な〜の





『ナイト&デイ』(→公式サイト
 トム・クルーズ&キャメロン・ディアスが共演するアクション映画。

 妹の結婚式に向かう途中のキャメロン・ディアスは飛行機に偶然乗り合わせた謎の男トム・クルーズに運命的なものを感じひかれていくが、トイレから出たら飛行機が墜落しかけてた。

 本家の007シリーズがシリアスな展開に走ってるうちに、アメリカでスチャラカなボンドもの作っちゃいました〜、ってノリ。しかもこれが結構よくできている。欧州の素晴らしい景色を背景に疾走する列車での殺陣や南海の孤島でのラブロマンス、スペインの牛追い祭りと一緒に突っ走るカーチェイスシーンなど、「007でありそう」なシーンの連続。やっぱりトム・クルーズはこういう映画が一番似合ってるんじゃないかな。
 後半は過熱していく永久電池をマクガフィンとしたチェイスになるんだけど、これが布袋に入れられた時点で魔宮の伝説みたくなったらどうしようと思っていたら違ったのでホッとした。



『慰めの報酬』(→公式サイト
 007シリーズとしては異例の続編。『カジノ・ロワイヤル』から続く話。

 ボンドが慰めの報酬を受け取るために頑張る。

 『カジノ・ロワイヤル』のラスト直後から物語が始まる。ご丁寧に、OPで流れる歌曲のイントロも『カジノ・ロワイヤル』の変奏だ。ここまで素直な続編とは思ってなかった。陸海空、全編これ追跡に次ぐ追跡。ここまで追跡劇のバリエーションがてんこ盛りな映画も珍しいんじゃないだろうか。兎に角休む暇がないんである。
 ヴェスパーも、彼女を死へ追いやったル・シッフルも死んだのに物語を続ける意味があるんだろうか、といぶかっていた。しかしボンドは最後の最後でその疑問への答えとなる「ある人物」に対する復讐をキッチリ果たす。なーるほどなるほど。こういうことだったのか。しかも「復讐の虚しさ」なんてありきたりな教訓に落ち着くことなく、新たな犠牲者を出さないためにも悪いやつは始末しとかなきゃいかんよ、英国諜報部なめんなよって描き方。「ありがとう」とまで言われるし。スカッとした。これぞ慰め。これぞ報酬である。

補足説明

・OPで流れる歌曲…前作の成功をうけて余裕が出たのか、従来のボンドシリーズっぽい仕上がり。女体クネクネどっこいしょ〜って感じの。



『ナショナル・トレジャー』(→公式サイト
 観てから数ヶ月を経ての感想になる。ニコラス・ケイジがアメリカ独立宣言文書に隠された秘密を手繰ってお宝捜しをするアドベンチャー。

 先祖伝来のアイテムだか呪文だかを頼りに北極だか南極だかに赴き海賊船を発掘したら、現場でオーナーと大揉め。やけくそで火薬に火をつけてドッカーン!!!

 簡単に言うとマイキー=ニコラス・ケイジ、フラテリ一家=ショーン・ビーンに置き換えた「グーニーズ大人版」。しかしこのケイジはかなりの要注意人物だ。発端のショーン・ビーンとのいさかいの切り抜け方が過剰防衛気味。周囲の火薬樽に放火するというハーン兄弟並の自爆戦法にビーンもあっけにとられた。また、ターゲットがアメリカ独立宣言書に絞られるや、ビーンに渡すぐらいなら俺が盗ったる! と息巻いて博物館から本当に盗み出してしまう。お前……。酔漢を殴り倒して自らエルメスたんを触りまくる電車男みたいなもんである。
 他にも、銃をつきつけられて地獄の底まで続くような崩れかけの螺旋階段を下るときに父親が先頭に立たされるんだが、ぐずる父親に向かって「今は言う通りにするんだ」となだめるところがかなり鬼畜系だと思った。代わってやれよ。

補足説明

・電車男…最近観ているフジの連続ドラマ。なかなか面白い。



『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』(→公式サイト
 ニコラス・ケイジがアメリカ大陸を股にかけてお宝探しに奔走する冒険活劇第二弾。

