(?)に「ミクリク」してOKされるかどうか10秒おきぐらいに画面を更新してるような。電話番号ぐらい知ってるだろうから連絡すりゃいいのにねー、っていう。

・恋人(?)をイライラさせる会話…会話を楽しむというよりとにかく(自分の知りたい)情報&(その情報から得られる)推論を延々インプット&アウトプットしてる感じ。その間相手の感情は無視。



『ゾディアック』(→公式サイト
 未解決事件を扱った書籍等で、ずた袋を被った(Part2の)ジェイソンのような似顔絵と共に必ず出てくるゾディアック事件を扱った映画。

 1969年、犯行後に謎の暗号文を送りつけてくる連続殺人鬼ゾディアックが現れる。

 2時間超の上映時間を飽きることなく見ることが出来た。が、疲れる。『JFK』みたく証拠や事件や証人が次から次へと出てくるので、もうストーリーについていくだけで必死だ。後半、眠くなりかけたあたりでジェイク・ギレンホールが単身大活躍するあたりはスリリングですごく良かった。
 しかし事実としてゾディアックは捕まらず、映画も何やら歯切れの悪い終わり方をする。わかっちゃいるが残念だった。
 あと、即物的というか、ゾディアックを特別に格好よく(神秘的、英雄的に)描いていないところが好印象。



『ソードフィッシュ』
 うーん、まあ何と言うか、し、し、白鳥は〜、ブレットタイムがドッカンコ、鏡の国から弾丸飛び出りゃフェラチオ上手だセニョリータ、あごひげ変だよトラボルタ、女はテラスで乳ポロリ、娘は眼鏡をすぐ外し、ほろ酔い加減でハッキングしてる陽気なダンス・ウィズ・ウルヴァリン、なんだかなんだかイカついヤツらは結局ただのデクノボー、釣りバカ議員は呑気者、いきなり物故者ポルノ王、ビットがアップだバイバイン、バスもおだてりゃ空を飛び、ブレット・トゥースがあっさりズリ落ち疾風のようにサドンデス、バスに負けじと何をか言わんやヘリも飛んだら季節はずれの打ち上げ花火がロスのお空に彩添えて、ヘリも飛ばずば撃たれまいったら大空に顔だトラボルタ、黒人刑事は徒労感、モサドと言い張り素性を隠すにゃ無理があるってばイスラエル、気がつきゃ娘は億万長者、終わり良ければすべて良し、テロはまかせたトラボルタ、フーアムアイだぜトラボルタ、哀しからずや空の青、海の青にも染まずただよう〜、…ってカンジの映画だった。
 最初の10分だけすごく良かった、のだが。ハル・ベリーがいきなり乳見せしたときにはショック死しかけた。



『ソフィーの復讐』(→公式サイト
 予告編が面白そうだったので観に行った。最近コメディで当たりがないし。

 人気漫画家のソフィーは婚約者のイケメン外科医ジェフを女優のジョアンナに奪われてしまう。怒り心頭に発してちょっとおかしくなったソフィーの復讐大作戦が始まった。

 当たりかハズレかで言ったら大ハズレ。『アメリ』っぽいことをやりたかったんだな〜ってのはわかった。コメディとして見ると壊滅的なレベルなんだけど、チャン・ツィイーとファン・ビンビンが可愛かったので許す。クレヨンしんちゃんの物真似やってる女の子に「似てる似てる〜」って拍手喝采する感覚だよねもはや。



『ゾンビ』
 死者が墓から蘇り、人間を食べようとする。
 街を捨て、郊外のスーパーマーケットに立て篭もった男女4人。バリケードを築き、明日のない生活が始まった…。
 土葬の習慣がある欧米ならではの話。子供のときに見たときはスーパーマーケットの商品よりどりみどりでうらやましい気がした。今でも少しうらやましい。治安機能を失った街にあふれ出た暴徒の方がゾンビより脅威になる皮肉なラスト。
 ガンジーゾンビがめちゃくちゃ怖い。