 前作で申し分ない金持ちになりもう危険な冒険に出かける必然性などどこにもなくなったかに見えたベン・ゲイツだったが、リンカーン暗殺者の日記の切れ端にベンの祖先の名前が書かれていることが判明。暗殺者一味の仲間だったのではないかという疑いが生まれた。祖先の汚名を返上するため、ベンは再び立ち上がる。

 今回はスケールアップ。アメリカ本土のみならずフランスやイギリスにも足を運び、行く先々の警備員のみなさんの査定にダメージ与える。敵も味方もツメが甘いお気楽っぷりは相変わらずのコメディタッチで安心して見ることが出来た。バッキンガム宮殿とホワイトハウスに隠された割符のうちホワイトハウスの方だけ謎が解かれて暴かれてるのは、遠まわしに「イギリス人はバカ」って言いたいんじゃないかって気がした。
 いろいろツッコミどころがあるんだけど、一番解せねえのが悪の親玉であるエド・ハリス。コイツの危機管理能力の無さは凄まじいぞ? 終盤に水攻め部屋に一同が閉じ込められる。ここでは部屋の中央にあるハンドルを回すと出口への扉が開いて水が流れ出るというバイオハザード的仕掛けがある。ハンドルを離すと扉は下がる。ここでエドは拳銃で一同を脅してハンドルを回させ真っ先に脱出する……かと思いきや、何を血迷ったのか拳銃で脅してベンを指名し2人で共同してハンドルを回そうとする。ハア? 意味が全然わからん。男2人がかりの力が必要だとしても、エドと相棒のハッカー(もしくはジョン・ボイト)を回し係にすればいいだろ? 結局みんなが無事出てった後に水に流されたどさくさにまぎれてベンが「後で必ず助けに来るからヨロシク」とかテキトーなこと言い残してトンズラ。エド溺死。拳銃で脅すくだりが無かったら滅茶苦茶イイ人やん? みんなの為に命を投げ出した救国の英雄やん?
 あと、ベンの奥さんは夫がありながら他の男とチューするので退廃的だと思った。

補足説明

・ベン・ゲイツ…どーでもいいが、goo映画のこの映画のあらすじのところ、「何者かによって故意に汚されたゲイツ家の名誉を守るために、リンカーン暗殺者の日記をめぐり、ビルとその仲間たちが再び動き出す」とある。間違えた人の気持ちがすごくわかる。

・ツッコミどころ…マウント・ラッシュモア記念碑(アメリカ中央北寄りのサウスダコタ州)の麓の地下にある宝の山の中に鎮座している遺跡がどう見てもインカやアステカ系のピラミッドだし。あと、タイトルのリンカーン暗殺者もやっつけ仕事すぎ。暗号解読させてる最中に時間来たから暗殺行って来るわ〜ってなノリ。なんでそんな大事なことを同じ日にするかな〜。



『茄子 アンダルシアの夏』
 デップの海賊映画の方が見たかったんだが、安井が「是非行こう。後でミス広島抱かしちゃるけん」と言うので。黒田硫黄原作。はぁ〜? 黒田硫黄って、アレじゃろ? なんか、サブカル大好き人間がウッヒョ〜って大喜びで浮き輪とシュノーケル装着で飛びつきそうな恥ずかしいイメージ(←筆者の一方的な偏見です)なんだけど。いつ口からカラスが飛び出ても大丈夫なように身構えて、目を細めながら見たんだけど、別に変わったところもなく、宣伝通りの素直な自転車レースの映画で肩透かし。小池栄子が声優で出てたらしいけど、それって意味あるのか? 貧乳になったジェニファー・コネリーより無価値である。



『ニキータ』
 『レオン』と間違えて借りて来て、すごく面白かった。
 警官を撃ち殺して死刑になりかけたニキータが「人で無し」の生を授かり、フランス当局の秘密工作員として、恋人にも素性を隠して生活するようになる。
 スナイプのシーンの緊迫感。ジャン・レノが演じる殺し屋が不気味。何を考えてるんだコイツは。米リメイクの『アサシン』も見てみよう。



『28週後...』(→公式サイト
 ゾンビものの傑作『28日後...』の続編。

 人間が凶暴化するウィルスの発生から28週間後。ほぼ全ての感染者は餓死により死滅していた。ロンドンでは生き残った正常な人々が隔離されNATO軍の統括する地区で細々と暮らしていた。

 窒息しそうな隠れ家から大草原にかけての冒頭のシークエンスはゾンビもののあらゆる要素が濃縮された素晴らしい出来。ゾンビものはこういうシーンを積み重ねてオムニバス形式にして作った方が面白いんじゃないか。全体としては前作ほどのインパクトはないけど、その分いろいろなシチュエーションを盛り込んで最期まで緊張感を持続していた。今回は閉鎖的な薄暗い都市空間が徐々に侵食されていく恐怖が強調されていて、ゾンビというより『デモンズ』っぽかった。
 GIジェーンがイギリス特殊部隊の遺品の暗視スコープを使って子供ら2人を引き連れて真っ暗闇の地下道に行くんだが、何故かロマサガ2で言う「フリーファイト−1」の陣形。子供ら2人を先に歩かせて誘導しようとする。なんで自分が先導しないんだよ。お前、本当に守る気あるんか? そのまま戦闘になったら前衛2人が倒れるまで安全なポジションじゃん。しかも子供らは常に後ろ向きに歩いてたから、どういう状態で敵に遭遇してもバックアタックだし。子供らにウィルガードでも装備させてたんだろか。



『28日後...』
 ある日ジムが昏睡状態から目覚めると、街は無人の廃墟と化していた。そんなイントロダクションで始まるサバイバル・ホラー。非常に面白かった。ことによるとこれかもしれんぜ? 世界のクロサワが最後に撮りたかったのは…さ。呪怨だのドラゴンヘッドだの全国ロードショーしてる場合じゃないって。これが単館ロードショーなんてもったいなすぎる。
 上映前にサンドイッチをbocoで流し込んでたら、横に座ったカップルの男の方が甘い声(のつもりらしい)で「横顔を見てただけ」とナオンに囁いたのが聞こえた。HEYHEYHEY、上のホテル街でやってくれ! 一瞬「僕の?」と思って焦った。



『2012』(→公式サイト
 ローランド・エメリッヒ監督最新作。地球をブッ壊すことにかけては比肩しうる者なしと水鏡先生に太鼓判を押された男である。今回はどんな風に地球がブッ壊れるのか。

 マヤ文明が得意げに言い残した通り、惑星直列の影響で電磁波が降り注いで地球の磁場がおかしくなってマントルが溶けてもう、あっちこっちでドッカンコ。そんな中、大切な家族を守るためにジョン・キューザックは駆けずり回る。

 毎度のことながらエメリッヒ作品では、とにかく天変地異、阿鼻叫喚を楽しみに観てるわけで、その他の人間ドラマはつけあわせのパセリ程度の存在感。そこを考えだすと頭がおかしくなってくる。パセリの味に文句つけるやつがいるか? ある意味まだ建物が残ってる中盤のカタストロフが最大の見せ場。その後は話が進むにつれ世界各地に散らばっていた人間が死んでいき、壊すものもなくなり手持ち無沙汰になって、「話し始めたんだからオチもつけなきゃ」的な流れ作業で大味になるのは『デイ・アフター・トゥモロー』と同様。そして今回もすごい大災害の描写が目白押しで、堪能させていただきました。終盤は『未来少年コナン』からパクッてきたような光景も最新鋭のCGで楽しめる。欲を言うと方舟に乗り込む「選ばれし人々」の中にビル・ゲイツのそっくりさんとか、セレブ(アンジーと養子たちとか)を本人役で出して欲しかったけど、そういう茶目っ気を望むのはエメちゃんには酷ってもんだろう。CG係に指示出すだけでも大変な仕事なんだよ。エメリッヒ監督作品としては満点の★3つ! 映画の起源が見世物から発したことを鑑みると、良くも悪くもその最も正統な伝承者と呼べるかもしれない。今回はちょっとパセリが大きすぎた感じがするけど。