『ゾンビ・コップ』
腹に注目  ついにこの映画を紹介するときが来た。 「ゾンビ見たけりゃ刑事も見たい」 誰も夢想だにしなかったニーズに勝手に応えた不朽の名作。100年…否、4000年に1度、世に出るか出ないかのゾンビ刑事物語である。 2人組の刑事がゾンビ強盗の謎を追跡中に片割れがあえなく殉職。2階級特進の後ゾンビとして復職。彼に残されたのは、細胞がドロッドロに腐敗して崩れ落ちるまでの12時間。「このヤマを片付けるまでは死んでも死にきれない」。刑事としての執念が、ゾンビ・コップを命がけの捜査へ駆り立てる。 見方によっては、すべてのシーンにヒントが隠されている。前年('87)の『ロボコップ』と『バタリアン2』を、極めて確信犯的にアウフヘーベンしてみせた、リピーター続出の問題作。ただ、両作品にそこはかとなく漂っていた哀愁が、この作品には皆無。一筋縄ではいかないのである。画面から滲み出るのは、ある種の「諦観」のみ。主人公の顔色が徐々に青白く変色し、死斑が浮かびあがる様は痛々しいが、周囲への気遣いだろうか、本人は実にあっけらかんとしている。見守る立場の人々も同情したのは最初だけ。沈みがちなムードを断ち切るべく、ことあるごとに彼を茶化して「死体ギャグ」のネタにする。この作品は「主役がゾンビであること」以外は普通の刑事ドラマのペースで物語が進行し、主役も死体らしく動きが緩慢になることなく淡々と職務を果たしていく。その普通の捜査風景の合間に、ゾンビ同士が当たるにまかせて緊迫感ゼロの撃ち合いをしたり、中華料理店の食材置き場で「死体ゾンビ化光線」が炸裂して牛の肋骨や豚の丸焼きが生き返って襲ってきたりといった、刮目すべき斬新な映像世界が展開する。「ゾンビだってやればできる」。この映画は、ともすると死体だからというだけの理由で垣根を設けがちな人間社会の枠組みに対して、マーク・ゴールドブラット監督が発した痛烈かつドラスティックなアンチテーゼなのだろうか。 ラストシーン。生死の関頭あっち側の友情が我々の胸に、忘れかけていた熱い何かを喚起するかもしれない。



『ゾンビランド』(→公式サイト
 コメディタッチのゾンビもの。アメリカでゾンビ映画史上ナンバーワンヒットを記録したという。

 ゾンビウィルスの蔓延により文明が壊滅状態になったアメリカ。オタクでひきこもりのコロンバスは、自ら作った「32のサバイバル術」によって日々を生き延びていた。故郷の両親の安否を確かめるため旅に出た彼は、いわくわりげな道連れと出会い、同行することになるのだが。

 コメディとしては普通。ゾンビ映画としては中の上くらいの出来だろうか。面白いけど、何かもう一歩足りないような。
 僕がゾンビ映画で一番楽しいのは、主人公がゾンビという存在に気づくまで、日常が侵食され、文明が崩壊してく有様なんだけど、この映画では、その部分がほぼカットされていた。う〜ん。ここがゾンビ映画としてはかなりのマイナスポイント。
 また、ゾンビを扱ったコメディ映画としては、面白いんだけど、過去の類似作品に比べると、いまひとつ新しいものを打ち出せてない気がする。この映画の売りである「32のルール」にしても、結局そういう過去作品のおいしいとこどりというか、集大成という感じなんだね。ここは頑張ってあと一歩何かを期待したかったところ。武装的にももっと突拍子も無いものを武器にして欲しかったな〜。ただ、ありがちな「結局人間が怖い」的大雑把な結末に至らなかったのは偉い。

補足説明

・文明が崩壊してく有様…たいていのゾンビ映画はここに力を入れており、どんなつまらないものでもそこそこ面白い仕上がりになっている。

・大雑把な結末…たいてい軍隊の生き残りだとか自警団などの集団が出てきて独裁体制を敷いている。そこにゾンビが突入してワーッ! 敵のボスが自分だけ生き延びようとするけどいつのまにか取り囲まれて乱射〜、みたいな。