補足説明

・『未来少年コナン』からパクッてきたような光景…脱出船がギガントそっくり。それに群がる群衆を真上から撮るカットもそのまんま。大津波。ただ、ギガント上での熱い攻防やトロッコを酸素ボンベがわりに水中を歩んでいくトンチの効いた展開などはパクりきれなかったようだ。だってCG係にバイク便で絵コンテ送って指図して赤入れるだけでも手一杯なんだから。



『ニッポンの大家族 Saiko! The Large family 放送禁止 劇場版』(→公式サイト
 ストーカ−や神隠しなどの日常に潜む闇をフェイクドキュメンタリー方式で描いたテレビシリーズ『放送禁止』の劇場版2作目。2作目と言っても1作目とつながりはなく、1作目と同様テレビシリーズの1エピソードの後日談という形式。

 カナダ人の映像作家ベロニカは日本の大家族を取材するため「浦家」を訪問する。明るく賑やかで活気があるように見える浦家だったが、その裏には様々な問題を抱えていたのだった。

 テレビ版の「放送禁止2 ある呪われた大家族」を基に、その7年後という設定。役者はお母さん以外の子供は全部変わったみたいだ。実はガビョ布からテレビ版を全部借りて観たのはこの映画の後であり、観る順序が逆になってしまったので、半分も面白さが理解できなかった。ちなみにシリーズで僕が好きなのは「しじんの村」。



『人間の証明』
 今度フジで連ドラやるようで。事件のキッカケも捜査の進展も登場人物同士の因果関係も何もかも偶然で成り立ってるので、ミステリとしてはクソみたいなもんだった。松田優作とジョージ・ケネディの共同捜査がちょっと面白かったかな。あと、ジョー山中がカタコトで何か言うたびに吹いた。そりゃー犯人じゃなくても刺したくなるわ。

補足説明

・ジョージ・ケネディ…裸の銃シリーズでO・J・シンプソンと共に酷い目にあう。なにげにアカデミー男優。'82年出演の『死霊のかぼちゃ』が気になる。



『ニューオリンズ・トライアル』(→公式サイト

「修正第2条だ! クソッタレ!!」

 ジョン・キューザック主演。ダスティン・ホフマンとジーン・ハックマンの初共演作品でもある。パンフによるとホフマンとハックマンは無名時代にNYで同居していたこともある40年来の親友だそうだ。ホフマンが風邪ひいて死にかけて薬の金欲しさにハックマンが体売ったりした感動の秘話があったりするんだろうか。『真夜中のカーボーイ』みたいに。また、映画好きの安井君によると、この映画は「略してニューリン」でもあるという。どう答えて良いかわからず、曖昧な笑顔のまま表情が固まってしまった。

 拳銃乱射事件による被害者の遺族が銃器会社を告訴した。原告側の弁護士(ダスティン・ホフマン)と銃器会社が雇った陪審コンサルタント(ジーン・ハックマン)は法廷の内と外で火花を散らす。

 原告側と被告側の間に「陪審をコントロールして票を売ります」と持ちかける2人の男女が介入することにより、三つ巴の戦いが繰り広げられることになる。原作は『ペリカン文書』や『ザ・ファーム/法律事務所』など数々のリーガル・サスペンスで知られるジョン・グリシャム。さすがに如才なく、陪審員選任、法廷弁論、陪審室での議論、法廷外での工作という、「法廷もの」の美味しい部分を散りばめたテンポの良いストーリー。ホフマンとハックマンの演技を見ているだけでも楽しい。充実した作品だった。
 陪審員が揃って立ち上がり、胸に手を当てて愛国の口上を唱え始めると法廷中が起立して同調するシーンに驚いた。アメリカ人はみんなあの愛国小唄を暗記してるのか? 
ミスター・ヴー  陪審員に補欠が3名いて、何かのはずみに「補欠のくせに黙ってろ!」と罵倒されてたのが可哀想だった。やってることは他の人と同じなのに、言われなき差別。とくに最後まで補欠のままだったエビ漁師ヴー。ごくたまに画面の端に映ってた東洋系のヴー。パンフにも1人だけ写真載ってないぞヴー。どこから来てどこへ行くのかヴー。ブーじゃ駄目なのかヴー。
 いろいろ盛り込みすぎて未消化な部分もある。ひとつ重大な欠陥があって(ここからネタバレ)被告陣営に買収や脅迫でコントロールされた陪審員が有罪に投じた理由が示されないのは変。HIV陽性を暴露される、または投獄される、または出世の道を閉ざされる危険を覚悟して自らの意思で有罪に投じたんだろうか? キューザックの口先だけでどうにかなる問題じゃないと思うんだけどヴー。



『ニュー・シネマ・パラダイス』
1989・伊、仏
 『天井桟敷の人々』などと一緒に、たいていの真っ当な映画ファンの方々がお薦めとして挙げる映画なのに、未見だった。火事になって終わるのかと思ってたらその後の方が長い。イタリアの田舎町にある映画館が主な舞台。映写技師のアルフレードと映画好きの子供サルバトーレが年齢を越えた友情で結ばれていく。感動とか言うよりも、「やっと観た!」という満足感の方が大きかった。



『NEXT』(→公式サイト
 ディック原作。2分先の未来が見えるというショボい予知能力の男をニコラス・ケイジが演じる。少なくともこの男はイカ焼きそばを湯きりするときに流しに麺をぶちまけてしまうことはないんだろう。便利だ。

 プチ予知能力の持ち主であるケイジは自分の能力を活用してラスベガスで手品師を生業にしながらカジノで細々と稼いでいた。しかし平穏でケチな日々は続かなかった。彼の能力に目をつけたFBIのジュリアン・ムーアとテロリストに追われることになる。そして運命の女性との逃避行が始まる。

 なんだかよくわからないあらすじになってるけど、そういうことだ。可能性としての未来に存在するケイジをひとつの画面に全部表示させる手法は面白かった。夢に出てくる運命のナオンをダイナーで待ち伏せして口説くシーンが一番可笑しかった。想定される会話や行動のパターンをイチイチ予知して消去法で最善と思われるアプローチを選択してくの。まさに恋愛シミュレーション。まさにリセット感覚。この能力欲しい。ま、でもどういう選択したって駄目なときは駄目なんだろうけどな〜。
 たった2分の予知能力という「縛り」をどう活かすかが見所の脚本なんだけど、どうも運命のナオンの生死に関することに限って、一日ぐらい先のことまで見通したり、予知夢として見ることが出来るらしい。え〜。なんかズルいなあ。じゃあすごくいい方法を思いついたんで教えといたる。この運命のナオンの腹にダイナマイトの時限装置を巻きつけて一緒に暮らすというのはどうだろうか。毎晩0時に爆発するようセットして、ギリギリに解除を毎日繰り返す。そうすることによって「今晩死ぬかもしれない運命のナオン」と行動を共にする一日分の予知情報を毎朝授かることができるんでないかい? ただ、このメソッドにも弱点があって、ナオンの精神が早晩に崩壊するかも。



『ネゴシエーター』
 エディ・マーフィ主演。ネゴシエーター(交渉人)のタイトルに期待するとアレ? と首をひねったままラストまで過ぎ去る。そもそも冒頭で立て篭もり犯の「交渉」にあたったときも、適当に相槌をうって帰ろうとして振り向きざまに射撃。…どんなディベート術だそれわ!! というように、あまりIQを感じさせない2枚目半の主人公は、結局『ビバリーヒルズ・コップ』のアクセル刑事を薄めたようにしか見えなかった。むしろ途中で配属される新人のマコールの方が有能に見える。



『ネバーエンディング・ストーリー3』
 原作にない外伝的ストーリー。主な舞台はバスチアンの住む町。アウリンがファンタージェンの外に持ち出され、ドラえもんの「悪魔のパスポート」的に不良に利用されそうになる話。
 作りがすっっっごく安っぽい。クリーチャーがほとんど着ぐるみ。ファルコンがデカいプードルみたい。カメラを激しくパンさせて震動を表現。人が消えるときに点滅する。完全に子供向け映画だった。以下は面白かった場面。
・ロックバイター父子が「BORN TO BE WILD」を歌いながら石のバイクで爆走。小動物を轢く。
・中華街のお祭りの獅子にまぎれるファルコン。とくに不審に思わない人々。
・ハロウィンにまぎれてショッピングモールに潜入するロックバイターの子供と木人間。
・カラテで不良に立ち向かうバスチアン。
 ぐらいかな。M・エンデの没年の前の年('94)に公開されている。氏はこの映画を見たんだろうか?



『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』
 すでにロジャー・ムーアにボンド俳優をバトンタッチしていたショーン・コネリーが12年ぶりにカムバックして正規のシリーズとは別にジェームズ・ボンドを演じた異色作。ボンド・ガールにキム・ベイシンガー。俳優こそ違え上司の「M」も開発部の「Q」も出て来るしお馴染みのテーマ曲が流れないのを除くと正規シリーズと印象は全く変わらない。タランティーノが007を撮りたがってるらしいが、こういう形で本家とは別にやれば良いんじゃないか。上司の「M」に歳を理由に療養所へ行って精密検査して来いと言われたボンドがあれよあれよと世界規模の陰謀に巻き込まれる。療養所で刺客に襲われ、自分の検尿コップをぶちまけるシーンが画期的だった。たしかにコネリーの尿ならすごく効き目がありそうである。ボンドをサポートするクドい顔の間抜けな諜報部員に見覚えがあったので調べたら、後に『ジョニー・イングリッシュ』を演じるローワン・アトキンソンだった。



『ノウイング』(→公式サイト
 ニコラス・ケイジ。年に何作か作られるディザスター・ムービー。今回はそこに予知能力や預言者などが関わってくるらしい。

 息子の学校のタイムカプセルから出て来た手紙には数字の羅列がしたためられていただけだった。そこにある「911」という数字に偶然注目したケイジは、この数字の羅列がここ数十年に起こった大災害の予告であると気づく。

 飛行機の墜落に地下鉄の脱線と、目を見張るスペクタクル。いいぞいいぞ。こういう映画の場合、「(滅亡)するぞするぞ詐欺」の結末になりがちだけど、この映画は最終的に本気で人類が、というか地球がぶっ壊れる。預言者を求めて何やらニコラス・ケイジがあっちゃこっちゃ奔走するんだけど、結果的にな〜んの意味もなかったからなあ。切ない。



『ノーカントリー』(→公式サイト
 アカデミー賞4部門を受賞したコーエン兄弟最新作。なんだかんだでこの人らの作品をほとんど見ている。ファンと言ってもいいかもしれない。

 麻薬取引に使われた裏金を偶然手に入れたベトナム帰りのタフガイが命からがらの逃避行。

 逃げる『ファーゴ』って感じ? ストーリーは思いっきりシンプル。金持って逃げる。なのにこれほどまでに緊張感に溢れているのは何故だろう。コーエン兄弟ならではの群像劇の手法、一風変わったディテール、ブラックユーモア、思い切りのいい省略、それらが最初から最後まで徹底して貫かれていた。
バルデム  この映画を語る上で絶対に外せないのが不気味な殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)だ。こいつときたら「死ね」か「生きろ」だけで普通がないんじゃないかの殺し屋版クリィミーマミ状態。恐らく主役はタフガイかトミーリーのどっちかなんだろうけど、完全に食っちゃってる。カウボーイハットの同業者が語るように、最初は単なるイカれた殺人鬼にしか見えない。いや、実際殺人鬼以外の何者でもないんだけど、決してイカれてるわけじゃない、というか。一貫した哲学に裏打ちされた彼の行動を見守るうちに、えもいわれぬ魅力を感じてしまう。それは効率や利益を求めない彼なりの美学、基準に基づいた公平性から感じられる、現代社会で失われた一種のファンタジーなんじゃないか。日常生活の中で我々が切り捨てたり、或いは切り捨てざるを得ないものを頑なに守り通す彼の生き様に感銘を受けるんじゃないだろうか。

補足説明

・一貫した哲学のようなものに貫かれた…ゴルゴっぽい。

・効率…効率だけを考えたらあの変な空気銃は如何にも目立ちすぎるし、汎用性がなさげ。

・利益…わざわざ引き返して雇い主を殺し、タフガイとの「約束」を果たすために妻の下に現れるのも利益だけを追求するのなら「なんの得にもならない行動」だ。

・公平性…コイントスで生き残りチャンスを与えたり、相手が子供だろうとキッチリ礼をしたり。